あるOL彼女③〜Help!〜なんで?
ーーー研修も最終日。
「この研修を振り返って、あなたは何を学びましたか?」という、
いわば「レポートの発表会」なるものがあった。
(コレって今どきの会社のすることなのか?)
(時代錯誤も、ココまで来るとなんとも…)
新人社員が皆、口々に言った。『お花見の座席取り』と同じ感覚なのだろうか?
なにやら『昭和テイスト』が満載の、行事だった。
しかし、この会によって明日からの配属先が決まるのだから、手を抜いてはイケナイ。
かくいう彼女も「最後の仕上げ」と気合満々だった。
いろんな事を言っていた新人社員だが、やはり仕事のレポートとなると『それはそれ』。
結構、真面目なレポートを発表していた。
二ヶ月間の研修の総まとめ。
(ホントにそれって、実体験なのか?)
(生成AI、使ってるなこりゃ…。)
聴く側も、真剣に手元の資料にチェックをいれている様子がうかがえる。
何しろ、コレで未来の有望な社員を見つけなければならないのだから、お題の「この研修を振り返って、あなたは何を学びましたか?」と題された、レポート発表会も、まんざらではなさそうだった。
個々人の持ち時間を、目一杯使う者や、レポートを端的に済ませる者…。
ひとり、また一人と扉が開いては閉まっていく。
いよいよ彼女の出番が近くなった、そんな時だった。
廊下で順番待ちをしていた彼女に「ある異変」が起きた。
どうも喉元の調子が良くない……。嫌な予感がした。
「ヒック…!」
…何と彼女は「緊張するとシャックリがでる」という癖を持っていたのだった。
(なんでこんな時に…「ヒッ…ッく」…。)
彼女は罰が悪そうに、手にしたファイルで口元を隠すようにして、何とかその場をしのごうとするが、シャックリが止む気配がない。
(ヒッ…ヒック、ヒック…あれ?…なんか、いつもよりしつこいゾ)
もちろん彼女も「有事の時の対応策」はいくつか知っていた。
「掌に人の文字を三回、書いて飲み込むとアガらない」、
「大きく息を吸い込み、呼吸を止め限界まで我慢する」など、試してみたがいっこうに効果がない。
(…ック…ヒ…、ヒック)
効かないどころか、ますます酷くなっていく。
順番待ちは二人…。
(どうしよう…ヒック…どう…ヒッ)
彼女は「入る穴があったら入りたい」という気持ちでいっぱいになった。
あきらめ顔になった彼女は、覚悟を決めたようだった。
「(もぅ、このまま行こう…。『どうしてシャックリをしてるんだ?』と聞かれても、『スミマセン、私の癖です』と正直に言おう。それが元で最悪の事態(社員として認められなかった)に、なったとしても仕方がない。運が悪かったのだと)」…。
そんな時だった、後ろからいつぞや聴いた声がした。
「(…あのさ、ブラのホックが段チなんだけど…気が付かないの?)」
そっと耳元で囁きかける、その声の持ち主は、『おかず泥棒』にほかならなかった。
「(…へっ?…え、えぇっ!)」
「(アッチ[お手洗い]行って、見てきたほうがいいよ。あたしが先にレポート、読んどくからさ)」
「あ、ありがと…ちょ、ちょっと確かめにいきます!」
真っ赤な顔をした彼女は、慌てて踵を返し、反対方向に小走りに去っていった。
「やれやれ…。ありゃ、まだまだだわ」呆れ顔で見送ると、声の主は静かに会議室へと入っていった。
「はぁ、はぁ…」少し荒い息づかいのまま、彼女はお手洗いの鏡を覗き込んだ。
振り返るようにして、鏡越しに背中を見る。
「(…?…どこが段違いだって…?…ベスト着てるじゃん…?)」
そう、彼女は「自分が皆と同じ会社のユニフォームであるベストを着ていること」に、やっと気がついたのだった。
「(ブラが段チって、見えたの…?ベストの上から? 見えるわけ無いじゃない!)」
一杯食わされた…。また彼女に…。
そう思った時に、別の事に気づいた。
「(…!、あれ?…でてない。シャックリがでてない!! 止まってる!!)」
困惑した表情が一変して、歓喜の顔になった。
「(…そっか…あのままだったら私…。その事に気付いてワザと…?)」
安堵した彼女は、鏡を見ながら「『おかず泥棒の』声主は一体、何者なんだろう?」と考えた。
しかし、すぐにやめ踵を返し、小走りに会議室の方に向かっていった。
今度は、しっかりとした足取りでーーー。
…To Be Continued. NeXT Episode.
※制服は丸十服装株式会社のカタログを参考にしました。
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