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おばあさん芍薬が守ってくれているもの

玄関横の芍薬が、今年もようやく咲いてくれた。

裏庭の芍薬は日当たりが良くて、もう少し早くに咲いてくれるのだが
玄関横は朝日が当たらず空気が滞っていて、うちの芍薬の中では一番つらい環境だ。

家を建てたばかりの頃に誰かからもらった古い品種の芍薬。ずっと玄関横を定位置にしている最古参で、もうおばあさんの芍薬だ。

ここ何年かはろくな手入れもしていないので、花が小さくなって花数もだいぶ減ってしまった。それでも球根だけは肥大して葉は青々と茂っているから、ずいぶんと窮屈そうに見える。そろそろ掘り上げて株を分けてあげないと悲鳴が聞こえてきそうだ。

裏庭の花たちはしょっちゅう掘り上げては株分けし、増えた株を人にあげたり、掘り上げたついでに背の低いものは花壇の前のほうに、背の高いものは後ろにと手間暇をかけている。

かわいそうだけど、玄関横のおばあさん芍薬には花を咲かせるよりも大事な仕事をまかせていて、安易に芍薬だけを掘り上げるわけにはいかない。



芍薬の後ろには山菜の「ミズ(ウワバミソウ)」が植えてある。ミズは直射日光が嫌いで、林の中のように湿った場所を好む気難しい山菜だ。

そのこだわり屋さんは家族皆が特に好きな山菜で、アクやクセがなくシャキシャキした歯ごたえがたまらない。
葉の部分は天ぷらに、茎はサッとゆでておひたしや味噌汁に。細かく刻んで炊き込みご飯に入れれば、色味もきれいで味わい深い。

ミズのごちそうの中でも、塩水に昆布とホヤを入れた郷土料理「ホヤの水物」に軽く茹でたミズを入れて食べるのが絶品だろう。

根っこの赤い部分をたたいてつぶしたものも贅沢な味わいなのだが、我が家では毎年ミズを食べ続けるために、根は残して必要な分だけハサミで切っている。そうしていると秋までずっと食べられる。

直射日光で乾燥させると、せっかくのみずみずしさが失われ固くなってしまう。この繊細な山菜を守るためには、頼もしい相棒の存在が不可欠なのだ。

ミズの芽が出る少し前から茎を伸ばし始める芍薬が、日陰を作って春から秋までミズ畑をしっかりガードしてくれている。わたしは時々ホースで水をあげてアシストするだけだ。

花が終わった後も、芍薬は太い茎を支えに踏ん張っている。自らの水分が抜けていくのも厭わず、秋が来るまで大きな葉を広げ、ミズを日差しから守り続けてくれる。

以前、屋根の工事で訪れた女性にミズを分けてあげたことがあった。すると翌日、「こういう仕事をしているから、庭でミズを作ってる人はたくさん知ってるけど、こんなにみずみずしいのは初めてです」と言ってくれた。

一緒に話を聞いていたおばあさん芍薬が、どこか誇らしげに胸を張ったように見えたのを覚えている。


醤油に漬けるミズの実が収穫できるまで、もう少しだけ辛抱しておくれ。
秋にはかならず、ミズと芍薬の畑の大工事をしてあげよう。
一度すべて掘り起こして、去年もらってきた残りの籾殻と鶏糞と、ちょっと奮発して牛糞も入れて、ふかふかの畑にするつもり。

来春には活き活きと輝いて、昔みたいにみんなをビックリさせる大輪の花を咲かせてくれるはず。

その陰に隠れてミズたちは、きっと大喜びで葉を揺らすんだろう。



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