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卵は「生」と「加熱」、どっちがいい? 栄養を効率よくとるなら|ずるい栄養学 #4

卵は、「完全栄養食」と呼ばれることがあるほど、栄養価の高い食品です。

食物繊維とビタミンCは含みませんが、良質なタンパク質をはじめ、さまざまな栄養素を含んでいます。

手軽にタンパク質を摂れるので、忙しい朝の「朝たん」にもぴったり。

だからこそ、こんな疑問が生まれます。

「卵って、結局どう食べるのが一番いいんですか?」

生卵、温泉卵、ゆで卵、目玉焼き、スクランブルエッグ……。

どれも同じ卵なのに、

「生の方が栄養がある」
「温泉卵が最強」
「卵は1日1個まで」

など、さまざまな情報が飛び交っています。

では、現在のエビデンスではどう考えられているのでしょうか。

今回は、タンパク質を消化・吸収し、体内で利用するという視点から、卵の食べ方を3つのRoundで比べてみます。

Round1|生卵 vs 加熱卵

タンパク質を効率よく利用できるのは?

まず、かなりはっきりしていることがあります。

生卵より、加熱した卵の方が、タンパク質を利用しやすい。

人を対象にした研究では、生卵のタンパク質の消化率が約51%だったのに対し、加熱した卵では約91%まで高まったことが報告されています。

加熱によって、卵のタンパク質の構造が変化し、消化酵素が働きやすくなるためです。

では、加熱すればするほどいいのでしょうか? 

ここは、まだはっきりしていません。

生卵と加熱卵を比較した研究はありますが、温泉卵、半熟卵、固ゆで卵を細かく比較して、「この加熱具合が最も優れている」と決められるほどの研究はありません。

つまり、

生より加熱。
でも、加熱すればするほどいいとは限らない。


ここまでが、現在のエビデンスから言えることです。

Round1の勝者:加熱卵

Round2|卵白 vs 卵黄 vs 全卵

速く吸収されるのは?体で使われるのは?

次は、卵白と卵黄です。

卵白は、そのほとんどが水分とタンパク質。

一方の卵黄には、タンパク質だけでなく、脂質やビタミンA・D・E、ビタミンB12、葉酸、コリン、ルテインなども含まれています。

実際、卵白と全卵を同じ量のタンパク質になるように摂取した研究では、卵白の方が、タンパク質を構成するアミノ酸の一つであるロイシンが、血液中に速く現れました。

では、卵白の勝ちなのでしょうか? 

ところが、面白い結果があります。

運動後の筋タンパク質合成を調べると、卵白より全卵を食べたときの方が、筋タンパク質の合成が大きく刺激されたという研究があるのです。

つまり、「速く吸収される=体内でより有効に使われる」とは限りません。

さらに、卵黄を含む食事では、胃から小腸へ内容物が送られるスピードも遅くなります。

卵黄に含まれる脂質などの影響で、消化管をゆっくり通るためです。

また、卵黄を含む食事では、CCK(コレシストキニン)という消化管ホルモンの分泌も増えました。

CCKは胃の動きをゆるやかにする働きがあり、満腹感にも関わっています。つまり、卵黄は「消化に時間がかかるから悪い」のではありません。

卵白は速い。
卵黄を含む全卵は、ゆっくり。

そして、ゆっくりだからこそ満腹感につながる可能性がある。

さらに、全卵には卵白にはほとんどない栄養素も含まれています。

だから、タンパク質を摂る目的でも、卵白だけが正解とは言えません。

ちなみに、

「卵白と卵黄を混ぜて食べると、消化に影響があるの?」

という疑問については、ゆで卵のように分かれた状態と、オムレツやスクランブルエッグのように混ぜた状態を直接比較して、消化・吸収の違いを明確に示した研究は、現時点では十分ではありません。

Round2の勝者:目的による

速さなら卵白。

栄養の幅や、全卵としてのタンパク質利用まで考えるなら、卵黄を含む全卵にも強みがあります。

Round3|卵1個 vs 2個

タンパク質を摂るなら?

かつては、卵に含まれるコレステロールを理由に「卵は1日1個まで」と言われていました。

でも、現在はこの考え方は見直されています。

健康な人では、食事から摂るコレステロールが血中コレステロールに与える影響は、飽和脂肪酸などに比べて小さいと考えられています。

実際、卵を1日2個食べる食事を調べた研究もあり、1個を超えたら健康に悪い、と単純には言えません。

ただし、「毎日2個がベスト」という意味でもありません。

タンパク質を増やしたいなら2個。
ほかの食品からも十分に摂れているなら1個。

卵の個数だけでなく、食事全体で考える。これが現在の考え方です。

Round3の勝者:食事全体を見る

最終判定|結局、どの卵料理がいい?

3つのRoundから見えてきたのは、

生より加熱。
卵白と卵黄には、それぞれの強みがある。
卵の個数は、食事全体で考える。

ということ。

では、結局どの卵料理が一番いいのでしょうか?

実は、「これが最強」と決められる卵料理はありません。

生卵より加熱卵の方が、タンパク質は消化されやすい。

卵白はアミノ酸が速く血中に現れる一方、全卵には卵黄の栄養素があり、筋タンパク質の合成をより大きく刺激した研究もあります。

そして、生卵、半熟卵、固ゆで卵のどれが最もタンパク質を利用しやすいのかは、現在の研究では決着していません。

だから、

「生より加熱」は言える。
でも、「温泉卵が最強」「固ゆでが最強」とまでは言えない。


これが、今回のエビデンスから出せる判定です。

では、朝食なら?

卵だけで完結させる必要もありません。

たとえば納豆。

納豆には、卵に不足する食物繊維が含まれています。

卵=良質なたんぱく質
納豆=たんぱく質+食物繊維


と、それぞれの強みを組み合わせることができます。

ちなみに、

「卵と納豆は一緒に食べない方がいい」

と聞くことがあります。

これは、生の卵白に含まれるアビジンが、ビオチンの吸収を妨げることが理由です。

ただし、アビジンは加熱によって働きにくくなります。また、通常の食生活でビオチンが不足することはまれです。

そのため、健康な人が卵と納豆を一緒に食べることを、過度に心配する必要はありません。

温泉卵でも、ゆで卵でも、目玉焼きでもいい。

卵+納豆+ご飯+味噌汁。

そんな朝食も、卵と納豆、それぞれの強みを組み合わせた一つの選択肢です。

卵の食べ方に、ひとつの正解を求める必要はありません。

科学がわかっているところは利用して、わからないところは無理に決めない。

そのうえで、自分の目的や生活に合うものを選ぶ。

それが、私の考える「ずるい栄養学」です。


参考文献
Evenepoel P, et al. Digestibility of cooked and raw egg protein in humans as assessed by stable isotope techniques. J Nutr. 1998;128(10):1716-1722.
日本動脈硬化学会.『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』.
Lemos BS, et al. Egg consumption and satiety: a systematic review.
American Heart Association. Dietary Guidance to Improve Cardiovascular Health. Circulation. 2021;144(23):e472-e487.
Blesso CN, Fernandez ML. Egg consumption and cardiovascular disease risk: an update of the evidence. Curr Atheroscler Rep. 2018;20:65.

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