【食べすぎた夜、どうする?】後悔する前に「10分歩く」だけでいい理由|ずるい栄養学 #7
「夕食、食べすぎた…」
お腹いっぱいで、ソファに沈み込む。
時計を見れば、もう夜。
「こんな時間から、何もできないよね」
そう思って、そのまま横になる。
——そんな夜、ありませんか?
でも、そこで「もう遅い」と諦める必要はありません。
実は、食後だからこそできることがあります。
それが、「身体を少し動かすこと」です。
ここでお話ししたいのは、カロリー消費の話ではありません。
食後10分歩いても、消費エネルギーはそれほど多くありません。
それでも歩く意味があるのは、「血糖値」にあります。
食後2時間、体の中では何が起きている?
食事をすると、ごはんやパンなどの糖質はブドウ糖となって小腸から吸収されます。
すると血液中のブドウ糖が増え、血糖値が上昇します。
それに反応して膵臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉や肝臓、脂肪細胞へ運びます。
健康な人では、食後30〜60分頃から血糖値が上昇し、一般的には1〜2時間ほどでピークを迎え、その後ゆっくり元の値へ戻っていきます。
(このタイミングや上がり方には個人差があり、食べた物の種類や量、体質によっても変わります。)
つまり、食後2時間くらいまでは、血液中にエネルギーがたくさん流れている時間なのです。
歩く目的は「脂肪を燃やすこと」ではない
「食べた分を運動で消費する。」
そう思う人も多いかもしれません。
でも、食後の運動で大切なのは、そこではありません。
筋肉は動くとエネルギーを必要とします。
すると、血液中を流れているブドウ糖を筋肉が取り込み、エネルギーとして利用しやすくなります。
つまり、
食べたものを”なかったこと”にするのではなく、今まさに血液中にあるエネルギーを上手に使う。
これが、食後に身体を動かす意味なのです。
近年では、食後に軽く身体を動かすことで、食後血糖値の上昇が穏やかになることが報告されています。
たった10分歩くだけでも意味がある?
「10分歩くだけで変わるの?」
そう思いますよね。
実は研究では、食後10〜15分程度のウォーキングでも、食後血糖値の改善が報告されています。
もちろん、30分歩けばさらに効果が期待できる場合もあります。
でも、「30分時間が取れないから何もしない」より、「10分だけ歩く」ほうが、身体にとっては大きな一歩です。
続けやすいことも、大切な効果のひとつです。
私なら、こうします
私は、まずスクワットを30回×2セット行います。
太ももやお尻などの大きな筋肉を先にしっかり動かしたあと、そのまま10〜20分ほど散歩します。
現在の研究では、ウォーキングのような有酸素運動、スクワットなどの筋力トレーニング、どちらも食後血糖値の改善に役立つことが報告されていて、組み合わせることでより効果的である可能性も示されています。
だから私は、両方を組み合わせています。
ただし、「この順番が最も効果的」とまでは、現時点では言えません。
運動に対する血糖値の反応は、年齢や筋肉量、運動習慣、食事内容などによって人それぞれ違うからです(自分に合った運動をCGMで探る人も増えていますが、誰でも気軽に使えるものではありません)。
だから私は、「自分が無理なく続けられる運動を選ぶこと」が、一番大切だと思っています。
忙しい日は散歩だけでも十分。
「何もしない」より、「10分歩く」。
その積み重ねのほうが、ずっと続けやすいと思っています。
「食べすぎた」で終わらせない
もちろん、一度歩いただけで、食べすぎたことが帳消しになるわけではありません。
でも「もう食べちゃったから今日はいいや。」ではなく、
「じゃあ、10分だけ歩こう。」
そう考えられるだけで、行動は変わります。
食後だからこそ、できることがある。
私は、この考え方が好きです。
食べすぎた日にも、後悔だけで終わらせない。
それが、血糖値とうまく付き合う小さなコツなのかもしれません。
もうすこし、血糖値のおはなし
参考文献
・Colberg SR, et al. Exercise and Type 2 Diabetes: American College of Sports Medicine and the American Diabetes Association Joint Position Statement. Med Sci Sports Exerc. 2010.
・DiPietro L, et al. Three 15-min bouts of postmeal walking significantly improve 24-h glycemic control in older people at risk for impaired glucose tolerance. Diabetes Care. 2013.
・Reynolds AN, et al. Advice to walk after meals is more effective for lowering postprandial glycaemia in type 2 diabetes mellitus than advice that does not specify timing. Diabetologia. 2016.
・American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes(最新版)
・日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン』
