日曜17時の「生中継」という騙し絵と、地上波のお涙頂戴に引導を渡す黒船
日曜の17時過ぎ。テレビの前のゴルファーたちは、息を呑んで最終18番のパットを見つめている。
「入れ…!」と固唾を飲んで画面を見つめつつも、ふと時計を見て「放送枠が残り10分しかないってことは、これ絶対入るな(プレーオフはないな)」と大人の先読みができてしまう。
そんな哀愁漂う地上波のゴルフ中継だが、かつてロープ内にいた人間からすれば、あの「生中継風」の演出自体が壮大な騙し絵だ。あの運命のパットが放映されている頃、現場の選手たちはとっくにクラブハウスを後にし、帰りの飛行機の時間を気にしながらレンタカーを飛ばすか、すでに自宅へ向けて高速道路を走っている。
昔は、JLPGAの公式サイトも、テレビ中継が始まる直前には空気を読んでスコア速報をピタッと止めていた。放送局側の顔を立てる古き良き時代だ。
しかし今は令和である。テレビがクライマックスをあおっている真っ最中に、手元のスマホが「〇〇選手、優勝!」と特大のネタバレをかましてくるのだ。もはや地上波のゴルフ中継は、システムとして限界を迎えている。
そんな「ネタバレ時代」に現れた黒船が、U-NEXTの生配信だ。
誤解のないように言っておくが、私は決してU-NEXTの回し者ではない。ただ、彼らのゴルフ配信は「変態的」なまでに素晴らしいのだ。
「昔からCS放送で生中継があった」と言う人もいるだろうが、朝はCS、午後は地上波と、リモコンを握りしめてチャンネルをまたぐ「リレー観戦」を強いられることも多かった。
U-NEXTの革新性は、その複雑な放映権のパズルをぶち破り、ひとつの画面で「完全完結」させたことにある。
朝の練習場で黙々と調整する風景から始まり、ほぼカットなしの一気通貫。実況席には、かつてキー局や準キー局でゴルフを喋り倒してきた熟練の職人アナウンサーたち。解説には往年の一流プロ。
さらに素晴らしいのは、彼らが画面に一切顔を出さず「声だけ」で進行することだ。往年の一流プロを解説に座らせておきながら、その顔を一切画面に抜かないこの「忖度のなさ」。「視聴者が見たいのは放送席に座る人間の顔ではなく、選手のプレーなんだ」という真理を完全にわかっている。地上波特有の「素人を釣るための過剰なお涙頂戴の演出」もなく、ひたすらに競技の奥深さを抽出してくれる、究極の中継だ。
一つ難癖をつけるなら、アテスト後の優勝インタビューが、放映権の縄張り争いのせいか唐突に「今日のハイライト映像」に差し替えられてしまうこと。あそこだけは毎度ズッコケそうになる。
だが、それを補って余りある強烈な魅力がある。それは「優勝スピーチ」をノーカットで見せてくれることだ。
地上波の表彰式といえば、「大会会長からの優勝カップ授与」から始まり、巨大な賞金ボードや副賞の車などを次々と渡すシーンがダイジェストで流される。スポンサーを最大限に立てる大人の事情だ。スピーチ自体は完全カットだった。
生中継であるがゆえ、比較的マシと言われるNHKの公式戦ですら、放送時間の都合でスピーチの途中に無情にも実況席の映像へ切り替わったり、最終スコアのボードを映しながらアナウンサーと解説者が大会の総括を被せてきて終了、というパターンが多かった。あの長年のフラストレーションが、ついに解消されたのだ。
ただ、ノーカットで見られるようになったからこそ、余計に気になってしまうこともある。
優勝者がスピーチの冒頭で語る「本大会を開催してくださったスポンサーの皆様、ゴルフ場関係者の皆様、ボランティアの皆様……」とつづくお決まりの感謝のくだりだ。そこまではいい。だが、最後に取ってつけたように「1週間ありがとうございました」と締めくくるJLPGAの定型カンペには、元裏方として毎回強烈な違和感を覚える。
プロのトーナメントを招致し、あのレベルのコースを仕上げるには、1週間どころではない膨大な準備期間と労力が必要だからだ。「どうもありがとうございました」と、ただシンプルに締めくくるだけで十分なのだ。
テレビ局が作る「お涙頂戴のドラマ」は、もういらない。
メディアの裏事情を肴にしながら、作られていないノーカットの熱狂に純粋に酔いしれる。そんな新しい観戦スタイルこそが、現代のゴルファーの正しい週末の過ごし方だ。
