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ただ、尻を顔にしたかっただけなのに

尻を顔にしようと思う。

自分の体を洗っていてふと気づいてしまったのだが、わたしの尻は、ツルツルでスベスベなのだ。紫外線に晒されることもなく、パンツの中で四十年、大切に守られてきた箱入り娘である。多少垂れてはいるが、わが身をくまなく確認したところ、肌質では尻に勝る部位はなかった。

比べて顔はどうだろう。

どれだけ美容液を塗りたくろうと、夏の日差しを浴び、北風に吹かれ、喜怒哀楽の激しいわたしに振り回され続けた顔の皮膚は、すっかりお疲れだ。それなのにここ数年、「シミが増えた」だの「ちりめんジワだらけ」だの、果ては「なんか最近、顔が縦に伸びたわ」と、散々わたしから文句をぶつけられながら生きている。ああ可哀想に。

だから、ぬくぬくと温室育ちしている尻に、そろそろ外の世界を知ってもらおうかと思っている。自分の実力だと思わないでくれ。環境が良かっただけ。最近はもっぱら綿100%のやわらかい布地に包まれているじゃないか。甘ったれるんじゃないよ。

そもそも尻は鏡を見ない。もしかして自分が垂れてきていることにさえ気づいていないんじゃないだろうか。写真を見て「え、こんなんだったっけ」と肩を落とすこともない。呑気な話である。

もう交代。今すぐ交代しよう。

わたしの顔面を、今度はそのぬくぬくのパンツの中に入れて、静かに、ただただ休ませてあげたい。パンツはシルクにしてあげようかしら。

一方、顔になった尻は、さっそく「肌きれいだね」なんてチヤホヤされるかもしれない。そんなもん最初だけだから、真に受けるんじゃないよ。

だいたい、尻は知らないだろう。

彼氏と喧嘩をした翌日、泣きすぎてまぶたが腫れ上がり、冷やしながら出勤したあの日のこと。
友達と朝まで飲み明かしたあと、マスカラが溶けてパンダみたいになったお互いの顔を指差しあって、笑い転げたあの日のこと。
夫と喧嘩して、腹が立って仕方がないので爆食いしたら、吹き出物が出てきて余計に腹が立ったあの日のこと。
それでも、夕飯のハンバーグに美味しそうにかぶりつく夫を見て、少しだけ口角を上げたあの日のこと。

……尻、すまん。交代はなしにしよう。


体を拭きながらもう一度尻をよく見た。
左下にでかいシミが一つあった。





こちらは、マイキーさんが企画された「 #エッセイしりとり 」で、コハクシスさんからバトンを受け取りました。マイキーさん、楽しい企画に参加させていただきありがとうございました!

さて。三人までバトンを渡せるのだが、わたしは今回、この方にバトンを渡したいと思う。バトンと言いつつ、ただわたしが読んでみたいだけである。料理、お酒、家庭菜園など、あらゆるジャンルのエッセイをユーモアを交えて書かれている日常無常さん。良き夫、良きパパの日常が垣間見える一方で、ときどきそれを忘れそうになるエッセイ(チョコカップでチョコレーゼ屋さんごっこ)もあるので、目が離せない。

こちらのエッセイにも尻が出てくるが、お子さまとのほっこりするお話だ。

とてもお忙しいと思うので、スルーしていただいてOKです!もし書いていただけるのであれば、「に」からはじまるタイトルでお願いします。詳しいことは、マイキーさんの記事をご覧ください!(丸投げ)

そして、わたしにバトンを回してくださったコハクシスさんはこちら。

とんでもなくハードルを上げられたので、コハクシスさんには「ただ、尻を顔にしたかっただけなのに」という同じタイトルで何か書いていただけないだろうかと企んでいる。にやり。
いたら、早速!






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