何度叱っても同じことを繰り返す子に、説明を増やさなくていい。3歳までに届く“子ども語”の作り方
ソファの上で跳び始めた子に、
「危ないから、やめてね」
そう伝えた数分後、また跳んでいる。
下の子のおもちゃを取ったので、
「人のものを勝手に取ったらダメだよ」
と説明したのに、また同じことをする。
朝から何度も繰り返されると、だんだん声が大きくなります。
「さっき言ったよね?」
「何回言ったら分かるの?」
「ママの話、ちゃんと聞いてる?」
そして夜になると、
「もっと落ち着いて話せばよかった」
「私の伝え方が悪いのかな」
「こんなに同じことを繰り返すのは、発達に何かあるのかな」
と、不安が押し寄せてくる。
でも、何度注意しても同じ行動をするという一つの姿だけで、発達障害と決まるわけではありません。
幼い子どもは、話を聞いていないのではなく、聞いた言葉を「次にする行動」へつなげる力が、まだ育っている途中なのです。
丁寧に説明するほど、伝わるはずなのに
一般的には、子どもにも理由をきちんと説明することが大切だと言われています。
だからママは、分かってもらおうとして言葉を増やします。
「ソファの上で跳んだら落ちるかもしれないでしょ。下の子も近くにいるし、ぶつかったら危ないから、何度も跳ばないでって言っているの」
理由も伝えている。
危険なことも説明している。
どうして叱っているのかも話している。
それなのに、また繰り返す。
すると、
「わざとやっているの?」
「私のことを軽く見ているの?」
と思ってしまうことがあります。
けれど、子どもに届いていない原因は、ママの説明が足りないからではありません。
むしろ、幼い子どもには、言葉が多すぎることがあるのです。
叱られているときほど、長い言葉は残りにくい
子どもは叱られると、驚いたり、悔しくなったり、悲しくなったりします。
気持ちが大きく動いているときは、普段よりも話を理解する余裕が少なくなります。
大人の声は聞こえていても、
「結局、今は何をすればいいの?」
という部分まで受け取れていないことがあるのです。
特に幼い子どもにとって、
「ちゃんとして」
「危ないことはしないで」
「人が嫌がることはやめて」
という言葉は、意味が広すぎます。
大人には分かる言葉でも、子どもには、具体的な動きが見えません。
これは、ママのしつけが甘いからでも、子どもが反省していないからでもありません。
大人に伝わる言葉と、幼い子どもが行動に移せる言葉には、違いがあるのです。
今日のキーワードは「一文一行動」
幼い子どもに伝えるときに意識したいのが、
「一文一行動」です。
一度の声かけに入れるのは、今してほしい行動を一つだけ。
料理を始めたばかりの人に、
「野菜を洗って、皮をむいて、大きさをそろえて切って、鍋を温めて、焦げないように炒めてね」
と一度に伝えたら、どこから始めればよいか迷ってしまいます。
でも、
「まず、にんじんを洗おう」
と一つだけ言われたら、すぐに動けます。
幼い子どもへの声かけも同じです。
たくさん説明するより、今必要な行動を一つだけ、短く伝えるほうが届きやすくなります。
たとえば、ソファで跳んでいたら、
「何度言ったら分かるの。落ちたら危ないでしょ」
ではなく、
「ソファでは座ろう」
と伝えます。
おもちゃを取ったときは、
「人のものを勝手に取ったらダメ。いつも言っているでしょ」
ではなく、
「おもちゃを返そう」
と伝えます。
返したあとに、
「使いたいときは『貸して』と言おうね」
と、次の行動を一つ加えれば十分です。
理由を伝える場合も、短くします。
「人に当たると痛い。おもちゃは床に置こう」
理由を一つ。
してほしい行動を一つ。
この形なら、子どもは「叱られた」という感情だけで終わらず、今すべきことを理解しやすくなります。
「ダメ」だけでは、次の行動が分からない
子どもを止めなければならない場面では、
「ダメ!」
「やめて!」
と、とっさに言うことがあります。
危険が迫っているときは、それで構いません。
ただ、止めたあとに「何をすればよいか」まで伝えないと、子どもは次の動きを選べません。
「走らないで」だけではなく、
「ここは歩こう」
「投げないで」だけではなく、
「箱に入れよう」
「大きな声を出さないで」だけではなく、
「小さな声で話そう」
してほしくない行動を伝えるだけで終わらず、代わりにできる行動を一つ知らせます。
子どもは、禁止されたことから正解を考え出すより、具体的な動きを教えてもらったほうが行動しやすいのです。
同じ言葉を繰り返すことにも意味がある
一度短く伝えたからといって、翌日から必ずできるようになるわけではありません。
幼い子どもは、分かったことをすぐに忘れます。
楽しくなると約束が抜ける。
眠いときは、いつもできることができない。
気持ちが高ぶると、言葉より先に体が動く。
だから、同じことを何度も教える必要があります。
そのたびに説明を長くしたり、言葉を強くしたりしなくても大丈夫です。
昨日も今日も、
「ソファでは座ろう」
と、同じ短い言葉を繰り返す。
言葉と行動が少しずつ結びつくことで、子どもはルールを身につけていきます。
今日、説明を一つだけ短くしてみる
今日、子どもが同じことを繰り返したら、説明を始める前に一度だけ考えてみてください。
「今、この子にしてほしい行動は何だろう?」
そして、一文で伝えます。
「手はおひざに置こう」
「靴は玄関に置こう」
「おもちゃを返そう」
完璧な言葉を探さなくても大丈夫です。
いつも穏やかに言えなくても大丈夫です。
何度叱っても同じことをするのは、子どもがママの話を無視しているからとは限りません。
長い大人の言葉を、まだ行動に変えられないだけかもしれないのです。
説明を増やすのではなく、子どもが今できる一つの行動まで言葉を小さくする。
その短い一文が、何度言っても伝わらない毎日を、少しずつ「分かって動ける」に変えていきます。
