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映画感想『キャットシャーク』子どものためのZ級映画

『キャットシャーク』
監督:マーク・ポロニア
池袋HUMAXシネマズ「第3回 東京国際サメ映画祭」で観賞

B級映画とZ級映画

 「B級映画」という言葉があります。Wikipediaよれば、もともとはアメリカで1930年代から1950年代初めごろまで多かった二本立て上映形式の興行において、目玉の作品では無い方の低予算映画につけられた俗称だったそうです。
 しかし今ではかなりファジーな使われ方をされることが多く、その人にとって傑作や名作ではない映画を全てB級と呼ぶ人もいれば、アート系や人間ドラマ重視のいわゆる「高尚」な作品ではないエンタメ映画全般をB級とする人もいます。

 何をもってB級とするかはほとんどその人の好みに左右されています。スピルバーグは世界一有名な映画監督であり世界一映画が上手い監督のひとりですが、高尚な映画こそ至高と考える人にとっては『ジョーズ』(1975年)はサメが出て人を襲う俗悪な娯楽映画なのでB級。という認識かもしれません(娯楽映画としては後世に大きな影響を与えたトップクラスの作品です)。

 そのように、A級B級の分類は、映画ジャンルや作風に対する個人の好き嫌いにすぎないのかもしれません。ですが世の中には、A級B級どころではなく、普通に想定される「映画」の水準をかなり下回る作品も存在しています。
 映画というものはTVドラマのような一般的な映像作品と比べ、シネマティックな映像や計算された美しいショット、1本の「作品」としての完成度など、高いクオリティが期待されます。
 しかし、合成をごまかす気のないチープな映像。ただ二人の人物が突っ立っているだけの構図。納得のいかない脚本。俳優のオーラが感じられないその辺にいそうな人が主演。そのような映画が世の中にはあります。

 それらの映画群は、あまりの安っぽさの突き抜けぶりと、それによって醸し出される独特のユーモア、そしてそんな映画を完成させ世に放ってしまった行為に対するある種の敬意と畏怖を込めて「Z級映画」と呼ばれたりします。

 『キャットシャーク』のマーク・ポロニア監督は、その「Z級映画」を、映画史において最も量産している監督のひとりです。日本語の映画情報サイトallcinemaに登録されている監督作品だけでも20本。アメリカの映画評論サイトRotten Tomatoesに登録されている関わった作品の数は80本にも及びます。

Z級映画の楽しまれ方

 「Z級映画」を体験したことのない人にその感触を説明するのはとても難しいので、まずは『キャットシャーク』と同じマーク・ポロニア監督による『パンダザウルス』(2024年)のトレイラーをご覧ください。

 この記事は『パンダザウルス』のレビューではないので作品個別の感想は割愛しますが、あきらかに人形に見えるモンスターをそのまま雑に撮影している手作り感や、その辺の林や草地で撮影しているように見えるインスタントさ、あまり意味は分からないがとにかくハッタリをきかせてくる宣伝キャッチなど、Z級映画特有の「低さ」が伝わるでしょうか?

 「Z級映画」は、映画マニアの中でもごく一部の人によって楽しまれています。ホラーやモンスターパニック、SF映画のようなジャンルが好きなタイプの映画マニアは、それらを色々観ていくうちにある日、未知のZ級映画に必ず遭遇します。

 ちゃんとしたA級B級の映画ではありえない奇抜な設定やおかしな展開。映画の体裁を保つ尺を稼ぐため唐突に挿入される資料映像やダラダラ長い会話シーン。PS2くらいのクオリティのCG。そのCGすら使わず人形を合成して済ますVFX。商業作品とは思えない下品さ。バカみたいな登場人物、など、「Z級映画」ならではの「低い」映画表現があります。

 人によっては真面目に怒って酷評レビューを投稿してしまいますが、それら「低さ」が、その人にとってなんかいい感じにマリアージュしたとき、その特殊なクオリア(感覚的な意識や経験)がその人の「面白さ」のツボにハマる場合があります。

 その未知の「面白さ」を体験してしまった一部のマニアは、「Z級映画」のDVDを集めたり、U-NEXTで評価の星が低い作品に敢えて挑戦したり、池袋で開催されるサメ映画の上映イベントに通うようになってしまいます。

 そのように、「Z級映画」は大人のマニアが独特の「味」を楽しむタイプの作品です。ところがマーク・ポロニア監督によれば『キャットシャーク』はティーンエイジャーのための作品だというのです…

第3回東京国際サメ映画祭で来日したマーク・ポロニア監督

こいつがキャットシャークだ

 亡き祖父が残した家に父親と訪れた若い男の子とそこで出会ったガールフレンドは、海で釣り上げた奇妙な生き物キャットシャーク(略称CS)とお友達になります。
 CSは大昔、伝説の海賊に飼われていた猫でしたが、海賊船が嵐に見舞われて沈没する寸前に、海賊が所持していた秘宝の持っている魔法の力でサメと合体し、海を泳げる能力を手に入れました。あと何故か喋れるようになりました。

 キャットシャークは困惑する二人に「まずはリラックスしよう」と落ち着かせる大人の余裕と陽気さを兼ね備えた存在です。不思議な魔法も使えます。

 このキャットシャーク、ポスターではかわいい猫ちゃんのフェイスをしていますが、これはZ級映画によくあるイメージ画像(フェイク)です。

映画の本編に出てくるのはこいつです。

 結構おじさんっぽい造形ですが、お話の中では大昔から生き続けているゆかいな存在なので、造形の方向性としては間違ってはいません。ポスターがウソつきなだけです。

子どものためのZ級映画

 『キャットシャーク』は、男の子とキャットシャークの小さな冒険を描いた一夏のジュブナイル映画です。

 男の子はガールフレンドとCSと一緒に、海賊の秘宝を開ける鍵を探しに森に出かけます。秘宝を探しに行くのではなく秘宝を開ける鍵を探しに行く回りくどさが気になりますが、そういう話です。あと、冒険といっても結構近所の森を普通に歩いているだけなのも気になります。

 ところが、海賊の格好をした悪い男が「激ウマ海鮮ビュッフェ」を開業するための土地と開業資金をゲットしようと、男の子の祖父が大切に残してきた家とキャットシャークを狙っているのだった…

 『キャットシャーク』は、Z級映画によくある無駄に残酷な描写のようなものはありません。おバカで優しい夏の小さな冒険が、大らかに展開します。
 その冒険は近所の森の林道をお散歩のようにテクテク歩く形で進行します。その合間には、悪者が空想する「激ウマ海鮮ビュッフェ」のCMや、ご機嫌なダンスシーン。繰り返される「激ウマ海鮮ビュッフェ」のCMや、キャットシャークが披露する小粋な海賊ジョーク。爽やかな青春応援ソングのMVや、しつこい「激ウマ海鮮ビュッフェ」のCMが挟まり映画の尺を稼ぎます。

 中盤で流れる爽やかな青春応援ソングのMVでは、キャットシャークとの出会いなどそれまでの映像が総集編っぽくリピートされます。まるで走馬灯みたいな感じになるのですが、挿入される映像の中にはその後のシーン(未来の記憶)も含まれており、過去と未来が入り乱れるクリストファー・ノーランの映画か?と5秒くらい思いました。

 応援ソングの歌詞は、まだ何者でもないが無限の可能性を持ったティーンエイジャーの若者たち(監督の想定する視聴者層)にエールを送る内容。サビの「君ならできる」というメッセージを聞いて少しウルっとしましたが、そこから50回くらい「君ならできる」と言い続けるので、イライラを通り越して私も何かができる気がしてきました。

 『キャットシャーク』ではそのような、妙なテンポとゆるい展開が続きます。そして、「この人たちって今は何をしてるんだっけ?」と私の頭が混乱しはじめたくらいのちょうどいい所で、この映画は『ハウルの動く城』のラストくらいに唐突にめでたしめでたしの結末を迎えます。このような、急に投げ出されて終わり気持ちの整理がつなかいまま唖然とする感触も、Z級映画の持つ面白さの一つです。

 『キャットシャーク』は、超低予算Z級映画のリソースとノウハウで真っ当な子ども向けムービーを作ろうと挑戦した、善い精神を持つ映画です。
まずはリラックスしよう。君ならできる。

 『東京国際サメ映画祭』でのイベント上映は一回だけでしたが、UNEXTでは8/3(水)までの超短期間限定で配信が始まっています。ティーンエイジャー向けのZ級映画という映画史上まれなタイプの作品をあなたも味わってみてください。君ならできる。

「キャットシャーク」をU-NEXTで視聴

第3回東京国際サメ映画祭もラストスパート

 7月の頭から開催されている『第3回東京国際サメ映画祭』も終盤となりました。上映日は8/1(土)と8/2(日)を残すのみ。気になるサメ映画ばかりが上映されます。

8/1(土)に上映される『モーズ』

これはなんなんでしょうか?
気になる人は自分の目で確かめるしかありません。

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これまでの映画レビュー記事などまとめ↓
A級映画もZ級映画もあるので読んでください。

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