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こころに残る色 #3

久しぶりの昔の写真を見た。その時の思い出を少し。

タイでの思い出

タイに行ったすぐの土日は、驚くほど暇だった。

平日は仕事。

でも休日になると、
急に時間だけが残る。

そんな時、

ずっと前から
「作ってみたい」と思っていたものを思い出した。

ギターのエフェクター。

興味はあった。

いつか作ってみたいとも
思っていた。

でも、
やってこなかった。

きっかけは、
本当に何もすることがなかったから。

そしてもうひとつ。

休日くらい、
仕事のことを忘れて、

何かに夢中になる時間が
欲しかった。

ただ、

エフェクターを作るといっても、
部品はどこで買えばいいのだろう。

抵抗。

コンデンサ。

スイッチ。

ケース。

必要なものを調べながら、
ネットを検索した。

そこで見つけたのが、

「タイの秋葉原」とも呼ばれる
バンモーマーケットだった。

もちろん、
タイ語は話せない。

だから、

必要な部品をリストにして、
紙にプリントアウトした。

それを握りしめて、

土曜日の朝、
少し早めに家を出た。

近くのバス停へ向かい、

目当てのバスを待つ。

やってきたバスに乗ると、

周りにいるのは、
タイの人ばかり。

クーラー付きバス

手元には、
Googleマップ。

今どこを走っているのか。

本当に着くのか。

画面と窓の外を
何度も見比べていた。

不安もある。

でも、

それ以上に、
少しワクワクしていた。

バスに揺られ、

たどり着いた
バンモーマーケット。

知らない街。

知らない言葉。

たくさんの小さな店。

その中から、

目当てのパーツを
売っていそうな店を探した。

言葉では、
うまく伝えられない。

だから、

持ってきた紙を見せる。

店の人が紙を見て、

棚からひとつずつ
部品を出してくれる。

抵抗。

コンデンサ。

小さな電子部品。

ただのパーツなのに、

その一つひとつが
少し特別に見えた。

何とか必要なものを手に入れ、

それを持って
家へ帰った。

あの日のことを、

今でも覚えている。

エフェクターを作ったこと以上に、

知らない場所へ
一人で向かったこと。

言葉が通じなくても、

紙一枚を持って、
欲しいものを探したこと。

そして、

「やってみたい」と思っていたことを、

ようやく
自分で始めたこと。

暇だった休日に、

少しだけ色がついた。

何もなかったからこそ、

ずっと心の片隅にあったものが
顔を出したのかもしれない。

何年経っても、

あの日のバスの景色や、

小さな電子部品が並ぶ店の空気を
思い出すことがある。

こころに残る色は、

特別な出来事だけが
つくるものではないのかもしれない。

ふと動いてみた日。

少し不安だった日。

それでも、
自分で選んで一歩を踏み出した日。

そんな日の景色が、

時間が経っても消えずに、

自分の中に
静かに残っている。

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