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”Morning Shot” 【激辛コラム】聖人ぶる役者の「安全配慮」という名のポーズ――高嶋政伸が語るインティマシーの甘美な欺瞞

トラウマ回避の「安全撮影」が生む薄味ドラマ。狂気を演じる覚悟の欠如

【激辛コラム】聖人ぶる役者の「安全配慮」という名のポーズ――高嶋政伸が語るインティマシーの甘美な欺瞞


プロの配慮か、保身の演出か。インティマシーコーディネーター旋風が隠す芸能界の毒と甘え


「密室の加害者を演じる僕の苦悩」――高嶋政伸氏のエッセイを読みながら、喉の奥にへばりつくような強い違和感を拭えずにいた。

NHKドラマ『大奥』での徳川家慶役。実の娘に性的暴行を繰り返すという極悪非道の鬼畜を演じるにあたり、彼は「インティマシーコーディネーター」の導入を絶対条件としたという。10代の相手役にトラウマを負わせないための細心の配慮、除菌ウェットティッシュをドラッグストアで吟味するプロ意識、撮影当日に「レイプ」等の危険ワードを封印する配慮……。なるほど、文章の端々からは「誠実で優しいベテラン俳優」の温もりある体温が伝わってくる。

だが、甘い。甘すぎて虫の息になりそうだ。

どこまでが真の「尊厳の保護」で、どこからが「役者の保身」なのか。

性暴力の描写において、相手役の身心を守るシステム自体を否定するつもりはない。ハリウッドの事例を引き引き、時代の最先端の倫理観にアップデートしていますと言わんばかりのドヤ顔も、今どきのコンプライアンス社会においては正解なのだろう。

しかし、私が反吐を吐きそうになるのは、そうした「安全策」を何重にも張り巡らせたうえで、「自分は家族を愛するフツーの父親だが、カメラが回れば鬼畜になれる」という役者バカ気取りの自我(エゴ)を気持ちよさそうに語るその構図だ。

「僕に娘がいたら、とても演じられない」と涙ぐみ、我が子の寝顔を思い出して「因果な稼業だな」と浸ってみせる。……結構なことだ。だが、その程度の倫理的揺らぎや傷つきを免罪符にして、安全なネットの向こう側から「悪」の果実だけを掠め取ろうとしてはいないか。アドレナリンを抑え、ワンカットずつ慎重に切り貼りされ、言葉狩りまで行われた現場で、果たして人間の底なしの「毒」や「密室の狂気」が本当に立ち昇るのか。

結局のところ、インティマシーコーディネーターという「緩衝材」を挟むことで、最も救われているのは相手役の女優ではなく、加害者を演じる自分自身の好感度とメンタルなのではないか。「配慮の行き届いた優しいおじさん」というポーズを崩さずに鬼畜を演じ切る。そのしたたかなズルさに、世間はまんまと感動している。

現場が終われば「さあ、何を食べて帰ろうか」とお腹を鳴らす。その健康的な図々しさこそが、実は一番の怪物なのかもしれない。表現の安全と引き換えに、私たちは何を失っているのか。聖人ぶった役者たちが傷つかない世界でつくられるドラマは、どこまでも毒を抜かれた精進料理のように味気ない。

〈了〉



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