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こんな老後を夢みていたのに


救急車の中。サイレンの音が、頭の奥を切り裂くように鳴り続けている。
私は目を閉じた。
――なぜ、こんなことになったのだろう。

今日、私は死ぬのかもしれない。
そう思った瞬間、走馬灯のように過去の出来事がくるくると回り始めた。

夫がおかしくなったのは、2018年、あの事故からだ。
昨年の10月までは要介護3だった。
それが今は、要介護5。
いったい誰が、こんな未来を想像できただろう。

あの事故は、2018年の春だった。
夫の趣味はテニス、麻雀、将棋。
毎週同じルーティンで、週に三回は必ず続けていた。

春のある日、いつものようにテニス仲間とゲームをしていた。
その時だった。
後ろから、友人が打ったショートクロスのボールが、前衛にいた夫の耳の後ろに、思いきり直撃した。

激痛にうずくまる夫。
すぐに病院へ行き、ステロイドを打っていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
――でも、すべては「たられば」だ。

その日は日曜日。
どこの病院も休みで、緊急外来に電話しても「耳鼻科の医師がいないため診療できない」と断られた。

夫は「明日行けばいい」と言い放ち、テニスのあと、いつも通り麻雀へ向かった。

そして翌日。
「耳が聞こえない!」
夫はそう叫んだ。

診断は、突発性難聴。

この事故を境に、すべてが、音を立てて悪い方向へ動き始めた。

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