気まぐれエッセイ「ゆれゆれぐさ」8
退屈なので、心のゆれうごくままに、
あんなこと、こんなこと、書きつけてみようか。
むかしむかしの、高名な法師さんみたいにね。
第16話「政府のお仕事も、ずいぶんやりました」
大蔵省(現・財務省)、通産省(現・経産省)、建設省(現・国交省)をはじめ、日本政府の省庁ごとの広報のお仕事もずいぶん担当させていただきました。今回は、それらの中から3点ほどをご紹介しましょう。
「恐いのは、噂です。AIDS」
厚生省(現・厚労省)の広報キャンペーン。1980年に最初の感染者がアメリカで見つかってから、エイズは日本国内にもじわじわと広がっていった。政府のエイズ予防広報のスタンスは「コンドームを使用しましょう」というのが第1段階としてあって、これは第2段階の「電車の吊り革で感染するなどの間違った噂や、感染者への偏見や差別をなくしましょう」というスタンスに基づいた広報コピーである。ちなみにまだ第1段階のとき、巨大なコンドームのビジュアルに「エイズがそうなら、人類はこうです。」というキャッチコピーを付けて提案したのだが、「やり過ぎだねえ」と担当のお役人にNGを食らってしまった。良い案だと思って出したのだが、惜しいことをしたものだ。
「始めたら、終わりです。覚せい剤」
厚生省・警察庁・警視庁の合同広報キャンペーン。この類の広報では「覚せい剤やめますか? 人間やめますか?」という名作コピーが過去にあり、
その凄まじいインパクトに負けず劣らぬものを書こうとして頑張ったのだが、残念ながら、やや力及ばずと言ったところだろうか。
「牛は食べてもいいの? Why?」
水産庁の広報キャンペーン。この仕事を請け負った1990年代の初頭、日本の伝統的な食文化である「鯨食」は、シー・シェパードなる団体による危険極まりない調査捕鯨妨害が激化するなど、反捕鯨国たちから猛反発を受けていた。おりしもIWC(国際捕鯨委員会)の総会が日本で開催されるのを前に、鯨食を守るべく国民の総意を結束させようと、政府は「反・反捕鯨」キャンペーンを行なったというわけである。「欧米人が牛を食うのに、どうして日本人が鯨を食って悪い!どちらも哺乳動物じゃないか!」と激昂しながらオリエンテーションをする水産庁の担当者の声を、そのままキャッチコピーとして使わせてもらった。お役人の中にも気骨のある人がいるものだ、と感心した。
