短編物語「おいしスープ」
今となっては昔の話。ポルトガルのある村を、一人の修道士が歩いていた。
暑い夏の日の昼食どきだった。彼は、農家の戸口を訪れては、修道院のために寄付を求めて歩いているのだった。だが、農夫たちは、何も与えようとはしなかった。修道士は、せめて家の中に入れて、すこし涼ませてくださいと頼んだ。
許されて中に入ると、腰をおろした。修道士は、
とてもお腹が空いていた。そこで、
「さあ、石のスープでも作ろうか」
と、独りごとを言った。
農夫も、妻も、子どもたちも、この冗談を聞いて
笑った。修道士はまじめな顔で道に出て、手ごろな石を見つけ、持って入ってきた。それを水で洗い、よく拭いてから、農夫に深鍋を貸してくれと頼んだ。借りたその鍋を火にかけ、石と水と、もらったひとつまみの塩を、鍋の中に入れた。
やがて、石は煮立ってきた。
「ほんのわずかの油があれば、ほっぺたが落ちる
ほど美味しくなるのだけどなあ……」
修道士の言葉に、家の人びとはだんだん興味を持ちはじめ、油を少しやった。それを鍋の中に入れた
のち、また修道士はつぶやいた。
「これでよし、と。しかし、野菜があれば、もっといいんだがなあ……」
家の人たちは、菜っ葉とカブと立派なキャベツを
持ってきてくれた。それらをすべて鍋の中に投げこむと、うっとりするような香りをさせながら、ぐつぐつ煮立ってきた。けれど修道士は、まだぶつぶつ言っていた。
「だいぶん煮えた。しかしソーセージが少しあれば、王さまにでも出せるようなシチューになるんだがなあ……」
それを聞き、農夫は
「わしは最後まで、ことの次第を見とどける主義なんだ。おい、ソーセージを持ってきて、この坊さんにやりな」
と、妻に声をかけた。ソーセージがくると、修道士は、それも鍋の中に投げこんだ。かなり大きなソーセージだった。誰もが口につばをためるような、
ご馳走の匂いをふりまいていた。
修道士はスープ皿を求め、背負い袋から固いパンのかたまりを取り出すと、静かに腰を落ちつけた。
そして、スープ皿に鍋の中身をゆっくりと移し、
味わいながら食べた。なくなると、また鍋の中身を移した。こうして、ついに鍋は空になり、底を見せていた。そこには、石ころが光っていた。修道士は、石ころを取り出すと、水でよく洗い、拭いて
から言った。
「この石は、もういちど使えるわい。こうして、
スープをうまく作れたように、人びとの心が、いつも修道院にも親切に動いてほしいものだ……」
それから、ゆっくりと椅子から立ちあがり、家から去っていった。
(品は、石、鍋な。私意は、無し。)
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