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『VIVANT』をまだ観ていない人へ。続編の前に、乃木たちの物語を知ってほしい

※この記事は、第1シーズン最終回までのネタバレを含みます。

あの赤い饅頭の続きを、ようやく観られます。

2023年の最終回。神田明神に置かれていたのは、別班から乃木への招集を知らせる赤い饅頭でした。

父との物語を終えたばかりの乃木に、もう次の任務が待っている。

「ここで終わるの?」

そう思った場面から約3年。『VIVANT』第2シーズンが、2026年7月26日から始まります。

しかも今回は2クール連続放送。物語も、前作のラストシーン直後から続いていきます。

私は前作が大好きでした。

放送が終わるたびに、「野崎はもう気づいているのでは」「乃木はどこまで本当のことを話しているのだろう」と考える。それでも翌週には、こちらの予想とは違う方向へ物語が動いていきました。

誰が味方で、誰が敵なのか。
それ以前に、味方と敵を簡単に分けてよい話なのか。

毎週のように登場人物を疑っていたはずなのに、最後には、その人物が抱えてきた事情まで知りたくなる。『VIVANT』は、謎を解くだけでは終わらないドラマでした。

続編には興味があるけれど、前作を観ていないから入りにくい。
そんな理由で見送ってしまう人がいるなら、少しもったいないと思います。

前作に夢中になった一人として、乃木たちがどんな物語を歩いてきたのか。そして、なぜ今からでも追いついてほしいのかを振り返ります。


まずは、7人の顔と名前を結びつけてほしい

『VIVANT』には、別班、公安、テント、丸菱商事など、立場の異なる人物が次々と登場します。
出演者の顔は知っていても、役名や関係までは分からないという人も多いでしょう。

続編から観るなら、まずはこの7人を押さえておくと物語へ入りやすくなります。

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\begin{array}{|l|l|l|}
\hline
登場人物 & 俳優 & どんな人物か \\
\hline
乃木憂助 & 堺雅人 & 丸菱商事の社員。実は秘密組織「別班」の一員で、Fと呼ばれるもう一人の自分と会話する \\
\hline
野崎守 & 阿部寛 & 警視庁公安部の刑事。豪快に見えるが、相手の小さな違和感を見逃さない \\
\hline
柚木薫 & 二階堂ふみ & バルカで医療活動をしていた医師。乃木や野崎と行動を共にする \\
\hline
黒須駿 & 松坂桃李 & 乃木と任務にあたる別班員。乃木を深く信頼する相棒 \\
\hline
ノコル & 二宮和也 & テントの幹部。ベキに息子同然に育てられた人物 \\
\hline
ノゴーン・ベキ & 役所広司 & 国際組織テントのリーダー。乃木が幼いころに生き別れた実の父 \\
\hline
新庄浩太郎 & 竜星涼 & 野崎のそばで捜査を支える公安刑事。最終盤で物語の鍵を握る \\
\hline
\end{array}
$$

前半では、野崎に協力するドラムや、乃木たちを追うバルカ警察のチンギスも強い印象を残します。

ただ、続編へつながる人間関係を追うなら、まずは乃木を中心に、野崎、薫、黒須、ノコル、ベキ、新庄を覚えておけば、大きな流れはつかめます。

そして、このドラマのぜいたくさは、これだけの俳優が集まっていながら、誰か一人だけの作品に見えないところです。

阿部寛さん演じる野崎が現れれば、その場の空気が一気に変わる。

役所広司さん演じるベキが静かに座っているだけで、その人物が背負ってきた年月まで感じられる。

出演者の名前から興味を持った人でも、「この俳優が、こんな立場で乃木と向き合うのか」と分かれば、人物関係を追いやすくなるはずです。


始まりは、1,000万ドルから1億ドルへの誤送金だった

主人公の乃木憂助は、大手商社・丸菱商事に勤める会社員です。

物語は、バルカ共和国の企業へ1,000万ドルを送るはずが、誤って10倍の1億ドルを送金してしまうところから始まります。

取り戻さなければならない差額は9,000万ドル。
乃木はその行方を追い、バルカへ向かいます。

ところが現地で爆発事件に巻き込まれ、バルカ警察から追われる身になります。

そこで出会うのが、阿部寛さん演じる公安刑事・野崎守と、二階堂ふみさん演じる医師・柚木薫です。

チンギス率いる警察から逃れ、砂漠を越え、日本大使館を目指す3人。

日本の連続ドラマを観始めたはずなのに、目の前には広大な砂漠が広がり、ラクダに乗った一行が命がけで国境を目指している。

前半だけでも、一本の冒険映画を観ているような勢いがあります。

しかし、9,000万ドルの行方は物語の入り口にすぎません。
送金の裏にいる人物。
「VIVANT」という言葉。
そして、日本に存在するとされる秘密組織。

別々に見えた出来事がつながり始めると、商社の誤送金事件だったはずの話は、国家と国際組織をめぐる物語へ変わっていきます。


私は、野崎が現れるたびに安心していた

前作を観ていたとき、乃木と同じくらい好きだったのが野崎でした。

阿部寛さん演じる野崎は、声も態度も大きく、考えるより先に動いているように見えます。

けれど、実際には誰よりも周囲をよく見ている。
乃木の話を信じているようで、言葉と行動の小さなズレを拾っている。

疑っているのか。
それとも、分かったうえで泳がせているのか。

その境界を簡単には見せません。

バルカで追われている間は、野崎が現れるだけで「この人がいれば何とかなる」と感じました。

ところが日本へ戻ると、その鋭い観察力が乃木自身へ向けられていきます。
頼れる味方でありながら、乃木の正体へ近づいてくる最も怖い相手でもある。

乃木と野崎が同じ画面にいるだけで、会話の裏側まで気になってしまうのです。


頼りなかった乃木が、突然別の顔を見せる

物語の序盤、乃木は少し頼りない人物に見えます。

困ったような表情を浮かべ、野崎に振り回されながら、薫を気遣って懸命についていく。

堺雅人さんが演じているのだから、これだけでは終わらないだろう。
そう思っていても、乃木の正体が明らかになった瞬間の衝撃は別物でした。

乃木は、ただの商社マンではありません。

その正体は、日本へのテロや諜報活動を防ぐために動く、自衛隊直轄の非公認組織「別班」の諜報員でした。

乃木の表情が変わった瞬間、私は本当に声が出ました。

それまで少し肩をすぼめていた人物が、相手をまっすぐ見つめ、迷いのない声で話し始める。

顔も服装も同じなのに、別人に見える。

「あの頼りなさは演技だったのか。それとも、あれも乃木の一部だったのか」
急に、それまでの話を最初から観返したくなりました。

別班員として冷たい判断を下す一方で、薫やジャミーンへ向ける乃木の優しさまで偽物だったとは思えません。

どこまでが任務で、どこからが乃木自身の感情なのか。
それがはっきりしないから、正体が分かったあとも乃木から目を離せませんでした。

しかも、後から観直すと、乃木の正体につながる小さな動きは序盤から残されています。
真相を知ったあとで、同じ場面の意味が変わる。

前作をもう一度観たくなるのは、そのためです。


乃木と向き合う、もう一人の存在「F」

乃木には、Fと呼ばれるもう一人の存在がいます。

乃木が迷えば、Fが決断を迫る。
本人が目をそらしたい現実にも、容赦なく踏み込んでくる。

Fを見ていると、乃木が普段は押し込めている厳しさや迷いまで、目の前に立って話しかけてくるように感じました。

二人の人物が会話しているようで、一人の人間が自分自身から逃げられずにいる場面にも見えます。

第6話では、ホテルの一室で乃木とFが長く向き合います。
(この場面の撮影には、丸一日かかったそうです。)

そして、私が後から知って驚いたのが、二人が同じ画面にいる場面の撮影方法です。

堺雅人さんが乃木とFを演じ分けていますが、一部の撮影では、堺さんによく似た俳優が相手役として参加していました。

私はてっきり、堺さんが乃木とFを別々に演じ、映像を重ねているだけだと思っていました。

しかし現場には、視線を合わせ、会話の間を受け止める相手がいた。

そう知ってから観返すと、二人の立ち位置や、顔を向けるタイミングまで気になってきます。

続編では、Fが前作以上に物語へ関わってくるのかもしれません。


テントを、ただの悪役として嫌えなくなった

別班が追っていたのは、「テント」と呼ばれる国際組織です。
世界各地でテロや犯罪行為を請け負い、巨額の資金を得ていた…。

最初は、乃木たちが倒すべき敵にしか見えません。
ところが、テントの内側が見えてくると、その印象が揺らぎます。

テントは犯罪で得た資金を使い、バルカ国内の孤児たちを救っていました。
孤児院を運営し、子どもたちが生きていける場所を守っていたのです。

テントがしてきたことを知れば、味方したいとは思えません。
それでも、組織を率いるベキを、ただの悪人として嫌うこともできなくなりました。

そして、そのノゴーン・ベキこそ、乃木が幼いころに生き別れた実の父でした。

ここから『VIVANT』は、国際サスペンスであると同時に、父と息子の物語へ変わります。

別班員として、乃木はテントを止めなければならない。
けれど、目の前にいるのは、ずっと探し続けてきた父です。

役所広司さん演じるベキを見ていると、敵のはずなのに、この人の言葉を信じたくなる瞬間がありました。


黒須とノコルは、乃木を信じたいからこそ傷ついた

続編から観る人に知っておいてほしいのが、黒須とノコルです。

松坂桃李さん演じる黒須は、乃木と任務を共にする別班員。
二宮和也さん演じるノコルは、ベキに育てられたテントの幹部です。

一人は、乃木が別班員として信頼してきた相棒。
もう一人は、父を慕う気持ちを分け合う、弟のような存在です。

乃木はテントへ潜入するため、黒須を含む別班の仲間たちを銃撃し、組織を裏切ったように見せました。

私はあの場面で、「きっと作戦がある」と思いながらも、乃木を信じ切れなくなりました。

後に、撃たれた別班員たちは日本で生存していたことが分かります。
それでも、作戦を知らされず、信頼していた乃木に撃たれた黒須の表情は残ります。

一方のノコルも、突然現れた実子である乃木に、ベキの愛情を奪われるのではないかと揺れていました。

黒須とノコルは立場こそ正反対ですが、二人とも乃木を信じたいからこそ傷ついた人物です。


最後の最後まで、新庄にだまされた

前作の最終盤で、それまでの印象を大きく変えるのが、竜星涼さん演じる新庄浩太郎です。

新庄は、野崎の近くで捜査を支える公安刑事でした。

前作を観ていたときの私は、野崎の指示を受けながら動く、真面目で頼れる部下の一人だと思っていました。

ところが最終回、その見え方が一変します。

テント解体後、ベキ、バトラカ、ピヨは公安の管理下に置かれます。
しかし、3人は護送の途中で逃走。
その手引きをしたのが新庄でした。

新庄は、公安の内部にいながらテントへ情報を流す「モニター」だったのです。
野崎のそばで、ずっと公安の人間として動いていた新庄まで、こちらが見ていた姿とは違っていた。

最後の最後まで油断できないのが、『VIVANT』でした。


乃木は、本当に父を殺したのか

新庄の手引きで逃走したベキ、バトラカ、ピヨは、元公安幹部・上原史郎のもとへ向かいます。

上原は、バルカで公安の任務にあたっていた乃木卓と家族への救援を打ち切り、ベキから長く恨まれていた人物です。

ベキは、上原への復讐を果たそうとしていました。

その前に立ちはだかったのが乃木です。
乃木は、実の父であるベキと、バトラカ、ピヨへ銃を向け、3人を撃ちます。

3人はその場に倒れ、建物も炎に包まれます。表向きには、ベキたちはそこで死亡したことになりました。

けれど、前作を観た人の多くは、今も完全には信じていないはずです。
乃木は、別班の仲間たちを撃ったときにも急所を外していました。

父に向けた弾だけは、本当に命を奪ったのか。
乃木は別班員として父を止めたのか。
それとも、息子として父を生かしたのか。

その答えは、はっきりとは示されていません。

そして神田明神を訪れた乃木は、別班からの招集を知らせる赤い饅頭を見つけます。
一つの任務を終えたと思った直後、もう次の任務が始まろうとしていました。


『VIVANT』は、あらすじだけでは伝わらない

ここまで前作の物語を振り返ってきました。
ただ、『VIVANT』の魅力は、筋書きだけでは伝え切れません。

砂漠を進む乃木たち。
言葉を発さず、表情とスマートフォンの音声だけで場を和ませるドラム。
豪快に見えながら、すべてを観察している野崎。
乃木からFへ、目の前の空気が切り替わる一瞬。
乃木への信頼を傷つけられた黒須と、父の愛情を失うことを恐れるノコル。

長期にわたるモンゴルロケで撮られた砂漠や市街地の映像も、日本の連続ドラマを観ている感覚を忘れさせます。

しかし、映像が豪華だから好きになったわけではありません。

これだけ大きな物語なのに、最後に気になるのは、一人の人間が誰を信じ、何を守ろうとしたのかという部分です。

国家か、家族か。
任務か、感情か。

登場人物たちは、その間で迷いながら行動します。
だから観ているこちらも、簡単には答えを出せませんでした。


今から前作を観られる人が、少しうらやましい

「続編まで時間がないから、前作を観るのは大変そう」
そう思う人もいるでしょう。

けれど、今から観始める人は、前作をリアルタイムで追っていた側からすると、少しうらやましい立場でもあります。

第1シーズンの最後まで観たあと、約3年待つ必要がありません。
赤い饅頭を見つけた乃木の表情を見届け、その熱のまま第2シーズンへ進めます。

この記事で、乃木の正体やベキとの関係を知ってしまった人もいるでしょう。
それでも、『VIVANT』の面白さはなくなりません。

野崎は、いつから乃木の正体に近づいていたのか。
乃木の頼りなさは、どこまで演技だったのか。
ベキは最後まで、乃木を息子として信じていたのか。

結末を知っていても、その答えへ向かう表情や言葉に、何度も新しい発見があります。

7月26日、乃木たちの物語が再び動き始めます。

私はまた毎週、登場人物を疑い、「今度こそ分かった」と思い、おそらくその直後に裏切られるのでしょう。

前作を観ていなかった人にも、ぜひこの時間へ入ってきてほしい。

あの赤い饅頭の先へ進む前に、乃木たちがそこまでたどり着いた時間も、一緒に見届けてほしいと思います。

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