エッセイ「琥珀色の酒に魅せられて」
ウィスキーを嗜む男を格好いいとか、キザったらしいとかいう人がいるけれど、ありゃ偏見だよ。ウィスキーはカウンターに座って静かに飲むものなんだから。琥珀色の液体と静かに向かい合うことこそが美味いウィスキーの飲み方なんです。だってね、ウィスキーは日本酒やワインのように料理と組み合わせて飲むものでもなければ、ましてやビールジョッキになみなみ注いで派手に乾杯するものでもないんだからね。
ワインの話のときにも書いたんだけど、私は洋酒の種類というのはからっきしでね、どれそれがこんな味をしているなんて知識はないんだけど、好きで飲むのはジャックダニエルだね。炭で濾過したような香ばしいスモーキーフレーバーがツンとしたウィスキーの鋭い香りを優しく包んでくれるんだ。
ショットグラスでね、鼻に近づけると燻したような香りが広がって、口に含んだ瞬間にウィスキー本来の芳醇な香りとね、度数の高い酒ならではの舌がチリチリする感覚を味わえる。喉を焼いて胃が熱く感じられるのもウィスキーの醍醐味なんだよ。
このジャックダニエルはバーボンじゃない。あくまで「テネシーウィスキー」という種類でね、実は法律でその製法が厳格に定められた珍しい酒なんだ。トウモロコシなどをブレンドして作られるのだけれど、サトウカエデの炭で濾過する工程が義務付けられている。中でも「シングルバレル」と呼ばれるボトルは、他の樽とブレンドをせず、たった一つの樽からだけで作られる極上品である。樽ごとに少しずつ異なる個性をそのまま楽しめる贅沢な一品なんだよ。
まあ、他に知っていることといえばね、有名なバランタインなんてあるでしょう。多くはこぞって30年物を拝むけど、私は12年の方が美味いと思っているんだ、貧乏舌だからね。肩肘張らずに楽しめる味の方が、どうにも私の性に合っている気がするんです。
つまむのはもっぱらレーズンバターがいいんだけど、これも理にかなっているらしい。バターに含まれる脂質が胃の粘膜を保護してね、アルコールの急激な吸収を遅らせてくれる効果がある。強い酒から胃を守って悪酔いを防いでくれるというのだから、大したものだね。
ウィスキーを美味しく飲むには、ホテルのバーが好きなんだけどね、機会があればシガーバーが最高なんだよ。シグロとかね、そんな好きな葉巻の甘い香りと、それに負けないウィスキーの香りをゆっくり楽しむ。こんな贅沢、他にあるもんですか。
結局、こう書くと格好よさげになってしまうけれど、そんなときくらいは自分に酔っているとでも思って許してくださいな。
了
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