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大都会で公衆トイレに向き合う男 ~映画『PERFECT DAYS』(2023年)~

THE TOKYO TOILET
◇東京・渋谷区の16のトイレを創造性豊かな空間にするプロジェクト「THE TOKYO TOILET」。これが端緒となり、最初は短編映画の予定からヴィム・ベンダーズ監督の長編映画に変更されたという。主演の役所広司さんはカンヌ国際映画祭で柳楽優弥さん以来の男優賞を受賞した。

◇映画はフィクションで、主人公はトイレ清掃員。近所の高齢者がホウキで道路の塵を掃く音で目覚め、都内の公衆トイレを掃除する日常を送る。なるべく人と関わらない暮らしだが、大都会東京にあって社会との繋がりは断っておらず、行きつけの銭湯、古本屋、地下の居酒屋、石川さゆり演じるママがいるスナックがある。住まいは東京スカイツリー近くの下町のボロアパートで、一人暮らし。役名の平山小津安二郎監督の代表作の主人公に重ねている。

なぜ平山はトイレに向き合うのか

◇公衆トイレで容易に想像されるのは「3K」。もっとも他人の勝手が出る場であり、覚悟を要する仕事である。にもかかわらず平山は職人のように徹底的に清掃をこなしていく。鏡で便器の裏側まで汚れをチェックするし、ウォシュレットのお湯を手で受け止めて正しく作動するか確認する。おそらく10年くらいのキャリアではなかろうか。なぜ続けられるのか。答えを探しながら観る見方があるだろう。平山のような勤勉な清掃員のおかげで快適な都市生活を送ることができるから、鑑賞側は傷が修復されるように安らかな気持ちになる。

◇公開当時、映画館で観た初見時はわからなかったが、平山がトイレ清掃を選んだ理由には彼の過去が大きく関わっている。その理由はあえて語られないが、あれだけひたむきに日々の清掃業務に取り組むということは、過去の大きな出来事の埋め合せや罪滅ぼしなのかもしれない。

◇アクションもないし大きな事件が起きるわけではない。ただ、平山の謎について静かに考える映画体験になる。私たちが訪れる様々な施設のトイレ。その清掃に従事する人に対する見方が変わること必至である。

☆写真は自分で撮ったもの。映画の中では東京スカイツリーがよく映し出される。東京の新旧様々な場所が観られる。隅田川は思い出深い。川沿いで平山を含む大の男2人が影を踏み合って遊ぶシーンがあり、爆笑した。