【短編小説】 ライスシャワー
まだスモックの袖を噛むほど小さな頃、叔母の結婚式に出席したことがある。
白いドレス。
パラパラと鳴る拍手と米の雨。
当時の私は、それが何なのか見当もつかなかったが、物を投げて喜ばれることが珍しくも嬉しく、母の分まで投げたのだった。
「ライスシャワー」
それは、新郎新婦の幸福な旅路を祈る儀式。
それを知った今なら、もう少し大事にお米を撒けるだろう。 そして、その大切なお米を託してくれた母の眼差しの意味を理解できるだろう。
昔の人にとってお米は明日を越せる証であり、希望でもあったのではないだろうか。
だから、米を撒くという行為は「豊かでありますように、子宝に恵まれますように」だけでなく「どうかこの先、必要な糧が絶えることなく巡り、生きることに困りませんように」という、広く深い意味も内包していたのかもしれない。
思えば人生は、祝福より祈りの方が必要な日が多い。
豊かでありますように。
無事でありますように。
そして何より、どうかあなたや私の明日が、少しでも生きやすいものでありますように。
その温もりがあるだけで、なんだかやっていけそうな気がするのだから不思議なものだ。
「テンテンテンテンテンテンテーン」
朗らかで軽快で、いかにも悩みとは無縁そうなメロディーが、私の思索を遮った。どうやら、ご飯が炊けたらしい。
今日も今日とて、せっせとよそう。でもなんだか、いつもより丁寧だ。
八百万の神がやどりし、ほかほかのうましかてを前に、私はしっかりと手を合わせた。
🦊🦊🦊

元々「縁の交差点の物語」に焦点を当て製作した指輪を元に、短編小説を書いてみました。
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