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好奇心をもって、人生を生きる

皆さんが、はじめて展覧会に行ったのはいつでしょうか。

母の記憶によると、1971〜1972年に国立西洋美術館で開催された「ゴヤ展」が、私の美術館デビューだったそうです。

開催期間中にこの世に生を受けました。
…年齢がバレてしまうね!

美術館デビューは「ゴヤ展」

生後間もない私には、当然、当時の記憶はない。

『裸のマハ』を、食い入るようにじーっと見ていたそうだ!

フランシスコ・デ・ゴヤ『裸のマハ』プラド美術館所蔵(Wikimedia Commons)

私は外出先ではいつもおとなしく、泣くこともなく静かに作品を見ていたそうだ。ちなみに姉や弟は、あまり連れて行ってもらえなかったようだ。母なりに、それぞれの性格を見極めていたのだろう。

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私は幼少期から、絵を見るのも、描くのも、好きだった。

小学生の時には、水彩画で賞をもらったこともある。

ただ、怠惰な性格も影響してか、本格的に絵を描くことはなかった。

それでも、アートへの興味だけは、ずっと持ち続けてきたように思う。

2020年のコロナ禍以降、行動制限を余儀なくされた社会で、多くの美術館・博物館が一時休館になった。

開催されたとしても、事前予約制(日時指定)などが導入され、気軽に訪れることが難しくなった時期がある。

事前予約制は、混雑緩和の意味では一定の意義があったように思う。

そんな鬱屈とした状況が当たり前だった頃、
あるYouTubeチャンネルが開設された。

コロナ禍で出会ったチャンネル

山田五郎氏による
「山田五郎 オトナの教養講座」だ。

美術を中心に、歴史・神話・ファッション・建築・文化などを、豊富な知識とユーモアを交えてわかりやすく解説する教養チャンネル。
特に、西洋絵画の名作や画家の人生、作品に隠された時代背景や逸話を丁寧に紹介し、「美術は難しい」という印象を覆してくれます。
軽妙な語り口で、初心者から愛好家まで幅広く楽しめるのが魅力です。

長い間、美術展に足を運んでいても、なかなか自分なりの作品の見方ができていないような気がしていた。

中学生の頃には「西洋美術は、ギリシャ神話や新・旧約聖書を学ばないと理解できないな」と気がついて、いくつか書籍も読んだ。

でも、悲しいことに、体系的に理解を深めるにはいたらず、さらに加齢とともに覚えたことも忘れてしまうようになった。

モヤモヤしていた私に、このチャンネルは「純粋に美術を楽しむこと」の原点を思い出させてくれた。

初心者でも興味を持てるような質疑応答形式や、時にはゴシップともいえる下世話なエピソードも交え、敷居は低いのに、詳しい人でも十分楽しめる絶妙な内容になっていると思う。

アシスタントの方々とのやり取りも楽しく、自分も目の前で講義を受けているような気分になった。

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山田五郎さんは、先月、天に旅立たれた。

正式な逝去の発表がある前に公開された動画では、ご自身の新刊も紹介されていた。

これまでの動画と比べても、おつらそうなご様子ではあったが、それでも私はどこか楽観的に考えてしまい、新刊を楽しみに予約した。

逝去の報道があってから、数日後、
新刊が届いた。

『光の西洋絵画史』5巻セット〈金の闇〉篇
コンパクトなサイズながら、印刷も製本も美しい。
絵画鑑賞初心者の方や、私のように学び直したい方の最初の一歩にぴったりだと思います。

教養とは?

私はそもそも教養がないけれど…

教養には、ある程度のインプットは必要だ。

だけど、

これからは知識を頭に詰め込むことの意味は、
少しずつ変わっていくのかもしれない。

誰もがAIを気軽に使えるようになり、細かな知識をまとめたり、確認したりすることは容易になったからだ。

だからこそ、その人なりの物の見方や世界の捉え方こそが、個々の人生を彩ってくれるのではないだろうか?

そう…

本人が楽しめてこその、教養なのではないか。

もっと肩の力を抜いて、
好奇心の海を自由に泳げばいい。

そして、泳ぎ方は、人それぞれなのだ。

好奇心をもって、生きていく

私は2年以上前から、化学物質過敏症によって、美術館などに以前のように気軽に足を運ぶことが難しくなった。

山田五郎さんは、最後までこの世界の美しさや面白さを紹介し続けてくださった。

その姿を見ていて思う。

私もできるかぎり、外に出て興味のあるものに触れていきたい。
それが叶わない時は、別の方法で「知りたい」という気持ちを満たしていきたい。

教養とは、知識の総量ではなく、
世界に対する好奇心なのではないかと思う。

何人なんぴとも死は避けられない。

だからこそ、

この世界を楽しむことを忘れずにいることが、
最期まで人生を生き切ることにつながるのではないかと思う。


五郎さん生前最後の授業のテーマは、
画題シリーズの「メメント・モリ」。

私は、もう、言葉がない。
お見事としか、言いようがない。



いつもお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、また。