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「AIなんて信用できない」と言い続けた社員が変わった瞬間

3年間、頑なに「AIなんて信用できない」と言い続けていた社員が、たった一度の出来事で考えを変えた話です。

ある企業の経理部で、ベテランの社員は「数字を扱う仕事にAIの間違った答えを混ぜるわけにはいかない」という信念のもと、周囲がAIを使い始めても一切手を出しませんでした。過去に別の自動化ツールで計算ミスが起きた経験があり、機械的な処理への不信感は根深いものでした。部署内でAI活用の研修が実施されても参加を拒み、上司が個別に勧めても「自分のやり方で十分正確にできている」と取り合いませんでした。

結論から言うと、この社員自身が体調不良で数日間休んだ際、代役を務めた後輩がAIを使って通常より早く正確に業務を仕上げたのを目の当たりにしたことが、転機になりました。

復帰したこの社員は、自分が休んでいた間の業務がどう処理されていたかを確認し、後輩がAIを使って月次資料をまとめていたことを知りました。しかも、その資料には自分がいつも見落としがちだった些細な整合性の誤りが、AIによるチェックで事前に発見され、修正されていたのです。「機械は間違える」という自分の思い込みとは逆に、AIが人間の見落としを補っていた事実に、この社員は少なからず動揺したといいます。

その後、この社員は自ら研修への参加を申し出て、まずは自分の得意な検算作業の補助という限定的な範囲からAIを使い始めました。半年後には、月次決算にかかる時間が以前の3分の2程度に短縮され、この社員自身が後輩に使い方のコツを尋ねる場面も見られるようになりました。

なぜこの体験が態度を変える決め手になったのか。理由の一つは、頭で否定していたことを、自分の目で覆される瞬間を経験したことです。理屈での説得はどれだけ重ねても届かなかったものが、事実を目の当たりにした瞬間に崩れることがあります。もう一つは、AIが「間違えるもの」ではなく「見落としを防ぐもの」だという新しい認識が、自分の仕事の価値観(正確さを何より重視する)と矛盾せず、むしろ合致していたことです。

実践のポイントは3つあります。ひとつは、頑なな反対論者を無理に説得しようとせず、代わりに実際の成果を見せる機会を作ること。ふたつめは、本人の価値観(この場合は正確さへのこだわり)と矛盾しない切り口でAIの効用を伝えること。みっつめは、態度が変わった後は、小さな範囲から試させ、成功体験を積ませることです。

言葉で変わらない人も、事実を目の当たりにすれば変わることがあります。説得を諦めず、代わりに「見せる機会」をどう作るかに知恵を絞る価値は十分にあります。

この社員は後に、自分がなぜここまで頑なだったのかを振り返り、「間違いを人のせいにできない立場だからこそ、自分の目でしか確かめないと納得できなかったのだと思う」と語っています。経理という仕事の性質上、ミスへの責任の重さを人一倍感じていたからこその慎重さでした。頑固さの裏には、往々にして誠実さや責任感が隠れています。反対の理由を単なる「古い考え」と切り捨てず、その人が大事にしているものが何かを見極める視点を持つことが、態度を変えるきっかけを見つける近道になるのかもしれません。

上司にとっても、この一件は学びの多い経験になりました。3年間説得を続けても動かなかった相手が、たった数日の代役体験で変わったという事実は、言葉による説得の限界と、体験による説得の強さを浮き彫りにしました。以後、この部署では新しい仕組みを導入する際、あらかじめ「体験してもらう小さな機会」をセットで設計するようになっています。理屈を説くよりも先に、まず触れてもらう場を作ることの重要性を、この経理部の経験は静かに物語っています。

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