【おっさんとnoteと四字熟語15】“音信不通”
「元気?」の一言が、20年近く言えなかった。
音信不通。
この四文字を見ると、
一人の女性を思い出す。
佐藤さん。
幼なじみだ。
そして、
たぶん、
自分にとって実質初恋の人だった。
小学校のころから知っている。
特別なことをした記憶が、
たくさんあるわけじゃない。
でも、
なぜか覚えている。
子どものころの自分にとって、
佐藤さんは、
ちょっと特別な存在だった。
最後に会ったのは、
30歳くらいのころ。
小学校の卒業時の同窓会だった。
久しぶりに会った。
昔の話をして、
笑って、
「またな」
と言ったのだと思う。
そして、
それから、
連絡を取らなくなった。
ケンカしたわけじゃない。
嫌いになったわけでもない。
自分は結婚していた。
彼女は、
まだ独身だった。
だから、
なんとなく。
本当に、
なんとなく。
連絡を取らなくなった。
人間関係って、
案外そういうものなのかもしれない。
大きな事件があって、
関係が終わるわけじゃない。
忙しくなって、
連絡が一つ減る。
また一つ減る。
そして、
気づいたら、
何年も経っている。
20代、30代のころは、
それでもあまり気にしなかった。
仕事があって、
家庭があって、
毎日が忙しかった。
新しい人間関係も増えていく。
昔の友達に連絡しなくても、
人生は普通に進んでいく。
でも、
50代になってみると、
少し違う。
ふと、
「あの人、元気かな」
と思う。
佐藤さんも、
今なら会いたいと思う。
何を話すのかは、
分からない。
昔のことを話すのか。
今のことを話すのか。
それとも、
たいした話をせず、
ただ笑うだけなのか。
それでいい。
そして、
もう一つ、
音信不通になってしまった人たちがいる。
会社の同期。
麻布のサッカー部の仲間。
みんな、
めちゃくちゃ好きだ。
大切な仲間だ。
今でも嫌いになったわけじゃない。
むしろ、
会えば絶対に楽しいと思う。
なのに、
会えなくなった。
理由は、
自分の会社で、
いろいろあったから。
うまくいかないことがあった。
自信を失った時期もあった。
そんなとき、
みんなが、
なんだかまぶしく見えた。
だから、
自分から距離を置いてしまった。
これも、
考えてみれば、
ちょっと変な話だ。
嫌いだから、
会わない。
ではない。
好きすぎるから、会えない。
そんなこともある。
「今の自分を、
あいつらに見られたくない」
そんな、
くだらないプライドだったのかもしれない。
でも、
人生の後半戦に入って、
少しずつ分かってきた。
人は、
ずっと順調なわけじゃない。
誰だって、
落ち込む。
失敗する。
立ち止まる。
人生の先頭を走っていた人が、
突然、
最後尾にいることだってある。
だから、
昔の仲間に会うのに、
「今の自分がどう見えるか」
なんて、
本当はどうでもいいのだ。
もし明日、
佐藤さんから突然、
「久しぶり」
とLINEが来たら。
たぶん私は、
こう返す。
「おぅ、久しぶりやな。どうした?俺、かろうじて生きてたよ。お前はどうやった?」
たぶん、
それだけでいい。
20年近い空白なんて、
案外、
そんな一言で埋まるのかもしれない。
音信不通。
それは、
関係が終わったという意味ではないのかもしれない。
ただ、
「次の一言を、まだ交わしていない」
だけなのかもしれない。
もし、
あなたにも、
「久しぶりに会いたいな」
と思う人がいるなら、
今日、
一言だけ送ってみてもいい。
「元気?」
それだけでいい。
返信がなくてもいい。
迷惑かもしれない。
気まずいかもしれない。
でも、
20年後に後悔するくらいなら、
今日の「元気?」くらい、
送ってみてもいいのかもしれない。
私も、
いつか送ってみようと思う。
佐藤さん。
そして、
昔の仲間たち。
みんな、
元気にしてるかな。
俺は、かろうじて生きてるよ。
あなたにも、
「今なら会いたい」と思う人はいますか?
もし名前が浮かんだなら、
その人との最後の会話を、
少しだけ思い出してみてください。
もしかしたら、
まだ続きがあるのかもしれません。
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