出したがる刑事
都内のマンション。
その一室に、刑事とその部下が駆けつけた。
ピンポーン。
刑事「猿渡さーん、いらっしゃいますかー?」
ドンドンドン。
刑事「猿渡さーん。ちょっとお話を伺いたいんですけどねー」
ガチャッ……
お隣さん「あのー、猿渡さんなら、ここしばらく留守にしてますよ」
部下「あ、出ました」
刑事「……出たな」
お隣さん「何なんですか?」
部下「確実に出てます」
刑事「出てるな」
お隣さん「出てる?」
部下「出てますよね?」
お隣さん「はあ?」
刑事「出てるくせに」
お隣さん「猿渡さんが留守なのは知ってましたから……」
刑事「お隣が留守なのを知っていて、訪問者が来たから、いてもたってもいられず出たと?」
お隣さん「ま、まあ……」
部下「出てくれてありが──」
刑事「それはオレの役だろうがっ!」
部下「す、すみませんっ!」
刑事「出てくれてありがとうございました」
…………
刑事「どうだ?」
部下「どうもこうも……」
刑事「楽しいだろ?」
部下「やみつきになりそうですっ!」
刑事「これくらいの楽しみがなきゃ、刑事なんてやってられん」
部下「しかし、苦戦しましたね」
刑事「ああ、マンションは率が悪い。ましてタワマンともなると、かなり見込みは低い」
部下「だからこそ、出た時の達成感はすごそうですね」
刑事「ああ。タワマンで出た時は感動ものだぞ」
部下「うわあ、一度味わってみたいです」
刑事「挑戦してみるか?」
部下「ぜひっ!」
刑事「あ……くそ」
部下「どうしました?」
刑事「午後から殺しのヤマが入ってるんだった」
部下「では、あきらめますか?」
刑事「……物足りんな」
部下「え?」
刑事「今日は出したい気分なんだ」
部下「でも……」
刑事「仕方ない……手っ取り早く済ますか」
部下「どこへ……?」
刑事「団地へ向かうっ!」
(終)
