宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
はじめましての人も、前から知ってる方も、ごきげんよう。
岡埜 由木古です。
みうらじゅんは一人しかいらない。
2026年8月17日
丙午文月五日
(文字数:約1300文字)
『成瀬は天下を取りにいく』
宮島 未奈 新潮文庫
令和七年七月 発行
令和八年一月 八刷
ネタバレにならない程度にあらすじ
ネタバレ、も特に無いというか、
滋賀県大津市膳所の、ときめき坂周辺に暮らす少女、
成瀬あかり、の中学二年から高校三年までの言動を、主に彼女の周りにいる人々の視点で切り取ったまでだ。
閉館カウントダウンが始まった西武百貨店大津店に夏休みの間毎日通ったり、親友の島崎とM-1に出たり、高校の入学初日から三年掛かりを想定した実験に踏み切ったり、大津市にゆかりがある「かるた部」に入部したり、地域の夏祭りの司会に抜擢されたりする。
文庫巻末では筆者にときめき坂周辺を案内してもいる。
その心意気を汲み取った
成瀬シリーズの文庫版が出るという事で、滋賀県の本屋が特設コーナーを作り賑わっているというニュースを見た。
サイン会を開いていた宮島未奈さんは、インタビューに答えて、
「成瀬、以外の作品も読んでもらえると嬉しいです」
と仰った。
そうであろうな、と私は強く頷いた。
ヒットが出ると大抵の人は、ヒットを喜びヒットを誉めて欲しがるものだと、思われそうな気がするが、こと小説家に関してはそうでもないと思う。
ヒット作のみが己ではない。断じて。
いかにも他の作品も読みましょう、と汲み取った上で、私はまずまだ読んでいない成瀬から。まずはね。
成瀬は小説は書かない(きっと)
面白い人間は自分のどこがどう面白いかには気付けないものだ。
従って、
赤ん坊の頃から成瀬と同じアパートで暮らす親友、島崎みゆきや、
高校の同級生、大貫かえで、
果敢にも(本当に果敢な彼には拍手を送りたい)かるた競技中の成瀬に恋をした、西浦航一郎の視点で、
成瀬という人物が様々な角度から描写される。
関わりは一見薄いが個人的には稲枝 敬太氏にグッとくる。
ここまでの文章で感じた方もいらっしゃるかも知れないが、私はもしかすると「成瀬に寄せている」と思われかねないほど、言語感覚や思考の流れが成瀬に近い。
もしかすると他の方が読むよりも、面白さや新鮮味を感じ取れていないかもしれない。
しかしながらもちろんだが、同一ではない。偶然似通ってしまっただけで生育環境も異なる。
そもそも成瀬あかりは一人でいい。
しかし思考が近いためか、作中の成瀬の考えを知って、
なるほど。それならば私も二百歳まで生きてみようじゃないか。
と大変に腑に落ちたので、読了直後から自分のリソースを大事にしようと考えている。すでに四十数年を経てしまったが、今からでも何も配慮しないよりは可能性がある。
以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。
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