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『EUREKA ユリイカ』被害者の人生を一変させたバスジャック事件【あらすじ感想】

映画『EUREKA ユリイカ』を観てきました。

監督:青山真治

日本での初公開は2001年1月20日。

フランスでは2000年5月18日に公開され
同年に行われた第53回カンヌ国際映画祭で、国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞されている作品です。




あらすじ


福岡で起きたバスジャック事件。

数名が死亡し生き残ったのは運転手の沢井(演:役所広司)と、中学生の直樹(演:宮﨑将)、小学生の梢(演:宮﨑あおい)の兄妹だけでした。

事件を機に変わっていった3人の生活。

それから2年が経ち、不幸が重なった兄妹のもとに向かった沢井。

両親のいない家で暮らす兄妹と沢井の共同生活が始まっていきます。


感想


約3時間半の作品です。

もとは5時間半の長さだったとのこと。

今は動画の展開の速さなどが求められる時代になったけれど

2000年のあたりはどうだったろう。

ゆったりとした流れに乗ってお話が進んでいきます。


監督がカットすることなく残された部分。

ストーリーが大きく動くことはなくとも

映し出されている部分が貴重で

また3時間半をかけて映画を鑑賞できることが

贅沢にも思えてきてました。



事件の被害者3人と東京から来た学生の奇妙な共同生活の始まり


事件のショックから心に深い傷を負った3人。

直樹と梢の家庭は事件後に崩壊。

2人は言葉を話さなくなっていました。


一方の沢井は事件後に疾走。

それから2年が経ち、再び実家に戻ってきた沢井は

仕事には行きながらも、身内と上手くいかず

結果、兄妹が2人で暮らす家に転がり込んでくることになります。


玄関に突然現れた同じ事件の被害者。

2人は何も話さず、沢井を迎えいれます。

彼が家に上がると食べっぱなし、使いっぱなしの物が散乱した酷い有り様でした。

ここから3人の奇妙な暮らしが始まっていきます。


ですが沢井が兄妹の家で暮らし始めて早々に

親戚から送り込まれた、兄妹のいとこである大学生の秋彦(演:斉藤陽一郎)が訪問。

3人暮らしのはずが、急遽4人に。

その中で誰よりも話すのが秋彦でした。

・・・

同じ頃、町では連続殺人事件が発生し

疑いの目が、沢井にも向けられていきます。

なぜ被害者の沢井たちが

事件後も苦しみ続けなくちゃならないのか。


そこで事件が起きた時までバスの運転手であった沢井は

中古のバスを購入し、直樹、梢、秋彦の3人とともに沢井の運転で旅に出発。

こうして4人は町を後にするのでした。



ゆったりとした映像の中に張っている細い緊張の糸


3時間半分を観終わって思ったのは

もし5時間半だったら、どんなシーンが増えていたんだろうということ。

時間の都合で、1回で最後まで観ることはできていないけれど

途中で退屈になるなんてことはありませんでした。

モノクロの映像の中に、いつも細ーい緊張の糸が張っているような状態が続いているからです。


それは沢井の不安定さであったり

表情が無く、何も話さない兄妹の様子や

小さな音まで拾い上げて進んでいく映像。

そしてそこに突然現れ、遠慮なく物申していく秋彦のあり方。


学生の秋彦のほうが沢井より大人に見えることがあるという。

そのくらい沢井が心許なく感じる時があるのですが

それは沢井がまったく話さない人ではないけれど

自分の思っていることをあまり口にしない人だったからなのではと思うようになりました。

・・・

沢井に対する周囲の目や、彼の置かれている状況に、多くを口にしない彼の性格。

その沢井がたまに起こす突拍子もない行動は、周囲を驚かせたり

時に独りよがりのようにも見えたり、捉えられたりしてしまいます。


そこに思ったままを口にしていく秋彦が入っていくことで

場面の区切りになったり、彼の発言を機に沢井が動き出したり。

秋彦の登場によって、長い尺のなかで多くが語られていない

何か含まれているように描かれる部分が際立ってきたり

映画のそういうところに意識が向くようになっていきました。



いろいろな予感を連れて走り出す4人を乗せたバス


バスジャック事件が発端となって始まっていく映画ですが

通り魔による連続殺人事件が発生したことで

外部からの新しい不安が生まれていきます。


沢井の動向をずっと追っていても

それでも彼はやりかねないんじゃないかと

そんな疑いの目で彼を見てる時もありました。


その疑いの目で見てしまうのは沢井だけに当てはまることではなく。

いろんな人がそれぞれ心に負っているものがあって

それが明かされることもあれば、そうでない場合もあります。


多くは語られず、けど長い時間を使って映し出されていく映像の中には

たくさんの予感がする場面があります。

それは連続殺人事件だけじゃなくて、他のこともです。

その予感がすると、張ってる糸が小さく弾かれるような感じになっていました。

・・・

映画はモノクロの映像なことで、どんな色なのかが想像できるようになっています。

徹底して映像で語られていても、言葉がないところはそれだけ想像の余地がありました。


話しすぎるくらいに話す東京から来た秋彦。

多くは語らず、言葉よりも行動のほうが雄弁に見える沢井。

そして家に閉じこもったままの兄妹は、言葉を発することはなく

それでも時々、言葉を超えた意思の疎通のようなことが2人にはできていました。


映画の主人公は沢井ですが、兄妹のお話でもあります。

沢井と一緒に兄妹も家から出たことで起きていった変化が、映画に影響を及ぼしていました。

・・・

描かれていることは、沢井たちとその周囲だけで静かに起きていることなのですが

鑑賞後には、一つの旅を経た後のような気持ちになります。


もし彼らのような状況で、自分が梢の立場にいた場合

誰もいなくなってしまうような最悪の未来を迎えていたら

自分はどうなってしまうんだろうと思いました。

得たものに対する大きすぎる喪失に

自分の大部分を失ったような状態に陥ってしまいそうです。



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