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パリと、目に見えない大切なもの

私は一度もパリに住んだことはない。けれど、旅行としてなら6度その地を踏んだことがある。

不条理なまでに跳ね上がった航空運賃や、少しばかり手のかかる親の介護といった「現実の重力」が、今の私の足を海外から遠ざけている。それでも、チャンスさえあればまたパリへ行きたいと思わせる何かがそこにはある。ニューヨークには二十年住んだ。悪くない街だ。でも、もしどちらか一方を選べと言われたら、私は迷わずパリを取るだろう。そこはサン=テグジュペリとアルベール・カミュを生んだ国なのだから。

『星の王子さま』の中で、王子さまは「本当に大切なものは目に見えない」と言って最後に泣く。数字や地位といった可視化できる記号に囲まれて生きるよりも、心で感じること、時間をかけて育んだ絆や愛こそが人生を豊かにするのだという真理を、彼は私に伝えてくれる。そんな世界に惹かれる私は、やはりフランスが、パリが好きなのだ。パリを訪れるたびに、私は洗練された人々を見て、自分を戒め、励まし、何かしら新しい知恵のようなものを学んで帰ることになる。

サン・ジェルマン・デ・プレに、お気に入りの定宿があった。小さなキッチンがあり、ベッドには最高級のマットレスが設えられている。部屋の掃除は五日に一度きりだが、タオルは好きな時に自分で交換できる。清潔でふかふかだ。ロビーには世界最高級のエスプレッソ・マシーンが置かれ、いつでも好きなだけコーヒーを愉しめる。内向的な性質の私には、これ以上ない場所だった。

小さな美術館を巡り、プランタンで最高級のフランス料理をテイクアウトし、宝石店のようなチョコレート屋で絶品のチョコレートを買い求め、古いアーケードの下にある洋服屋で素敵なスカートを選ぶ。楽しみは尽きることがない。世界最古のデパートで高級家具の美しさに目を奪われ、その足で別館へ向かい、その日のための食材とワインを買う。ただそれだけで、私の心は静かに充足されるのだ。ただ街を歩き、美しい人々を眺め、美しい生活の断片に触れるだけで。

夫も私も、全く金持ちではないし社会的な地位があるわけでもない。しかしながら、パリでは店員や街の人々に、いつ行っても心地よい扱いをしてもらえるのだ。レストランでは良い席に案内されるし、チョコレート屋では、いくつもサンプルを食べさせてくれる。私たちは決して、豪華な箱に入ったギフト用のチョコレートを買うわけではないというのに。ただそこに並んでいるチョコレートを、右から左まで全種類二個ずつ、一番簡素な袋に入れてもらうだけだ。自分たちで食べるものに、過剰な装飾は必要ないから。

美しい小さな帽子屋では、長い時間をかけて一つか二つを選び、それを何十年も被り続ける。接客してくれるマダムは、まるで同志か古い友人のような温かさで付き合ってくれる。観光客であっても、その瞬間だけは市民と同じ地平に立っているのだと感じさせてくれる。

歴史が長い時間をかけて磨き上げた、あの独特なライフスタイル。建造物や衣服の細部に宿る美意識。そして、カフェでゆったりと流れる時間。それに付け加えるなら、パリの物価はニューヨークに比べればずっと良心的だ。チップというあの奇妙な習慣がない分、その差はさらに際立って感じられることになる。

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