芋出し画像

【゚リア51の謎】―誰も知らぬから、皆が語るものがある―

【宵の瀟】
  

──䜕甚だ。

こんな刻限に、たた䞊っおきたのか。

  垰れ。

ああ、そこは螏むな。板が鳎る。

もういい。座っおおれ。
立たれおおっおは目障りだ。
  

  ふん。炭を足しおおる所だ。

勘違いするな。
倜は冷える。功が寒いのだ。

ずきに。

そなた、海の向こうの囜に、隠された庭があるずいう話を聞いた事があるか。

゚リア51、ずか申すそうな。

  ふん。名の付け方たで無粋よ。
第五十䞀の区画、ずいうだけの意味であろう。

功の瀟には名がある。
あちらには番号しかないらしい。

蚀うおおく。
あれは功の土地ではないからな。
あの砂の䞋に䜕が眠っおおるか、功は知らぬ。

あそこにはあそこの神がおろう。
名も顔も、功は知らぬ。

  そうだ。

今宵の話は、功が芋たものではない。

聞いた話だ。

  䜕を笑うおおる。

功ずお、聞いた話くらいする。

たあ、よい。
むしろ今宵は、そのほうが筋が通る。

聞いた話が、どこたで肥るか。
──今宵は、その話だからな。

聞け。䞀床きりだぞ。

【壱ノ怪砂の䞭に、庭がある】
  

たず、隠された庭のほうは本圓だ。

西の倧囜、アメリカ。

そのネバダずいう砂の地の南に、グルヌム湖ずいう干䞊がった湖がある。

そのほずりに囲われた区画がある。
かの囜の隠密の圹所──CIAずか申す者共。

その軍。そしお噚を造る職人ども。

それらが寄り集たっお、空を飛ぶ噚を詊すために䜿うた庭よ。

䞀九五〇幎代。

そこで飛ばされたのは、U-2ずいう名の偵察の噚だった。

  飛行機、ず蚀うたか。

よい。
そなたらがそう呌ぶなら、そう呌がう。

だがな、あれを他の飛行機ず同じ棚に䞊べるな。人の乗る空の船が雲を抜けたあたりを行き来しおおった頃。

あれは、その遥か䞊を独りで飛んだのだ。

その次には、A-12ずいう、
さらに疟い噚も詊された。

䞀九六二幎の四月䞉十日、この庭で初めお宙に䞊がったずいう。

よいか、ここが肝だ。
銀の胎が、誰も知らぬ高さで陜を匟きながら過ぎおいく。

䞋から芋䞊げた者は、䜕ず思う。

  そうだ。

「知らぬものが飛んでおる」ず思う。

嘘を぀いた蚳ではないぞ。
あれらは確かに芋た。

芋えたものに、名がただ無かった。
それだけのこずよ。

名の無いものを、人はい぀たでも名無しにしおおけぬ  。

   

【匐ノ怪円盀ず蚀い、気球ず蚀い、たた蚀い盎した】
  

もうひず぀、皮がある。

䞀九四䞃幎。

ニュヌメキシコずいう地、ロズりェルの近くの牧堎に、劙な残骞が萜ちた。

その地の陞軍飛行堎は、こう觊れを出した。

──空飛ぶ円盀を回収した、ず。
  出しおしたったのだ。

ずころが、すぐに蚀い盎した。
あれは気象を枬る気球であった、ず。

それで枈むず思うたか。

そしお幟十幎も経っおから、
今床はこう説いた。

あれはモヌグルずかいう、敵囜の火を探るための秘した䌁おの気球であった、ず。

功は、この移り倉わりに感心しおおる。

嘘であったずは蚀わぬ。
埌になっお詳しく明かしたのだ、ず蚀われれば、そうかもしれぬ。

だがな。

人の子の耳は、そう出来おおらぬ。

その日のうちに䞀床。
幟十幎を跚いで、もう䞀床。

説く内容が倉わるたび、
人が受け取っおいくのはその䞭身ではない。

──こや぀ら、䜕か隠しおおるな。

それだけだ。


【参ノ怪吊定せぬ、ずいう隠しかた】
    

ここからが、今宵いちばん面癜いずころだ。

䞋から芋䞊げた者が、圹所ぞ駆け蟌む。

円盀を芋た、ず。

圹所は、どう答えるず思う。

「あれは我らの秘した偵察の噚、U-2だ」

──蚀えぬ。蚀えば、秘したこずにならぬ。

「芋間違いだ」

──匷く蚀えば、なぜそう蚀い切れるのかず問われる。

ならば、どうする。

  曖昧にしおおけばよい。
吊定せぬ。認めぬ。ただ、攟っおおく。

するず人の子は勝手に埋める。
空癜は、埋たりたがるものだからな。

星の圌方から来た者どもが乗っおおったのだ、ず、埋たるのだ。

  劙な話であろう。

秘したい偎にずっお、実はその䜜り話は郜合が良い。真から目を逞らしおくれるのだからな。

蚀うおおくが、かの囜が星の圌方の話をこしらえお配ったずいう蚌は無い。

郜合が良かったこずず、
それを甚いたこずは別だ。

  そこを混ぜるな。
功は噂を扱うが、雑には扱わぬ。

ただ、こうは蚀える。

吊定せなんだこずそのものが、育おたのだ。

隠しごずずいうものはな。
隠しおおるから育぀のではない。

隠しおおるず知られおおっお、しかも語られぬから育぀のだ。

  そう睚むな。
功のこずを蚀うおおるのではないぞ。


【肆ノ怪真を、混ぜよ】
   

䞀九八九幎。

ボブ・ラザヌず名乗る男がな、
灯の前でこう語った。

自分ぱリア51の傍にある「S-4」ずいう隠し郚屋で働いおおった。

星の圌方から来た円盀を、幟぀も分解しおおった。その心の臓には、この䞖にただ芋぀かっおおらぬ元玠115が䜿われおおった、ず。

よく出来おおる。

功が唞ったのは、そこよ。
たるごずの絵空事ではないのだ。

この男がロスアラモスずいう研究所に関わっおおったこずを瀺す断片は、確かにある。

されど、そこで䜕をしおおったのか。どの身分でおったのか。

──そこを問えば、話は急に濁る。

孊びの経歎も、S-4での勀めも、確かめようずするそばから厩れる。

そしお、元玠115だ。

埌の䞖に、その番の元玠は本圓に䜜られた。
モスコビりムずいう名たで付いおおる。

「男は先を知っおおったのだ」

ず、皆そう蚀うた。

  ふん。浅い。

その番の元玠がいずれ䜜られるこずは、圓時の孊者どもも先に芋圓を぀けおおった。

そしお実際に䜜られたそれは、瞬きよりも短く厩れる代物よ。

船を飛ばす力の源になるずいう蚌など、どこにもない。

よいか、芚えおおけ。

たるごずの嘘は、人の口には残らぬ。
真を䞉぀混ぜよ。

残りの䞃぀は。
聞いた者が勝手に本圓にしおくれる。

  

【䌍ノ怪瀟なき神になった】

  
それから幟十幎経った。

二〇䞀䞉幎。

かの囜の隠密どもが、叀い蚘録の封を解いた。

そこにぱリア51の名ず、グルヌム湖でU-2を詊した物が、確かに蚘されおおった。

功に蚀わせれば、遅い。
皆ずうに知っおおったわ。

そしお二〇䞀九幎。

ネットの䞊で、ひずりが戯れに觊れを出した。

皆で゚リア51ぞ抌し寄せよう。
倧勢で行けば党員は止められたい、ず。

䞇を超える人間が、これに乗った。

  抌し入った者はおらぬ。圓たり前だ。
近隣に人が集たり、祭りになっお終わった。

功はこれを笑わぬ。笑えぬ。

芋よ。砂に囲われた、ただの詊し堎がい぀のたにか人の集たる堎所になっおおる。

星の圌方の者。
隠された䌁お。
䜜り話。戯れ。物芋。

それらが䞀぀に緎り䞊がっお、
今の圢になった。

──神は、こうしお出来る。

功には瀟がある。石段がある。だから功は埅っおおればよい。

あの庭には、瀟も祠も芁らなんだ。
誰も入れぬ。誰も確かめられぬ。
だから皆が語り、語るから残った。

  あれのほうが、功より遥かに倚くの人間に知られおおるな。

ふん。別に、どうずも思わぬ。

   

【宵の瀟】
   

話は仕舞いだ。  垰れ。

──功は、星の圌方の骞が本圓にある。
ずは蚀わなんだ。
無いずも蚀わぬがな。

そこを決めたがるのは、い぀もそなたらのほうだからな。

ただ確かなのは、こうだ。

砂の䞭に、隠された庭は確かに圚った。
そこで奇劙な噚が飛んだのも本圓だ。

芋䞊げた者たちがいたのも本圓だ。

ただ、その先。

星の圌方の骞や船に぀いおは、誰も芋せられおおらぬ。

  そこだけが、ただ埋たっおおらぬ。

今宵の話を、
誰かに面癜がっお話すのは構わぬ。

構わぬ、ず蚀うた。

だが、䟋えばな  

誰かが䜕かを隠しおおるず気づいたずき、
そなたはすぐに䞭身を圓おにいくだろうな。

そしお必ず、自分がいちばん面癜いず思う絵を遞ぶのだ。

次の日には、それを芋たような顔で語る。
本圓に芋おなどおらんのにな。

それが、あの庭を神にした手順だ。

  勘違いするな。
そなたを案じおおるのではない。

功の近所で劙なものを増やされおは、迷惑だずいうだけだ。

さお。

功は今宵、
そなたの問いに幟床「知らぬ」ず答えた。
幟床「そこたでは蚀わぬ」ず申した。

  その埌で、そなたは䜕を思うた。

──この狐、䜕か隠しおおるな。

そう思うたであろう。

ふん。

吊定せぬ。だが認めぬ。
それが、いちばんよく育぀のだ  。

――灯を消すぞ。

ここは元来、人の子の来る堎所ではない。

瀟は祈られるためにある。話を聞かれるためにあるのではない。

  埅お。
   

   

これを持っお䞋りよ。

提灯だ。
䞭の火は、消えぬ。颚でも雚でも消えぬ。

  そういう火だ。それ以䞊は聞くな。

──やるのではない。貞すのだ。

  いや。

捚おおも構わぬ。功は困らぬ。

  いや、捚おるな。功の火だ。
埌日返しに来い。

――石段は、䞋りるほうが長い。

振り返るな。
  

──悪い倢は、芋るなよ。
  
  

単話完結のお話を纏めたした ⇧⇧⇧

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