肥満が手術を難しくする訳
緊急の連絡が入り
救急車が搬送されびっくりしました。
大動脈解離。体重120キロ超
命を守るために、早急に緊急手術が必要です
「当院では対応困難。転送先を探しましょう」
大動脈解離は、一刻を争う病気です。
1分でも早く手術台に乗ってもらわなければならない
でも、患者さんの体格に施設が対応できなかった。
転送先が決まり、搬送が始まった。
その間も、時間は刻み続けていました。
手術は終わりました。
いや、正直大変でした。
肥満のために、大動脈解離の病変まで
僕らの手が届くまでにとても時間がかかりました。
手術の難易度、麻酔の難易度が上がります。
でも術後の経過は、さらに大変でした。
手術開始までのタイムロスが積み重なり
手術時間の延長も重なり
合併症との戦いが続きました。
「体重があと20キロ少なかったら」と、そっと思いました。
肥満は、見た目の問題ではないと感じています。
命の時間を、静かに奪っていく問題です。
今日は、肥満と心臓の関係について書きます。
肥満が体にかけている「静かな残業」
太ると、心臓は24時間、余分な仕事を続けます。
体重が増えると、全身に血液を届けるための道のりが長くなります。
その分、ポンプとして働く心臓の負担が増える。
毎日毎日、心臓は残業し続けているようなイメージです。しかも、自覚症状はほとんどありません。
「しんどくないから大丈夫」という状態でも、
心臓の壁は少しずつ厚くなり、
血管は少しずつ硬くなっていきます。
気づいたときには、だいぶ進んでいることが多いです。
外来で「BMIが高めですね」と伝えると、
「症状がないから大丈夫だと思っていました」
という言葉がよく返ってきます。
そのひとことが、僕はいつも少し怖くなります。
「ちょっと太ってるだけ」が積み重なると
肥満がリスクを高める病気のひとつが、高血圧です。
体に脂肪が増えると、血圧を上げるホルモンの働きが変わり、
血管への負担が大きくなります。
動脈硬化も進みやすくなります。
血糖値にも影響します。
もし喫煙もしていたら。
もし高血圧も放置していたら。
もし肥満まで重なったら。
心臓にとって、かなり厳しい状況になります。
そして、もし緊急の手術が必要になったとき。
冒頭の患者さんのように、体格が施設の対応を超えてしまうことがあります。
転送が必要になれば、その時間が直接、予後に関わることがあります。
「太ってるのはわかってるんですけど…」という方に、
外来でこういうふうに伝えています。
「10年後の健康な未来のために、今からできることを少しずつやっていければ、10年後は必ず健康に向かっていけます」と。
僕自身がやっていること
大きなことじゃなくていいと思っています。
僕は毎朝、仕事に行く前に子供とキャッチボールをしています。
時間にすれば15分あるかどうか、というくらい。
自宅が7階なので、毎朝エレベーターを使わず階段を上がっています。
時間がなくても取り入れられる、自分なりのルーティンです。
週末は、子供たちと「散歩冒険」と呼んで、遠くまで歩いて出かけたりもしています。
目的地は特にないんですが、これが一番楽しいですかね。
心臓を守る習慣は、ジムに行かなくてもできます。
日常の中に、少し意識を混ぜるだけで十分だと思っています。
まとめ
あの夜の搬送を、今も覚えています。
肥満は「見た目の問題」ではなく、
緊急のときに施設の対応力を超えてしまうほど、命に関わる問題になり得ます。
怖がってほしいのではなく、早めに気づいてほしいからお伝えしています。
今日より明日、明日より明後日。
少しずつ変わっていくことが、将来の心臓を守ることになるのではないかと
思っています。
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