カテーテルでなく手術を選ぶ理由
同じ心臓の血管の病気でも、カテーテルではなく手術をお勧めすることがあります。
意地悪をしているわけではありません。
血管の数や場所によっては、手術の方が長く心臓を守れることがわかっているからです。
先週の外来で、三本の血管すべてが細くなっている患者さんに手術をお勧めしたところ、「ステントの方が体に優しいんじゃないですか」と聞かれました。
正直に言うと、僕も患者さんの立場ならきっと同じことを聞きます。
今日はその本音の部分を、書いてみようと思います。
本音を言うと、みんなカテーテルを選びたい
カテーテル治療は、足や手首から細い管を入れて、詰まった血管を風船やステントで広げる治療です。
傷はほとんど残りません。
入院も数日で終わります。
正直、患者さんの立場で考えれば、誰だってこちらを選びたいはずです。
僕だってそうです。
血管が一本だけ狭いなら、カテーテルで十分なことが多いです。
血管が三本とも狭ければ、手術の方が安心です。
糖尿病があれば、なおさら手術の方が長持ちすると言われています。
こうした条件によって、カテーテルよりも手術の方が長く良い状態を保てる、ということが研究でわかっているんです。
ここは患者さんにあまり知られていない部分かなと思います。
手術にしかできないことがある
バイパス手術というのは、詰まった血管の先に、別の血管をつないで新しい通り道を作る手術です。
よく使われるのが、胸の内側を流れている内胸動脈という血管です。
この内胸動脈を使ったバイパスは、10年経ってもほとんど詰まらずに働き続けることが知られています。
ステントだと、人によっては数年後にまた狭くなってくることがあります。バイパスだと、その血管自体が長持ちしやすいんです。
つまり「今を楽にする治療」と「将来まで見据えた治療」、どちらを優先するかという話でもあるんです。
三人の子供がいる父親として、患者さんにもご家族との時間を一日でも長く持ってほしいと思っています。
だからこそ、目先の負担の軽さだけでなく、10年後の生活まで見据えて、ご本人と一緒に治療法を考えるようにしています。
手術室で、新しい血管がつながる瞬間
手術室では、止まった心臓に新しい血管をつないでいきます。
僕たちは、メガネと一体になった拡大鏡とヘッドライトをつけて、常に2.5倍以上に拡大した視野で手術をしています。
この拡大鏡のおかげで、髪の毛より少し太いくらいの糸を使って、血管と血管を正確につなぐことができるんです。
つないだ瞬間、心臓を再び動かして、新しい血管に血液が流れ込むのを確認します。
血が通った瞬間は、心の中でガッツポーズしています。
今まで苦しんでいた心臓に、新しい血液がじわっと流れ込んでいく。心なしか、心臓自体も元気に見えてくるんです。
何度経験しても、ちょっと胸が熱くなる瞬間です。
ちなみに僕は、内胸動脈をつなぐ瞬間が、手術の中で一番好きな場面です。
家族に「無事に終わりました」と伝える瞬間のために、僕たちはこの仕事をしているのではないかと思っています。
まとめ
カテーテルか手術か。正解は一つではありません。
血管の状態、体の状態、生活背景。
それぞれに合わせて、一番長く心臓を守れる方法を一緒に考えています。
手術を勧められたら、不安になるのは当然だと思います。
でも、それは医学的にちゃんとした理由があってのことです。
今日より明日、明日より明後日と、心臓が元気に動き続けてくれることを願っています。
それが、僕たちの本音です。
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