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『恩人』第4話 工場の片隅で語る「戦艦大和」と「未来少年コナン」』

【代筆者より:この物語について】
いつも宏樹さんの言葉を大切に読んでくださり、ありがとうございます。
この連載は、前作『終の棲家』で描かれた平穏な日々へと辿りつく前に、
宏樹さんが通り抜けなければならなかった「嵐のような日々」の記録です。
自分の居場所が見つからず、不条理な現実に打ちのめされていた宏樹さん。そんな彼が絶望の淵で見つけたもの——それは、
一人の「恩人」との出会いでした。
壊れそうだった彼の心を繋ぎ止めたのは、一体何だったのか。
58歳になった今の彼が、感謝を込めて綴る「再生へのプロローグ」を、
引き続きお読みください。


その後、福田さんとは
たびたびクリップ止めで一緒になり親しく歓談した。


ある折、何の機縁だったかは忘れたが、大東亜戦争の話になり、

宏樹は大岡昇平氏の浩瀚な小説
「レイテ戦記」から知識を借用して、話した。


「戦艦大和はアメリカに撃沈されてしまいましたが、
一度だけ活躍のチャンスがあったのですよ。」


「へえー。そうなのだ」


「レイテ沖海戦です。戦艦大和は、
仰角四十五度で主砲を発射すれば、六十キロも飛んだのですよ。
でも、射程二百海里の空母にはかなわなかった。
でも、レイテ沖海戦では、小沢中小率いる囮部隊が
ハルゼー提督の敵主力空母部隊を、まんまと罠にかけて
北方に引き連れて、
マッカーサーのいるレイテ沖は米艦隊空っぽ状態。
もし大和がそのままレイテ湾に突入すれば、
大和の主砲で
マッカーサーともども吹っ飛ばすことが出来て、
敵に甚大な被害を与えることが出来たのです。
でも、大和はレイテ湾突入寸前で急に反転し
元の航路に戻ってしまったのです。
理由は、戦後になっても、明らかになっていません。」

 
又、沖縄戦に触れて、
これまた偉大な民俗学者谷川健一氏の著書から引用して


「沖縄戦は、悲惨だったと言いますが、
一般に日本人は沖縄にはそんなに都市がなかったはずだから、
森や空き地に潜んでいれば安全だったと思うでしょう」


「ところがそうはいかなかったのです。
沖縄戦の末期には軍の意図的な誘導もあって
住民共々南下したのですが、
一坪の土地に十発の砲弾・同じく十発の焼夷弾が降りかかってきたそうです。逃げようがない」


「北林さん詳しいね。
学校の先生が授業で教えなかったことを話してくれる」

 


もっと、気楽な歓談もあった。


「北林さん、今まで視たアニメで一番印象に残っているものは、何?」


「福田さんは、ご存じないでしょうが、
小学校五年生の時に視た『未来少年コナン』です」


「あ、知っている。今スカパーで放映している。確かに面白いね。」


「でも、あのアニメ放映直後は低視聴率で、
あんまり評判にならなかったのですよ。
私が、中学時代買った雑誌で当時のプロデューサーが
NHKで最初のアニメだったのだから、もう少し視聴率が欲しかったと、
苦言を呈していましたよ」


「北林さんは、本当に何でも知っているね」

 
福田さんの気さくな物言い、
宏樹を忌避せず充分気を使ってくれる好意から、

福田さんとは、唯一、完全に胸襟を開いて気を許して
会話が出来るのだった。

【次回予告:第5話】 「忘れもしない、11月23日。静かな日々に突然響いた携帯のベル。父の最期の時、そして家族の形。」


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