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保険診療の先生が、いまから美容に来るのはアリですか──に本音で答える

美容外科医、形成外科医の宮下です。今日はいつもの論文の話はお休みして、フリートークです。気楽に読んでください。

最近、保険診療をやっている先生から「いまから美容に行くのって、実際どうなん?」と聞かれることが増えました。飲み会で聞かれ、DMで聞かれ、学会の廊下でも聞かれる。保険診療への危機感などもあり、気になっている人が多いんだと思います。

本音を先に言ってしまうと、「腕さえあれば何とかなる時代はもう終わり。でも入り方次第では全然アリ」です。

技術は「前提」であって「差別化」ではなくなった

美容の市場そのものは広がっています。ただ、それ以上に参入する医者が増えた。つまり、患者さんから見ると「選択肢が多すぎて選べない」状態です。

こうなると何が起きるかというと、技術は「あって当たり前の前提」になって、選ばれる理由にはなりにくい。もちろん下手だとお話になりませんが、「上手い」だけでは埋もれます。手術の上手さって、受ける前の患者さんからはほとんど見えないんですよ。見えないものは、選ぶ理由になりにくい。

だから今から美容外科に参入する人に必要なのは、腕に加えて「あなたに頼みたい」と思ってもらえる何か、です。それがSNSなのか、紹介なのか、特定術式への振り切りなのかは人によると思いますが、何かしらの「指名される理由」がないと、大きい箱の中の一人として消耗する働き方になります。

自分の場合──SNSの「適性」は確かにあった

僕はたまたま、SNSと相性がよかったタイプだと思います。カメラの前で喋るのが苦じゃない。顔出しに抵抗がない。思ったことをそのまま口に出しても、わりと角が立ちにくい。このへんは正直、努力というより生まれつきの性質です。

ただ、適性だけで回っていたかというと、全然そんなことはなくて、一応努力もしてきたと思います。

努力が必要だった点その1、継続。動画も記事も、伸びない時期が普通にあります。反応がない中で淡々と出し続けるのは、手術より精神力を使うかもしれない。「才能がある人が続かなくて、普通の人が続けることで勝つ」世界だと感じています。

その2、正確さへの緊張感。医者が発信すると、コメント欄には同業者も専門職の方もいます。数字をひとつ雑に言うと、ちゃんと刺される。昔の情報を更新せずに喋っても刺される。以前動画で「マーガリンは不飽和脂肪酸が多くて不健康」と発言したら「今は企業努力でそんなことはない、勉強不足だ」とコメントで叩かれました。過去の発言と矛盾しても「先生、前と言ってること違いますよね」と覚えられている。だから私は、喋る前に原典を確認する癖をつけました。面倒ですが、この面倒くささがそのまま信頼になるので、ここはサボれません。

その3、売らないこと。これは努力というより「我慢」ですね。発信を集客に直結させたくなる誘惑は常にあります。でも、美容外科医が施術を売り込み始めた瞬間、視聴者は一歩引く。逆に「この人、売る気ないな」と思われたときに、初めて話を聞いてもらえる。遠回りに見えて、たぶんこれが一番の近道です。

ラッキーだった点も

一方で、運がよかった部分もはっきりあります。

まず、すでに人が集まっている場所に乗せてもらえたこと。ドラゴン細井の知名度はやはり抜群でした。ゼロから一人でチャンネルを育てるのと、既にある土台の上で喋るのとでは、難易度がまるで違います。これは実力というより、出会いとタイミングです。

それから、保険診療の下積みが、そのまま武器になったこと。形成外科で縫って、合併症と向き合って、うまくいかない症例も含めて経験してきた時間は、美容に来てから「引き出しの多さ」として全部効いてきました。これは狙ってやったことではなく、結果的にそうなっただけなので、ラッキーの部類に入れておきます。

あとは時代ですね。医者が顔を出して喋ること自体がまだ珍しかった時期に始められた。今から同じことをやっても、皆即マネしてくるし、同じ伸び方はしないと思います。

で、結局アリなの?

私の答えは「覚悟の種類を間違えなければアリ」です。

「手術が上手くなる覚悟」だけで来ると、たぶんしんどい。それはみんな持ってくるので。必要なのは、見えない部分の信頼をコツコツ積む覚悟のほうです。発信でも、カウンセリングでも、紹介でも、形は何でもいい。

そして、保険診療で真面目にやってきた先生ほど、実はここで有利だと思っています。目の前の患者さんに誠実であることが習慣になっている人は、美容に来てからもそれが伝わる。逆に「儲かりそうだから」だけで来た人は、患者さんにもスタッフにも、わりとすぐ見抜かれます。

美容医療は、参入のハードルが下がった分だけ、続けるハードルが上がった業界です。それでも、真面目な人がちゃんと評価される方向に少しずつ変わってきている実感はあるので、私は悲観していません。

迷っている先生がいたら、一度飲みにでも行きましょう。今日はこのへんで。