今は名前のない仕事にも、あとから職種名がつくのかもしれない
「結局、何ができる人なんですか?」
と聞かれることがあります。
少し困ります。
マーケティングはやってきた。
事業にも関わってきた。
プロジェクトを前に進めることも多い。
資料を作ることもあるし、企画を考えることもある。
経営と現場の間に入って、話を整理することもある。
でも、
「では職種は何ですか?」
と聞かれると、意外と答えにくい。
マーケターと言えば、少し違う。
コンサルタントと言えば、広すぎる。
PMと言えば、それだけでもない。
編集者でもない。
経営者でもない。
何か一つの肩書きに収めようとすると、必ず何かがこぼれます。
以前は、これを少し弱点のように感じることもありました。
自分の専門性が曖昧なのではないか。
何でもやっているだけなのではないか。
いわゆる「器用貧乏」で、結局何者にもなれないのではないか。
もっと分かりやすい肩書きがあった方が、仕事として強いのではないか。
そんなことを考えることもありました。
でも最近、少し違う見方をするようになりました。
もしかすると、
まだ名前がついていないだけなのかもしれない。
そう考えると、少し景色が変わります。
名前は、実態より後に来る
今では当たり前に使われている職種名も、最初から存在していたわけではありません。
Webマーケター。
UXデザイナー。
データサイエンティスト。
コミュニティマネージャー。
プロダクトマネージャー。
少し前まで、それほど一般的ではなかった肩書きもあります。
先に仕事の実態が生まれた。
その仕事をする人が増えた。
必要性が認識された。
共通する役割が見えてきた。
そして、あとから名前がついた。
たぶん多くの職種は、そうやって生まれてきたのだと思います。
マンガやアニメのジャンルでも、似たことがあります。
最初から、
「新しいジャンルを作ります」
と宣言して始まるわけではありません。
既存の作品と少し違うものが出てくる。
周囲からは、
「これは何なんだろう」
と見られる。
似た作品が増える。
共通点が見つかる。
そして、あとからジャンル名がつく。
つまり、
名前は、実態より後に来る。
仕事も同じなのかもしれません。
職種の間に落ちている仕事
例えば、
複雑になった状況を整理する。
論点を見つける。
経営と現場の間をつなぐ。
マーケティングと制作の間をつなぐ。
企画と実装の間をつなぐ。
専門家同士の言葉を翻訳する。
意思決定できる状態まで持っていく。
最終的なアウトプットの質まで上げる。
こういう仕事があります。
一つ一つを見ると、既存の職種の中にも似た仕事はあります。
でも全部を横断すると、急に名前がなくなる。
だから、
「何ができる人なのか分かりにくい」
と言われる。
もちろん、単に自分の説明が下手なだけの場合もあると思います。
肩書きを作れば何でも新しい職種になる、という話でもありません。
ただ、
既存の分類では説明しにくい仕事がある
ということも確かだと思います。
会社の中では、肩書きが先にあります。
営業。
マーケティング。
開発。
人事。
経営企画。
職種があり、その箱の中に仕事が入っている。
でも実際の仕事は、そんなにきれいに分かれていません。
特に複雑なプロジェクトでは、
誰の仕事なのか分からない仕事が大量に出てきます。
組織の隙間に落ちた、誰も拾わないボールのような仕事です。
部門間で前提がずれている。
目的が曖昧になっている。
会議は多いのに意思決定されない。
専門家は揃っているのに、全体がつながっていない。
資料はあるのに、何を伝えたいのか分からない。
それぞれは優秀なのに、なぜか前に進まない。
こういう場面では、
専門知識そのものとは別に、
全体を見て、つないで、前に進める力
が必要になります。
でも今のところ、この役割には分かりやすい名前があまりありません。
AIが増やす「つなぐ仕事」
これからAIが広がると、この傾向はさらに強くなるのかもしれません。
資料を作る。
データを整理する。
アイデアを出す。
文章を書く。
調査する。
これまで専門家に頼んでいたことの一部を、一人でも扱いやすくなる。
すると逆に、
何をやるのか。
誰の意見を採用するのか。
どこまで深掘るのか。
何を捨てるのか。
どの順番で進めるのか。
どう一つの成果物にまとめるのか。
そういう、
複数の力を束ねる仕事
の重要性は、今より高くなる気がします。
そして、もし同じような役割を担う人が増えていけば、
今は名前のない仕事にも、
いつか当たり前の職種名がつくのかもしれません。
肩書きより、何を変えたか
最近は、無理に自分の肩書きを決めようとするより、
一つだけ見た方がいいのではないかと思っています。
自分が入る前と、入った後で、何が変わったのか。
混乱していたものが整理された。
止まっていた仕事が進んだ。
バラバラだった専門家の意見が、一つの方針になった。
意思決定できなかったものが、決められるようになった。
もしそこに再現性があるのなら、
肩書きがうまくつかなくても、
それはすでに一つの仕事なのだと思います。
仕事が先にあり、
名前は後からついてくる。
もしそうなら、
今うまく説明できない働き方も、
いつか当たり前の職種になっているのかもしれません。
