募集馬を見る目が変わる ― 「カルテ」1枚で分かること全部
前回、AI馬体診断ツールの開発秘話を書きました。
その最後に少し触れた「カルテ」機能について、今回は実際の画面を見ながらご紹介します。

募集馬を選ぶとき、カタログを何ページも見比べて、測尺と血統と価格をそれぞれ別の場所で確認して……という作業に時間を取られていませんか。
このカルテは、その作業を1枚に集約したものです。
体型、資質バランス、デビュー予測、クラス到達の見立て、血統、適性、総括。7つの観点をこの1枚だけで確認できます。
本来このカルテは、新規に募集される馬のための機能です。
今回は実際の画面のイメージをつかんでいただくために、過去のデータを使ったサンプルでご紹介します。
ヘッダー: まず何の馬で、いくらなのか

性別・生年月日・毛色・所属厩舎(美浦/栗東)・募集価格が、カルテの一番上にまとまっています。
カタログをめくって「これ何の馬だっけ」と前のページに戻る、という手間がなくなります。
たまに見かける「逆転馬体候補」スタンプ

ごく一部の馬には、このスタンプがヘッダーに表示されることがあります。
低価格帯は価格帯全体で見た勝ち上がり率がどうしても低くなりがちですが、その中でも勝ち上がる確率が有意に高い馬体特徴を持つ馬を拾い上げるためのスタンプです。
実際、このスタンプが付いた馬のOP馬率はおよそ7%で、同じ価格帯の平均2.5%を大きく上回っています。
価格の安さだけで候補から外してしまいそうな馬を、体型のデータから拾い上げる仕組みです。
安いから注目しない、ではなく、安いのに体型的な裏付けがある馬として目に留めてもらうための表示です。
ゾーン1: 馬体イメージ図+投資タイプ ― 写真とにらめっこしなくても体型のクセが分かる

実際の馬体に合わせた馬体バランスのイラスト上に、体型の枠(赤い四角)と、データ精査に使用した基準点(黄色い点)を重ねて表示します。
下の4マスは体高・胸囲・管囲・体重の実測値です。
右側の小さい数字は、同じクラブの平均値。実測値と平均値を並べることで、その馬が平均よりどれくらい大きい・小さいのかが一目で分かります。
カタログの数字を自分で電卓に打ち込んで平均と比べる、という作業が要りません。
右上の小さいバッジ「投資タイプ」
画像右上に小さく表示されている丸いラベルが「投資タイプ」です。小さくて読みにくいので、5分類をまとめた図で説明します。

投資タイプは、2つの軸の組み合わせで決まります。
1つ目は「コスパ軸」。測尺・血統から見た素質の高さに対して、募集価格が割安か割高かを表します。
2つ目は「振れ幅軸」。測尺同士の食い違いの大きさや血統面の上振れ余地などから、結果が安定しやすいか、大きく振れやすいかを表します。
この2軸の組み合わせで、高コスパ型・堅実型・ブランド型・一発型・ホームラン型の5つに分類されます。
高コスパ型: 割安なのに安定。素質の割に価格が控えめで、結果もブレにくいタイプ
堅実型: 価格相応で安定。素質と価格のバランスが取れていて、大きく崩れにくいタイプ
ブランド型: 割高だけど安定。血統や知名度で価格は高めだが、結果自体は安定しているタイプ
一発型: 割安で大振れ。価格は控えめだが、化けるか外れるかの振れ幅が大きいタイプ
ホームラン型: 価格相応〜割高で大振れ。価格なりの期待値はありつつ、上振れ・下振れの幅も大きいタイプ
ゾーン1の枠内では、この5タイプのうちどれに該当するかと、コスパ・振れ幅それぞれの位置(割安〜割高、安定〜大振れ)がドットで示されます。「なんとなく気になる」を、自分の好みのタイプ(手堅く行きたいか、一発を狙いたいか)と照らし合わせる材料にできます。
ゾーン2: 資質バランス ― 得意・不得意を形で直感的につかむ

スピード・スタミナ・パワー・柔軟性・血統・馬体の6軸を、同世代の中での相対位置でレーダーチャートにしています。
尖っている軸がその馬の得意分野、へこんでいる軸が相対的に弱い分野です。
6つの数字を並べて見比べなくても、形を見るだけでその馬の個性が直感的につかめます。
ゾーン3: デビュー予測 ― 気の長い待ちにならないか事前に分かる

募集時点のデータから、デビュー時の体重とデビュー時期を予測します。
出資してからデビューまでどれくらい待つことになりそうか、体重はどれくらいまで増えそうかが、募集時点である程度見えてきます。
数字の右側にある「誤差目安」は、このモデルの予測が実際の値からどれくらいズレる傾向にあるかを示す参考値です。
数字が小さいほど、予測のブレが小さいモデルということになります。
ゾーン4: クラス到達バー ― 同じ世代・同じクラブの中でどのあたりか

本カルテの真骨頂です。
未勝利層・1〜2勝層・3勝〜OP層・重賞〜G1層の4段階のうち、どのあたりに位置しそうかを、同じクラブ・同じ世代の中での相対位置(青い針の位置)で示します。
左上の丸いラベルは「上位◯%」という位置づけ、その右のグレーのラベルは「◯◯クラブ◯◯年産内で何位/何頭中」という順位です。
同じ年に募集された頭数の中で、この馬がどのあたりの評価なのかが一目で分かります。
ゾーン5: 血統コンテキスト+簡易血統表 ― その血統、実際どれくらい走っているのか

父×母父の組み合わせで、実際の産駒がどれくらい勝ち上がっているか(勝ち上がり率)と、稼いでいるか(AEI、平均を1とした指数)を表示します。
下には3代前まで遡る簡易血統表もあります。
「良血」という言葉の中身を、印象ではなく実際の産駒成績の数字で確認できます。
数字の下には、その数字の根拠を示すバッジが付きます。
「①父×母父」は、実際に同じ父×母父の組み合わせの産駒データがある場合。
サンプルが少ない組み合わせでは、父の系統や母父の系統に広げて代用することがあり、その場合は「②父系統×母父」のように表示され、色も黄色寄りの注意色に変わります。
数字を出す際に、どこまで直接のデータに基づいているかを隠さない設計です。
ゾーン6: 適性プロファイル ― コース選びの見立てが先に分かる

推定適距離(短距離〜長距離のどのあたりが合っていそうか)と、芝・ダートどちらが向いていそうかを表示します。
ゾーン7: 総括 ― 全部読まなくても、これだけで大枠がつかめる

ここまでの情報(投資タイプ、血統、適性、デビュー予測、実測面の強み・弱み、母の現役成績)を1つの文章にまとめたものです。
まとめ
カルテは、馬体イメージ図+投資タイプ、資質バランス6軸、デビュー予測、クラス到達バー、血統コンテキスト、距離・芝ダ適性、総括の7ゾーンで1頭分の情報を1枚に集約したもの
カタログを何ページもめくって数字を拾い集める作業を、この1枚に置き換えられる
投資タイプは「コスパ軸(割安〜割高)」×「振れ幅軸(安定〜大振れ)」の組み合わせで、高コスパ型・堅実型・ブランド型・一発型・ホームラン型の5つに分類される
血統の数字には、どこまで直接データに基づいているかを示すバッジが付く(系統代用など)。整備が追いついていない項目は「データ不足」と正直に表示される
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