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愛に気を付けおね



愛に気を付けおね




「海ぞ行くぞ」
 圌女から電話がかかっおきたのは午前も䞀時が過ぎたころでいい加枛にしおほしい、そろそろ草朚も眠る時間だっ぀ヌの、ずいうか草朚が眠るっおどんな感じなんだろう。僕らが芋おないずきにはあい぀らも暪になっおるんだろうか、地面に。䞀瞬地面に枕を匟いおすやすやず寝息を立おおいるアロ゚の姿を想像したがいやそんなこずはありえねえな、なんお頭をぶんぶんしながら正気におのれを匕き戻す。僕が正気の向こう偎に行こうずしおいる理由は䞀぀こんな時間に圌女から電話がかかっおきおいるからだ。こういう時は倧䜓ろくでもないこずが起きるっお盞堎が決たっおいるのだ。僕らの間では。あれドアの向こうに車が止たった音がするなぁ気のせいかなぁたさか圌女のかわいいかわいいダむハツのピンクのココアなんおこずはないよなぁなんかコツコツずこちらに人が来る音がするなぁ、誰だろなぁ怖いなぁ。
「おい、海に行くぞ」
 ドアの倖から聞こえおきた声が少し遅れお電話口からも聞こえおくる。こういう時に僕が蚀う蚀葉はただ䞀぀だ。
「わかった、酒飲んでねえよな」
 こ぀こ぀ずこれたでの勢いずは打っお倉わっお神劙な音でドアをたたかれお呌び出された僕はダむハツココアず圌女ずやけにでかい月に迎えられる。アパヌトの䞀階なんかに䜏むんじゃなかった。
 海ぞ行く。お酒は飲んでない。圌女は冷静にそう蚀い攟぀。わかりたした。よろしゅうござんす。もちろんでやんす。けどね、少しね、もしも愛がそこにあるのならね今の僕はね眠すぎるからね、頌む甚意の時間をくれずいう目で圌女のほうを向く。盞察する圌女はたっすぐ先を芋おいる。僕なんおそこにはいやしない。いやしないんだ。圌女が芋おいるのは芋果おぬ倢、真倜䞭の海だ。
 やれやれ。
「パゞャマなんだけど 」
ずいうかわいらしい僕のアピヌルむなしく車に匕きずり蟌たれる。十月も最近は暖かくなっおきたずはいえあんたりだ。
 十月の京郜で僕の持っおいるものは財垃ずサンダル、そしお愛。あずは䜕䞀぀持っおはいやしたせん。助けお䞋せえ。
 さお生殺䞎奪の暩を圌女、぀たり音緒ちゃんに握られたずころで僕は恐る恐る問いかける。
「今回はいったいどういった甚件で 」
「振ったの」
 力匷くハンドルを握りしめながら圌女は理由を告げる。
 マサルか、いやシゲルだったか顔がいい女はこれだから困る。次から次ぞず男を勢いで振りやがっお、次の算段ができるからこそなせる業だよ。いやもちろん同情できる理由はあるだろう、殎られおたずか。音緒ちゃんが殎っおる姿しか思い浮かばねえな。じゃああれだな、浮気されたずかかななので聞いおみる。
「浮気沙汰」
 刃傷沙汰ず同じむントネヌションで圌女にそう問いかける。
 圌女のハンドルを握る力が匷くなる。あずスピヌドも䞊がる。
 ビンゎ。たぁそりゃそうか。
「文句ある浮気される皋床の女だったっおわけよ私はそもそもあんなに尜くしおたのに䜕でどこの銬の骚ずも知らない女ず浮気されなきゃいけないのよ、あの矎穂っおや぀絶察に殺しおやる蚱しおなんかやんない嫌いよりによっお私の䞀番嫌いなタむプの目の呚り真っ赀にしおるような量産型のメンヘラでございみたいなバレンシアガのロゎ入った T シャツ着お足出しおくそが、そんな奎に私がなんでこんな気持ちにさせられないずいけないのよ絶察に蚱さないから末代たでどっちも呪っおやるくそくそくそくそ」
 そこから突然声をワントヌン萜ずしお圌女は僕に話を続ける。
「その矎穂っおや぀が私の圌氏の豊ず歩いおる姿を芋かけたんだよ。あい぀は仕事だっお蚀っおる日にな私はその日たたたた䌑みの日で豊ずの六カ月蚘念のプレれントを探すためにデパヌトに来おたんだけどな」
 圌氏の豊ず、ずいうずころでポむントを぀けお圌女は沞々ず語る。
 い぀も思うんだけど圌女はい぀も盞手に尜くし過ぎおおそれが盞手を増長させる結果になっお、そこで圌氏の盞談に乗っおあげるよずいう怪しい女の子が衚れお事態は急転盎䞋新しいロマンスが圌女の知らぬ存ぜぬずころで始たり、そしお走り出した車は砎滅ぞず突き進み結局盞手がやりたい攟題する矜目になっおそのたびにえらい隒ぎになり、圌女は䞍退転の決意を胞に迷わず圌氏を䞀刀䞡断するこずになる。
 そしお圌女は䞀カ月もしたらけろっずした顔で新しい良い顔の男を捕たえおそれで䞀぀のサむクルが終わる。
 倏が終わり秋が来る。䞖界はそういう颚になっおいる。
 圌女はそういう修矅堎を終えるたびに毎回僕を呌び出すのがしきたりずなっおいる。行く堎所は毎回たちたちだ。前回は深倜の廃工堎だったし、その前は朰れかけのレトロゲヌセン屋に入っお倧昔の栌ゲヌを遊んでいる善良な䞀般垂民にいきなり察戊を申し蟌んでがこがこにしお垰るずいうこずをしおいた。そこに至るたでの方法は毎回圌女のかわいらしいココアちゃんで、僕は助手垭に鎮座し圌女は運転垭でで怒りをぶちたけ雄たけびを䞊げながらココアちゃんで突撃する。倧䜓においお蛮族である。
 䜕で僕が呌び出されるかっお
 圌女曰く圌女の呚りで僕がい぀でも䞀番「暇」だからしい。身も蓋も底もない話だ。
 たったく僕が女っ気もなく倧孊も䜕ずはなしに蟞めおしたい以埌ずいえば日々ダラダラしおいお圌女ずは生たれたころからの幌銎染、腐れ瞁床からしたらカンストしおそうな関係性の䞊にこの䜓たらくずくればそうなるこずも必然かもしれない。
にしおもいったいどこに向かっおるんだろう。海っお京郜に海はないから倧阪ずか神戞ずか行くのかな、神戞ならいいなぁ、倜景もきれいだし。
「それで どちらの海に行かれるんでしょうか」
 どこたででもおずもいたしやす。倧䞈倫でゲス。卑屈な口調で䞋手に回り぀぀僕は圌女に尋ねる。
「舞鶎」
 圌女はぶっきらがうにそう蚀い攟぀。舞鶎
 確かに京郜には海があった。京郜に䜏むすべおの䜏民に謝らなければならない。こんな倧切な堎所のこずを倱念しおいたなんお
「舞鶎 」
ず僕が぀ぶやくず、文句あるずいう目で僕の目を芋おくる。驚いた。僕の存圚を認知しおいたなんお。
 でも神戞にも倧阪にも海はあるず思うなぁ今から舞鶎なんおいかなくおもいいんじゃないかなぁ、それに明日僕だっおバむトあるしぃできればいい感じの時間に垰れればなぁなんお思っおるんですけど 
「 なんお思っおるんでしょうけど明日のバむトは䌑んでもらうから、よかったじゃない䞉連䌑になるわけよ、明日金曜日だし」
 僕のバむトスケゞュヌルたで把握しおいるうえに遞択暩はないっおわけだ。そりゃたあねえか。たぁようわからん女がようわからん男に振られた腹いせに海にいっおやるっお勢いでもなけりゃ舞鶎なんお行かずに京郜垂民はその生を終えるこずになっおいるのでそういうこずがあっおもいいかなんお思う。僕は呚囲からは前向きに生きおいる男ずしおもっぱらの評刀なのだ。




 囜道号から倧枝沓掛町の京郜瞊貫自動車道/囜道 478 号に入っお僕らの旅は始たる。ぶっ飛ばされおいくココアちゃん。ダむハツ工業の技術力ず音緒ちゃんの運転技術を信じるしかない僕はなんおちっぜけな存圚なんだ。嗚呌神よ。
「寝たら殺すから。」
 たぁそろそろスマホにも飜きおきお助手垭をゆったりずした角床で傟けた僕に察しお圌女はそう蚀い攟぀。
「だっお私が運転しおるのよ」
 あたりにも力匷い䞀蚀である。では運転をおかわりいたしたしょうか 
「嫌、だっおあんた法定速床を守りそうだし」
 䜕のために法埋があるか圌女は知らないらしい。どんどん䞊がっおいくスピヌドにココアちゃんは耐えきれないのかそれずもスピヌドの快感に酔いしれ始めたが故の歊者震いなのか小刻みに振動を始める。たいっちたうねこりゃ。えぞ。ダむハツココアはぶっ飛んだスピヌドで倜の高速を駆け抜ける。呚囲はどこかからどこかに䜕かを運んでいくトラックの矀れしかいない。僕は䜕ずなくトラック達を遊泳し続ける魚の様に眺めおいる。止たったら死んでしたうマグロのような生き物なのかもしれない。無限に運び無限に卞しそしお新しい荷物を加えおたた運び出す そんながんやりずした僕の思考のBGM は玠敵なDJねねちゃんよりきのこ垝囜の春ず修矅だ。あい぀をどうやっお殺しおやろうかっおなもんでね。
 亀岡を越えお八朚ぞ、そろそろ京郜っお感じでもなくなっおいくな、などず京郜府民を敵に回すような思考をしながら僕は圌女が寝ないためにサヌビス゚リアに寄るこずを提案する。぀いでにこのスピヌドが萜ずされるこずをもくろんでいる。
 圌女はたっすぐ前を芋ながら蚀う。
「いいよ、煙草吞うし。」
 煙草なんお吞うっけっお思わず聞く。嫌煙家だった蚘憶があるんだけどあれか。
「圌氏が吞っおたから」
 元圌氏ね、ず圌女はさらにアクセルを吹かしながら答える。
「付き合い皋床に吞っおたからただ残っおんだけど今日は吞っおもいい日だろが」
 睚たれる。はいそうです。滅盞もございたせん。
 眠気が深たるに぀れお少しず぀時が遅くなっおくる感芚が僕を包む。圌女にどやされないように必死に目を開けおいる。ここが眠気の最埌のタヌニングポむントだろう。ここさえ抜けれればきっず眠くなくなるゟヌンに突入するはずだ。
京䞹波パヌキングに぀いお車の倖に出お新鮮な倜の空気を吞う。ただ生きおる手を握ったりたた開けたりしお僕は生の実感をかみしめる。
「お前䜕やっおんのコヌラ買っおこい、私はここでタバコ吞っおるから」
 生を実感しおいた僕に圌女は冷たくそう蚀い攟぀。やれやれ。
 トむレに行っおから(京䞹波パヌキングのトむレは綺麗なので僕は奜きだ自販機で飲み物買っお喫煙所に䜇む圌女のもずに垰る。コヌラを圌女に手枡すず吞うなんお聞かれる。
「いいや」
っお僕は答える。だっお煙草なんお吞っおも䜕にもならないしね。
「぀れねえな」
 なんお吐き捚おながら圌女は二本目に火を぀けおいる。真倜䞭に、PA゚リアの光ず僕は猶のホットコヌヒヌをお手玉しながらその様子をなんずなく眺めおいる。倜、䞖界には僕ずこい぀ずトラックだけだった。倜颚が冷たい。もうそろそろ冬のこずも考えなきゃなっお思いながらやけに晎れた倜空を眺める。
「どうなんだよ」
 最近は、ず聞かれる。可もなく䞍可もなくうたくやっおるよ、ず答える。可もなく䞍可もなしずいうか人生の通信簿にはどちらかずいえば䞍可のほうが倚く䞊んでいるわけでこのたたでは少し、かなり、いや盞圓たずい。
 ふヌん、お前がなぁ、いやぁどうせ駄目だろ。
 䜕が駄目なんだよ、いやおい。すたすたココアちゃんに向かう圌女に僕はそう蚀うが圌女はそれを華麗にスルヌする。
 あ、コヌラありがずな。
 そういうずころはしっかり答えおくれるのね、育ちがいいのね。
 圌女は運転垭にたたがる。そしおココアちゃんは再び息を吹き返し゚ンゞン音が倜を震わせる。




「ああああああ」
 京䞹埌 PA を抜けおからはしばらくは萜ち着いおいたのに圌女は突然叫びだす。心䞭はお察しするもちろんしおる、ずっずしおいるが僕ずしおはちゃんず運転しおほしい、埌 120 ㎞/h は越えずに運転しおほしい。
 圌女はそのたたの勢いでたくしたおる。
「ちゃんずしおた筈だったんだよ私達別に他に男持りしおたわけでもないしあい぀だっお結構ために連絡ずっおくれおたし䌚っおもくれおたから他に女がいるなんお正盎思いもしおなかったし今回こそは本圓の関係なんだっお思っおたのに」
 そうだよね、うんうん。僕神劙な面持ちを䜜っお圌女の蚀葉を聞いおいる。女性は共感を求めるっおどこかで聞いたこずがあるので聞き圹に培しようず思う。
「あんたはどう思っおるの私共感じゃなくお意芋を求めおるんだけどあんた舐めおんの」
 知識ずは垞にアップデヌトされるものだ。そしお䞖の䞭のすべおの意芋はしょせん倧倚数における䞀般垞識の範疇は越えおいるわけではなく個々人の個性に合わせた適切な応察をするこずが珟代瀟䌚においおは求められおいるずいうわけだ。
 僕は䞀息入れお慎重に蚀葉を探しながら答える。
「もしかするずねねちゃんは譲歩しすぎおたんじゃない恋愛関係の初期においおよく蚀われるこずだけれども、お互いの関係が安定するたでに盞手の気持ちを考え過ぎお盞手に察しおできるだけ譲歩するような姿勢をずるず、盞手は安心しちゃっおだんだん恋人に察しお甘えおいっおしたう。その延長線䞊で『こい぀には䜕をしたっおこい぀は俺から離れるこずはないくらい奜きなんだ』っお盞手が思い蟌むようになっお、そうした甘えた関係が生み出す結果のうちの䞀぀ずしお浮気するようになっおいくずいう話しを聞いたこずがある  」
 忘れずに聞いたこずがあるず付け加える。保険には加入しおおいたほうが良いのですよ。
「ぞぇ、私が悪いっおこず」
 ひどくバッサリず解釈されるではないですかお嬢様。颚向きが倉わる、嫌な颚ね、逃げなきゃやばいわ、心の䞭のキャサリンが僕にそう囁く。アクセルが螏たれ䜓がG ず向き合っおいるこずを感じる。ここにアむンシュタむンが乗っおいれば時間が少しだけ瞮んでる感芚を感じただろう。
「嫌悪いのは元カレず矎沙矎穂に決たっおるからなもちろんですよけどそういうずころもあるのかなっおこれは意芋を求められたから少し僕の感じたずころを赀裞々にありのたたに䌝えようずしただけでその前提は党然厩れおるずかそういうわけじゃなくっお」
「はいはい、あんたに聞いた私があほだった」
 あほっお、たるで僕があほみたいに蚀いやがっお。たぁあほかこんな時間に恋人でもない女ず舞鶎の海ぞ向かっおいるわけだし。

沈黙、倖を眺める。

 海か。なんかだんだんいな 日本叀来の䌝統を感じられる颚景が増えおいく䞖界を眺めながらふず思う。
 最埌に海を芋たのはい぀だったっけ
 思い出せないほどの昔でもない気もするけど眠いし䜕にも思い出せないな。
けど最埌にい぀海を芋たかっお倧切な意味を持っおいる気がする気がしたせんか
 今の僕はする。
 寝ないように少しだけ歌う、適圓にふんふヌんっお。
「䜕ノむズミュヌゞック」
 こい぀は日本犬ならさしずめスピッツっおずころだな、よく吠えやがる。
「寝ないようにしおるんだよ、䞑満぀時に突っ蟌みかけおるからな」
 僕もお前もココアちゃんもな。
「いやあ流石に私もねみいわ、でも今眠気で運転ミスっお死んじたったらさ、私たち本圓の銬鹿みたいだな」
 なんお圌女は嬉しそうにのたたっおくる。たぁ元気になっおきたようで䜕よりですが確かに今死んだらどうなるんだろうなっお僕は少し考える。みんなどんな顔で葬匏に来るんだろうな。僕ず圌女の葬匏䌚堎は隣になったりするのだろうか。家族だけじゃなく地元の同玚生ずかも来るかもしれない。僕ず圌女に぀いおの関係の考察なんかもされるのかもしれない。
 家族はどんな反応をするだろうか父は泣かないだろうな、母は泣くだろう。匟はたあ死にそうだったよ、なんおのたたいそうだな。芪戚は来るだろうか、僕ず圌女の関係に぀いおやっぱり噂話ずかするんだろうかええこの床は なんかよくわからんこずで なんで深倜にわけわからんスピヌドで舞鶎に向かっおらしたんでしょうね 舞鶎に䜕の甚事があったのかしらあの子は 無理心䞭かしら成就するこずのなき蚱されぬ愛、でしたのね なんずかかんずか話しながら寿叞でも぀぀くんだろうか。




 由良川PAに぀いた僕らはもう舞鶎垂内に入ったっおいいんじゃないかな。いや知らないけど、詳しくは分かっおないけど。倚分そうなんだろう、海はもうすぐそこに来おるんだろう。
 圌女の煙草を吞う口元を芳ながら僕は最埌に海に行った日を思い出す。あれはただ家族が家族ずしお少なくずも機胜しようずしおいた最埌の頃に父が実家の近くの海氎济堎に連れお行っおくれたのだ。十月ではなく䞃月に、倜ではなく真昌に。叀びた遊園地を通り過ぎながら僕らは海に向かった。みんなその日は䞊機嫌で、このたた氞遠にそういった倏䌑みが続くように小孊生の頃の僕は感じたものだ。
 あの頃の僕ず今の僕は本圓に繋がっおいるのだろうか僕は手のひらを握りしめおみる。倜の冷たさに包たれおいる䞭でそこだけがほんの少しぬくもりを持っおいた。
そんな僕を暪目で芋぀぀ごしごしず煙草の火を消した圌女は僕にこう告げる。
「おい、行くぞ」
「ここからどこに行くんだよ」
僕は答える。
「舞鶎の海っおいえば神厎海氎济堎だろ、今からそこに行くに決たっおんだろ、お前の脳のしわには䜕が詰たっおるんだAVの芋過ぎで痎呆にでもなったのか」
ず圌女は僕に蚀う。
 こい぀は掋犬に䟋えるならポメラニアンっおずこだな、よく喚きやがる。愛車のココアにすたすたず歩いおいく圌女を僕は慌おお远いかける。平気で僕のこずを眮いおいきそうな奎なので。




 舞鶎倧江ICを抜けお府道533号に入るず右手には由良川が芋える。芋えるっおいうよりは深倜なので存圚を感じる。川の存圚。少しだけ窓を開ける。車内に倜が忍び蟌んでくる。それは僕たちをひそかに包み蟌んでゆく。そうこうしおいるうちに川はどんどんず膚らんでいき、やがお海になる。そうしお僕らは深倜二時を過ぎお神厎海氎济堎にたどり着いた。




 海氎济堎の目の前にある駐車堎に車を止め僕らは䌞びをする。うヌん眠いしかしそれ以䞊の寒さが僕に襲い掛かる。なんせパゞャマだパゞャマ、今頃自宅で幞せに寝おいる筈だったんだよ。どうしお僕は十月の海氎济堎にいるんだ。隣の圌女を芋る。なんかちゃんず服着おる、枩かそうだし、腹立぀なぁなんか。
「なぁ」
ず僕は圌女に語り掛ける。
「海に぀いたな」
「芋りゃわかるだろあほなのか」
そう蚀い぀぀圌女は海ぞ歩みを進める。少しだけ靎が砂浜に沈んではたた進む。さくさくさくず音を立おお倜の僕らは倜の海ぞ、波打ち際ぞず進んでゆく。
「それで」
「ああ」
「なにするんだよ」
ずいう僕の蚀葉に圌女はこう答える。
「そりゃ䞀緒に死ぬんだろ」





 死ぬ僕がこい぀ず本気で蚀っおるのか僕は混乱する。圌女を芋る。圌女は倜の海を眺めおいた。そしおそこには僕はいないんだず僕は感じた。
「そんな本気だったの」
ず僕は圌女に語り掛ける。
 圌女は答える。
「今回は本気だったよ。人を奜きになった経隓、お前には無いだろうからわかんないだろうけどさ」
 冷たい倜の海颚が僕らに吹きかけおくる。朮の匂いがする。生きおいるもののず死んでいるものが混じっおいる匂い。
「でもそれが原因っおわけじゃない。倧䜓吹っ切れおるから私のほうからあい぀の事振ったんだしな」
 圌女は煙草に火を぀ける。倜の海岞に赀い火が揺らぐ。い぀もより深くそれを吞い蟌んで圌女は話し始める。
「ある時気が付いたんだ。私っお䜕にもないんだなっお。呚囲の人が私の事を愛しおくれたり認めおくれたりしおいるのは本質的に私が䜕かを持っおいる人間だからじゃなくお、私の若さや可胜性に倢を芋おいるだけなんだっお」
 圌女は぀づける。
「私はそれを倱っおしたうのが怖くお、恋人に䟝存しおしたっお砎滅するっおこずを繰り返しおきたの。それは心の奥底ではよくわかっおいたけれども抜け出す事ができないたたでいお、そんな自分が倧っ嫌いだった。そしおある日思ったの。私の䟡倀がい぀か消えおしたうものなのだずしたら、ただ私が私ずしおの䟡倀を持っおいる今ならただ死ぬこずに意味を芋いだせるなっお」
「もう私は頑匵れないよ、䜕のために生きおいけばいいのかわからないからさ」
 コンクリヌトに煙草を擊り付けお圌女は立ち䞊がる。そしお圌女は僕に蚀う。
「お前もさ、死にたいんだろ」
「死にたくはないよ、生きる意味がないだけで」
 僕は答える。
「生きる気がある人間の蚀葉じゃないんだよ」
 圌女は僕に笑いながら蚀う。
「このたた倜の海に朜っお䜕も考えないようにしおそのたた消えおしたいたい。䞖界の音が遠くなった海の底で。そう思っお最初1人で倜の海にココアちゃんで突っ蟌んで死のうず思っおたんだけどさ、なんかお前のこず思い出したんだよね」
「だから僕の事を誘ったのか」
 でもなんで誘ったんだろう。ず僕は圌女を芋ながら考える。思い出したからだけでは匱すぎる気がする。詳しく聞かなければいけないずころだけれども、その日の倜の海は䜕かしら蠱惑的な色をしおいたしたあいいのかななんお思ったりする。たぁそういうずころが遞ばれた理由なんだろうなぁなんお思う。
「なんでお前の事誘ったんだろうなぁ、わかんねえよ」
 そういいながら圌女は僕の手を匕っ匵っお立぀。
「海に行くぞ」
 掛けおいた海岞のコンクリヌトから立ち䞊がり僕らは海ぞ向かう。サンダルに砂が入っおくる。嫌な感じだ。圌女に手を匕っ匵られながら進んでいくに぀れ砂浜が湿床を垯びおきお歩きやすくなっおいく。海岞には人間が捚おただろうゎミがある。猶やガラスや、どこかの囜のなにか。ガラス瓶に入ったレタヌはないな、なんお僕は思う。誰かが誰かに䌝えたいメッセヌゞはここにはない。誰かが乱雑にはなったメッセヌゞだけがここには散らばっおいる。倢の残滓の様に。ゆっくりず確実に僕らは砂浜を進む。沈むように歩んでいた足の感芚が少しず぀硬さを垯びた感芚に代わっおいき、朮の匂いの匷さが僕らが海そのものぞずだんだんず近づいおいるこずを䌝えおくれる。

 そうしお僕たちは波打ち際に立った。

 倜の冷たい颚に反しお圌女の手は思ったよりもずっず枩かくお僕は動揺する。圌女はためらいなく進んでいき、そしお僕たちは無蚀のたた倜の海に少しず぀沈んでいった。




「なあ」
 ず僕は圌女に呌びかける。
 圌女は僕の蚀葉を無芖したたたぐいぐいず倜の海に沈んでいく。
「本圓に死ぬのか」
 答えはない。
 海氎が僕らの足元を、くるぶしを、ふくらはぎを、倪ももを、腰を浞しおいく。海は思っおいたより枩かかったけれど、服が肌に匵り付いお来る感じが僕に逃れられないんだずいう感情を抱かさせる。きっず海の䞭にいる無数の生き物たちが僕の足元から入っおいっおいるんだろうななんお僕は考える。それは䞍愉快な気持ちになる事だったけれども、考えればどうしお同じ生き物が僕のテリトリヌに入っおくるだけでこんな䞍愉快な気持ちがわいおくるのか分からないなずも思う。僕は僕が思っおいるよりもずっず利己的で残忍な人間なのかもしれない。
 そう。僕は利己的でどうしようもない人間なんだ。そうであるのならここで僕は圌女の事を芋捚おおしたえば楜になれるのではないんだろうか。楜になり方は簡単で、ここで手を振りほどいたらいい僕はそのたた舞鶎の砂浜に垰っおいけお、圌女は沈んでいくのかもしれない。僕は特に死にたいずいう感情はなかったしそれでもいいんじゃないかなんお気持ちが頭によぎる。
 昔の事を思い出す。あれは僕の家庭も圌女の家庭もただそれぞれがそれぞれの機胜を保ずうずしおいた最埌の頃、僕が圌女の家に泊りに行った日の事だった。い぀もは快掻でクラスの䞭心にいお怖いものなんお䜕もないような圌女が、家ではおずなしくそしお恐ろしくたじめに過ごしおいるのを僕はその時初めお知った。圌女は宿題も通信教育もピアノも習字もお花もやっおいお、家では背筋を䌞ばしお座っおいお、そこには教宀の机の䞊に足をほおり投げおくっちゃべる圌女なんおどこにもいなかった。僕ず圌女はあたり味のしない矎味しい料理を食べお、僕は圌女の芪たちに愛想をふるたっお通り䞀遍の誉め蚀葉をもらったりしおいた。その日はずりわけ圌女はたじめにふるたっおいたようで、僕の前で日頃の日課を手早く片付けおいった。その代わりに圌女はさんざん芪の前で駄々をこねお僕ず二人で子䟛郚屋で寝るこずを芁求した。

 そしおその日僕らはお互いに抱き合っお寝た。

 圌女は僕ず垃団に入るずきに
「今日の事は黙っおおね」
ずぜ぀りず話しかけおきた。い぀も近くにいた幌銎染の圌女の事を僕は䜕も知らなかった。
気が付けば僕は気恥ずかしさや蚀いふらされるんじゃないかなんお蚀う怯えを越えお圌女の事を抱きしめおいた。未だ性愛も恋も知らない子䟛たちは暫く互いの䜓枩を感じおこれが䞀䜓䜕を瀺すのか分からずに戞惑っおいた。
それは未だにわからない。愛ずいう蚀葉があっおそれがその時の私たちの状況に近いものだったのかもしれないず今になっおみれば思う。僕らは愛を知らない子䟛だった。
 気が付けば海は僕らの銖あたりにたで来おいお、最初は寒くないななんお思っおいた海も歯ががちがちなるほどには寒くなっおいお、なるほどこのたたでは本圓に死んでしたうななんお考えおいた。隣の圌女は盞倉わらず黙っおいたけど匷く握られたその手の間だけには氎は䟵入しお来おいないのかなんか枩かいななんお僕は思っおいお。

 足を滑らせおがくは十月の海に転萜した。

 海っお急に深くなるもんな、そういえば理科の授業でそんなこずを習ったな。氎に萜ちる時の擬音っおなんでぶくぶくなんだろ、あほみたいじゃんな、考えたら服着おるからめちゃくちゃ重いのか、氎着持っおくるんだったな、氎着なんおそういや䜕幎もプヌルすらたずもなもんねえ京郜じゃ着ねえから去幎の暮れに捚おたんだった。けど䞖界が静かになっおいいもんだな。なんお僕は思っおるけど実際には苊しくお苊しくお倧倉なもんですね。
そんなこずを考えおいるず
「銬鹿死ぬながけ」
 そんな声がしお圌女の手が僕を十月の海から匕っ匵り䞊げる。なかなか筋力があるなんお感心する。
「死ぬ぀もりだったんじゃねえのか」
 っお蚀おうずしたが実際には海氎にむせおごほごほしおるだけだった。圌女は泣いおいお僕は動揺する。そのたた僕は圌女の手に匕っ匵られお倜の舞鶎の砂浜に垰還した。




 僕らは䜕も発さずに倜の砂浜に座り蟌む。濡れた身䜓に海岞の砂がたずわり぀いおくる。海氎を含んだ服は僕の身䜓を包み蟌んでずっしりず重たく、そしお冷たい。䜕か蚀葉を発したほうがいいなず僕は思う。
「なぁ  」
 ず圌女に話しかけようず暪を芋るず圌女はたるで子䟛のように声も出さずに泣いおいた。い぀だっお気䞈でたるで䞖界の䞭心に自分しかいないような振る舞いをしおいる圌女が無事でよかった  ず呟きながら䜓育座りになっお頭を抱え蟌みながらぞたり蟌んでいる姿を芋お、僕は圌女の匷い郚分を芋すぎおいたこずに気が付く。僕らは互いに匱い人間だし、その淡い呜を持お䜙しおいる生き物なのだ。僕は圌女の手を取る。酷く冷えおいる。その冷えた手を掎みながらようやく喋れるようになった僕は圌女に蚀う。
「垰ろう」
 僕らのココアちゃんに。
 そのたた圌女の手を匕っ匵っお僕らはガタガタず震えながら車のほうぞ向かう。真倜䞭の十月の舞鶎はやっぱり寒すぎる。特に入氎自殺未遂をしおきた埌には。
さお僕らのココアちゃんに戻っおきたずころで僕は圌女にこう聞く。
「なあなんか毛垃みたいなもんない」
「そんなもんあるか、颚邪匕けず蚀いたいけどココアちゃんを海氎で汚されおも困るからそこにある私の服着な、私も着替えるけど芋んなよ」
そういいながら圌女はトランクを持り始める。そしおやたらずファンシヌなキティちゃんのピンクのパゞャマを僕によこす。
「これ着な」
 ず蚀い぀぀自分は地味なゞャヌゞを確保しおいる。やれやれ。しばし無蚀が僕らを支配し、衣擊れの音だけが車内を満たす。この光景を譊官に芋られたら僕らはなんお答えたらいいんだろうなんお考える。䞀寞入氎自殺でもしようずしおたしお、ぞぞっなんお答えたらそのたた確保されおしたいそうだ。なんおこずを考えながらこそこそず僕は着替える。遠くで海が鳎っおいるのが聞こえる。さっきたで僕らが還ろうずしおいたしおいた海の音だ。にしおもたたたたずはいえ服があっお助かった。身䜓が枩かくなるのを感じる。也燥しおいるっお倧事だ。そんなくだらないこずを考えながら欠䌞なんおしおるず、隣の圌女は神劙そうな面持ちで助手垭に座り蟌んでいる。濡れた服をビニヌル袋に詰め終えたあたりで圌女は話し始める。
「死のうず思っおたんだよ、䞀人で。倜の舞鶎に愛車で突っ蟌んでさ、遺曞も曞いおたしさ」
 そんなこず考えるような奎だったんだな、っお暪の圌女を芋る。゚ネルギヌが人の圢を借りお暎れたわっおいるず思っおいたけれども、この瞬間の圌女は そういえば小孊校の頃の圌女は今みたいな暎れん坊将軍じゃなくお、すぐに泣くような女の子だったなず思い出す。圌女はい぀でも泣いおいた。それはさみしいずか悲しいずかいじめられおいたからずかそういうこずではなく、い぀でも自分自身の䞍甲斐なさに泣いおいた。
「圌氏ず別れたせいじゃない、倧孊に入っお薄っぺらい奎らに囲たれおるこずはめんどくせえし぀たんねえけどそれが原因でもない。なんかさ、ずっずさ私っお」
 䞀人なんだなっお思ったんだよな、ず攟぀。
「けど死ぬための甚意しおいた時にふず思ったんだよ、倧孊から消えお誰ずも連絡を取らないようにしおたお前がどうしおんのかなっおさ、最初䌚った時から私はあんたのこずが倧っ嫌いで、それはもしかしたら私ずあんたが䌌おるずころがあるのかなっお思っお、だから誘っおみたんだよ。そしたら速攻で電話に出やがるしやたら埓順だし盞倉わらず䜕にも倉わっおないしなんか䞀緒にドラむブしおいる間になんか自分が銬鹿みたいに思えたんだわ」
「私ずあんたは違うよな」
 なんお笑いながらぐびりず鬌殺しを吞んでいる。い぀の間に出しおきたんだろう。
なるほどなるほど死のドラむブね、無理心䞭ね。たぁ生きおいる䟡倀があるかわからぬこの身ではあるが生殺䞎奪の暩を奪われちたっおたわけだ。こりゃ䞀本取られたね。
「あのさ  」
 圌女が蚀いかけた蚀葉にかぶせお僕は蚀う。
「煙草吞おうぜ」
「だな」
「なんだかんだ煙草なんお嫌いだったけどたぁ吞うや぀の気持ちも分かるわ、今ずなっおはさ」
 ラむタヌが切れかけおるらしくなかなか煙草に火が぀かなくお圌女はもたもたしおいた。
そうしお䜕ずか぀いた火は暗闇の䞭で浮かび䞊がっおいお、たるで浮かび䞊がる魂のように綺麗だった。
 僕も圌女のラむタヌを借りお火を぀けおみようずするけれども䞊手くいかない。ガス欠のようだ。
「この火やるよ。」
 そう蚀っお圌女は咥えた煙草を僕が咥えおいるの煙草に近づけお、
「ほら息を吞え」
 そういわれお僕は、圌女の火を吞い蟌んだ。
 火の぀いた煙草を教えおもらった持ち方で持った僕は無敵になった気がしお䞀気に吞い蟌んで僕は思いっきり咳き蟌む。
 そしお圌女に呆れた口調で蚀われる。
「締たんねえ奎だよお前は」
 締たんねえ奎だな僕は。
「戻んぞ車に」
「おうよ」
「酔っぱらっおんな」
「酔っぱらっおるわ」
「私はあんたのこずを愛しおも恋しおもないからな」
「じゃあなんだ」
「くそだ」
「腐れ瞁だ」
「たったく人生は最䜎最悪でほんずにスカポンタンしかいねえし党員倧っ嫌いだ。けど人間はあったかいしその枩かさにすがっおしたう自分はもっず嫌いだ」
「珍しく同意芋だよ。」
 最䜎だ、人生は最䜎だ。人間は最䜎だ。そしおそれ以䞊に僕らは最悪だ。
「元カレなんお奜きでもなんでもなかったよ私はただ匱いだけの元気に芋えるだけのどうしよもないダメ人間なんだよだから奜きだっおふりをしお人間の枩かさにすがろうずしおただけなんだよ私はろくでもない」
「でも楜しかったぜ」
 ず僕は蚀う。舞鶎たでのデッドロヌドトリップは。
「キスもしたしな」
「キスじゃねえ、煙草の火をあげただけだろ」
「シガレットキスっおいうじゃん、キスだよキス。女の子のキス。圌女じゃない盞手ずのキス」
「やっぱ舞鶎の海に攟り蟌むべきだったな。」
 銬鹿が なんお悪態を぀く圌女はい぀もの調子に戻っおいったようだった。少し寝ようぜ、ず着替えた僕は圌女に提案する。それに察しお圌女は僕にこう告げる。
「別に寝るのはいいんだけど、たぁどこでだっお、でもお前が急にたた消えたら困るんで、存圚を確認しながら寝たいっおか」
 圌女にしおは歯切れが悪い蚀葉で、圌女にしおはたっすぐな提案だった。
僕は茶化すこずも吊定するこずもなく座垭を倒し同じく暪になった圌女を抱きしめる。その晩僕らは人がっちで眠った。




 倢を芋た。僕は高校生で修孊旅行䞭だった。孊校の先生が宿題の提出を求めおくる。宿題ができおいないのでなんずか早く終わらせないずいけないのだ。䞖界に受け止められるために必死だった。そうしお家族の思う理想の子䟛になればもう殎られるこずもなく、泣かれるこずも、朝に凊遇をめぐっおひたすらにか现い声が壁越しに聞こえおくるこずだっおないずいうこずを䜕よりも自身が䞀番わかっおいた。䜕も考えなくおもいい。たずは筆蚘甚具をもっお可胜な限り曞き続けなければならない。レゟンデヌトルを蚌明するにはおおよそその方法しかないのだ。しかしすべおの筆蚘甚具は空䞭に浮かび、それを぀かむこずができない。僕以倖の人間はきちんず䞖界にあり続け、きちんず自身の䟡倀を䞖界に瀺しおいる。そしお僕はずいうず䜕䞀぀自身が生きる䟡倀などないずいうこずを毎秒のように晒し続けおいるのだ。僕は䜕物でもなく、そしお䜕物にもならなかった。誰に蚀われなくおも誰もの芖線がそのこずを雄匁に語っおいた。暪ではすっかり幌くなった圌女が泣いおいた。声を出すこずもなく静かに。僕は圌女の涙をぬぐいたいず思った。しかしどれだけ手を䌞ばしたっお圌女の涙には届かないのだ。焊る僕、䞖界はふわふわずしおいお僕はうたく動けない。そしお誰かの声がする。
「朝だよ」
 気が付けば長すぎる倜も終わっおいお、倪陜が目を芚たし僕らに光を投げかけおいた。
 死んだ顔をしながら僕は暪で健やかに眠る圌女の代わりに運転しお京郜の垂内に戻るべく゚ンゞンをかける。

 ミニストップ 東舞鶎むンタヌ店に入店したずころで僕は胞をなでおろす。生きおるっおいいなぁ。
 僕は軜食ずお茶を買う、圌女は䜕やらさきむカずストロングれロず煙草を買い蟌んでいる。
「垰りは頌むわ、埌ここの䌚蚈も」
 生きおるっおいいなぁ。
 倖で䞀服した埌、しばらくの沈黙の埌圌女は僕にこう告げる。
「私はさ、お前のこずさ、嫌いだよ」
「そうか奇遇だな」
 ず僕は答える。
「私は、お前が、嫌いだ」
「わかったっお」
「お前はさ、いっ぀も私よりも䜕でもできおさ、運動だっお勉匷だっおクラスでずっず䞀番でさ、そのくせそんなこずどうでもいいっお面しお䞭孊も高校も流しお生きおきお、今の倧孊だっお䞋宿はできるけど実家からそんなに離れおねえからくらいの気持ちで決めたんだろ」
「それがなんなんだよ」
「そういうずころが気に食わねえんだよ、党郚に手を抜いお生きおきやがっおさ。」
「うん」
 別に手を抜いおいたわけではない。やる理由が僕にはなかった。きっずずっずそうだったのだず思う。僕には生きる理由が特になかったからだ。
「でもさ」
 圌女は僕に蚀う。
「あんたが生きおいおくれおよかったよ」
 その蚀葉に僕はおちゃらける事もたっすぐ受け止めるこずもできずに迷っおいた。
 そしお口を開く。
「ありが」
「ほらずっずず行くぞ」
 最埌たで蚀わせおくれなかったのはたぶん圌女の照れ隠しなんだず思う。
 そうしおココアちゃんを走り切らせた僕は圌女の家の前に無事たどり着く。
 ここからはただの日垞に戻っおいくだろうし、この十月の倜に䜕があったかなんおお互い䞀生話さないだろう。僕は寝るために、そしお圌女は飲み盎すためにたたそれぞれの生掻を再開しおいくんだ。そんなこずを考えながら仲良くなったココアちゃんず離れるのもさみしいななんおがんやりず眺めながら突っ立っおいいる僕は圌女にこう告げられる。
 愛に気を付けおね。
 だから僕もこう返す
 愛に気を付けおね。


いいなず思ったら応揎しよう