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[SF絵本]アブダクティーと相談して

Catcher by the swamp
Text and Illustration by Hola Angero

エンゲルベルト・クナッパーツブッシュが、自分の体が普通ではないことに気づいたのは、徴兵され、前線に出ていたときのことだ。ジャングルで待ち伏せしていたゲリラの軽機関銃で蜂の巣にされたにも関わらず死ななかった経験から、どうやら自分は不死身なのではないかという疑念が生じた。
その疑念が確信に変わったのは、92歳のときだった。インフルエンザに罹患し、肺炎を併発し、ああ、これで人生が終わるのだな、と観念した。だが、4日目の朝に回復し、台湾粥と油条をしこたま食べるにいたって、やはり自分は死なない体なのだということを痛感した。

なぜ、不死身の体になったのか。思い当たる節がクナッパーツブッシュにはあった。それは14歳のときのことだ。中学校のバスケット部の練習の後、自転車で家路につく途中、グラパケ沼のほとりでUFOに遭遇した。7時間くらいの記憶がないのだが、おそらくその際、アブダクション(円盤に誘拐)され、体に何か遺伝子的な施術を施されたのだ。

確信が、さらに確固たるものになったのは、135歳になったときだった。135歳。人類としては前人未到の年齢である。そのころから、バスケ帰りに一緒にアブダクティーとなった自転車が、クナッパーツブッシュに話しかけるようになった。「やあ、僕たちも大分生きてきたよね」とか、「最近節々がいたくてさあ」とか、わりと馴々しく。

その頃、クナッパーツブッシュは、町からかなり離れた荒地に居を構えていた。尋常でない年齢になったことを周りの人に知られると厄介だと思ったから。そこでは毎日、庭のサボテンが1年に5ミリくらいじわじわと成長するのを、毎日じわじわと見ることに特化した暮らしを続けていた。

183歳の時、相棒の自転車が、改まった様子でクナに話しかけてきた。
「僕たち、そろそろ死んでもいいんじゃない? 十分生きた気がするんだが」
「確かに」
「どうやったら僕たち死ねるのかな?」
クナは試しに44口径のマグナムで自分の頭を吹き飛ばしてみたが、一向に死ぬ様子はなく、ソファーに大きな穴が空いただけだった。自転車にも何発か撃ち込んでみたが、死ななかった。

195歳になったとき、クナッパーツブッシュはアブダクティー仲間の自転車に乗って、くだんのグラパケ沼を訪れてみた。すると、待ってたみたいにUFOがやってきて、宇宙人グレイが降りてきた。「何か聞きたいことがあるのかな?」とグレイは言った。「われわれは死なない体になったのか?」とクナが聞くと、グレイは笑った(みたいだった)」。
「何を言ってる? あんたたちに与えたのは、好きなときに死ねる能力なのに」

クナッパーツブッシュと自転車は、目から鱗が落ちる思いだった。195年間、死にたくない思ったことがありこそすれ、死にたいと思ったことが一度もなかったのだ。だが、いざいつでも死ねるとなると難しい。どうしたものかとクナは自転車と相談した。結果、「もう1年生きてみる?」ということで意見の一致をみて、2人はグラパケ沼を後にした。

@PICTURE BOOK STUDIO
2026.1.30

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