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tonarino_kimi
で、本当に行った
前に、何気なく話した店のことを覚えていて、 「行きませんか」と誘ってくれた人がいた。
そのときの話はこちら。
あの話には、続きがある。
本当に二人で行った。
店に入ると、 私はいつもの癖で奥の席を譲った。
メニューを先に渡して、 料理が来れば取りやすいように少し寄せる。
別に特別なことではない。
誰かと食事をするとき、 昔からなんとなくやっていることだ。
そして、もうひとつ癖がある。
一緒に食事をすると、 相手の好みをなんとなく見てしまう。
どんな味が好きなのか。
何をよく食べるのか。
意外とこれは選ばないんだな、とか。
分析するつもりはないのに、 なぜか覚えてしまう。
その日も、 そんなことをぼんやり考えながら、 向かいに座る彼女を見ていた。
普段よりよく笑っていた気がする。
仕事中では見落としていた表情も、 小さなテーブルの向こうではよく見えた。
途中でふと思った。
これ、 傍から見たら少しデートっぽいな、と。
そう思った途端、 いつもの癖だったはずの振る舞いまで、 少しだけ意識してしまった。
でも、 何か特別なことがあったわけではない。
食べて、 話して、 笑って。
普通に店を出た。
帰り道、
「また行きましょう」
と私が言った。
軽い挨拶のつもりだったのかもしれない。
すると彼女は、
「絶対ですよ」
と返した。
また今度、でもなく。
機会があれば、でもなく。
絶対ですよ。
その言葉だけは、 帰ってからも妙に残った。
前に私が話した店を、 彼女が覚えていてくれたように。
今度は私が、 その一言を覚えていた。
