汝、プリンを侮るなかれ。
その優しさは、甘い罠である。
先日、友人との待ち合わせ。
早めに着いたので駅前のカフェに入った。
いつもはブラックだけど、今日は少し甘さが欲しくてカプチーノを頼む。
小腹が空いていたのでレモンタルトと迷って、プリンを選んだ。
別添えのカラメルを少しずつかけながら一口食べる。
美味しい。
やはり固めプリンが好きだ。
二口目で、急に胸が詰まった。
涙がじんわりにじんで視界がぼんやりとかすむ。
そういえば、彼と一緒の時もよくプリンを頼んでいた。
甘いものは苦手な人なのに、私が半分こしようと言うと黙って頷く。
私はプリンの上のさくらんぼが苦手で、初めて一緒に食べた時、何気なくつまんで口もとに差し出すと、照れた顔で恥ずかしそうに食べてくれた。
それから、プリンにさくらんぼが乗っているときは、いつも彼が食べていた。
ああ、幸せだったな、って。
些細なことが、あんなに幸せだったんだなって。
気づいたら涙が止まらなくなっていた。
もうすぐ友人が着くのに、と思いながら、プリンを食べる手を止めて深呼吸する。
でも止めようとすればするほど、うまくいかなかった。
隣の席のカップルが、何事?というような顔で、ちらちらと私を見ていた。
「私、プリンで泣くタイプなんで」と、心の中で軽く開き直る。
少し落ち着いたところで、「駅に着いた」という連絡が入る。
慌てて目薬をさして、わざとらしくテーブルに置いた。
「なんか目赤くない?」
「うん、朝から充血してて……アレルギーかな」
必死に誤魔化す。
それ以上何も聞かない友人の優しさに感謝しながら、いろんな意味で、プリンはやばいと思った。
甘くて、静かで、何気ない顔して、
人の記憶も感情も一気に連れてくるんだから。
