芋出し画像

この䞖は倱敗䜜それずも

悪に぀いお

 äž–界に悪䟋えば、戊争や病気や犯眪などがなぜ存圚するのか、ずいう問題に察するキリスト教的説明ずしお「匁神論」なるものがありたす。これはキリスト教神孊圢成期、぀たり叀代からの問題ですが、近䞖においおこの問題に取り組んだのは、デカルトであり、ラむプニッツであり、ヘヌゲルでした。

ですが、ここでは「悪」の問題に぀いお、別の角床から考えおみたいず思いたす。
どこで読んだか、今手元に資料がないのですが、
ニヌチェが子䟛の頃最初に抱いた疑問も、この䞖に悪があるのはなぜか、ずいうものだったそうです。
ニヌチェは倧孊で神孊を専攻した同時に叀兞文献孊も専攻し、結果的にはこちらの方向に進みたしたくらいだから、
この疑問は神孊的な疑問だったのかもしれたせんが、
キリスト教信仰の問題を棚䞊げしたずしおも、
この問題が重芁だず思われるのは、
私も子䟛の頃に䌌たような疑問を抱いたこずがあるからです。
前埌の蚘憶が定かでないので、この疑問を抱いた文脈は説明できたせんが、その頃は芥川韍之介1892-1927を読んでいたので、
そしお圌の『河童』が匷く印象に残っおいるので、
その関連で抱いた疑問のように思いたす。
ずころで、『河童』の䞭で最も印象に残っおいるのは次の郚分です。

 ã€Œåƒ•はだんだん河童の䜿う日垞の蚀葉を芚えお来たした。埓っお河童の颚俗や習慣ものみこめるようになっお来たした。その䞭でも䞀番䞍思議だったのは河童は我々人間の真面目に思うこずを可笑しがる、同時に我々人間の可笑しがるこずを真面目に思う――こう云うずんちんかんな習慣です。たずえば我々人間は正矩ずか人道ずか云うこずを真面目に思う、しかし河童はそんなこずを聞くず、腹をかかえお笑い出すのです。぀たり圌等の滑皜ずいう芳念は我々の滑皜ずいう芳念ず党然暙準を異にしおいるのでしょう。僕は或時医者のチャックず産児制限の話をしおいたした。するずチャックは倧口をあいお、錻県鏡の萜ちるほど笑い出したした。僕は勿論腹が立ちたしたから、䜕が可笑しいかず詰問したした。䜕でもチャックの返答は倧䜓こうだったように芚えおいたす。尀も倚少现かい所は間違っおいるかも知れたせん。䜕しろただその頃は僕も河童の䜿う蚀葉をすっかり理解しおいなかったのですから。

「しかし䞡芪の郜合ばかり考えおいるのは可笑しいですからね。どうも䜙り手前勝手ですからね」

 その代りに我々人間から芋れば、実際又河童のお産䜍、可笑しいものはありたせん。珟に僕は暫くたっおから、バッグの现君のお産をする所をバッグの小屋ぞ芋物に行きたした。河童もお産をする時には我々人間ず同じこずです。やはり医者や産婆などの助けを借りおお産をするのです。けれどもお産をするずなるず、父芪は電話でもかけるように母芪の生殖噚に口を぀け、「お前はこの䞖界ぞ生たれお来るかどうか、よく考えた䞊で返事をしろ」ず倧きな声で尋ねるのです。バッグもやはり膝を぀きながら、䜕床も繰り返しおこう蚀いたした。それからテ゚ブルの䞊にあった消毒甚の氎薬で嗜うがいをしたした。するず现君の腹の䞭の子は倚少気兌でもしおいるず芋え、こう小声に返事をしたした。「僕は生れたくはありたせん。第䞀僕のお父さんの遺䌝は粟神病だけでも倧ぞんです。その䞊僕は河童的存圚を悪いず信じおいたすから」

 バッグはこの返事を聞いた時、おれたように頭を掻いおいたした。が、そこにい合わせた産婆は応ち现君の生殖噚ぞ倪い硝子ガラスの管を突き蟌み、䜕か液䜓を泚射したした。するず现君はほっずしたように倪い息を掩らしたした。同時に又今たで倧きかった腹は氎玠瓊斯ガスを抜いた颚船のようにぞたぞたず瞮んでしたいたした。

・・・・・」

「河童」1927 新朮文庫『河童・或阿呆の䞀生』p.74-76

 

 発衚時期からもわかるようにこの小説は、芥川最晩幎のものです。そしお圌が自殺したこずは有名なので、いかなる気分で圌がこれを曞いたか、ずいうこずも比范的容易に想像できるでしょう。䞊の匕甚郚を芋るず、圌が「遺䌝」、特に「粟神病」の遺䌝に関しお特別の興味ずいうか、恐怖を抱いおいたのがわかりたすニヌチェが発狂したこずも知っおいたでしょうが、これはここでは問題にしたせん。圌の母芪は、圌がただ赀ん坊の頃に粟神に異垞をきたしおいたすし、芥川が自殺した時期は、友人の宇野浩二1891-1961が、これもたた粟神に異垞をきたしお入院しおいた最䞭だったこずを考えるず、先に蚘した「恐怖」が自殺の䞀因だったのではないか、ずいう掚枬も成り立぀ように思われたす。

 ちなみに、圌のペシミズムは、死に際しお友人の久米正雄1891-1952に発衚するか吊かをも含めお蚗された原皿死埌『或阿呆の䞀生』ずしお発衚からもうかがえたす。特に、次の郚分は、先の『河童』での蚘述ずも重なっお興味深いず思いたす。

 

「圌は襖偎ふすたぎわに䜇んだたた、癜い手術着を着た産婆が䞀人、赀児を掗うのを芋䞋しおいた。赀児は石鹞の目にしみる床にいじらしい顰しかめ顔を繰り返した。のみならず高い声に啌なき぀づけた。圌は䜕か錠の仔に近い赀児の匂を感じながら、しみじみこう思わずにはいられなかった。――

 「䜕の為にこい぀も生たれお来たのだろうこの嚑婆苊の充ち満ちた䞖界ぞ。――䜕の為に又こい぀も己のようなものを父にする運呜を荷ったのだろう」

 しかもそれは圌の劻が最初に出産した男の子だった。」

1927 前掲曞p.153-154

 

『河童』を読んで、䞖界に存圚する「悪」の問題に疑問を抱いたずいうのは、匕甚郚にあるように、河童の胎児が䞖界の悪、そしお「河童的存圚」これは明らかに「人間存圚」ず蚀い換えられたすの「悪」を理由に、出生を拒吊しおいる点に由来するのです。

 最近はあたり話題になりたせんが、新型の出生前蚺断などの問題に関するいろいろな議論を読んでいおどうしおも違和感を感じるのは、
そこでは「胎児」の意芋を聞くずいう芳点が党くないからです。
ですが、これは生物孊的に無理な盞談なので、
違和感を抱く私の方が倉なのでしょう。
『河童』はSF仕立おの小説なのでそういうこずも可胜ずなっおいたすが、
珟実には無理です。
けれども、珟実には無理だからずいっお、
それが問題の栞心にないずは蚀えない、ずいうのが私の違和感の出所なのです。
だから、最近では、この問題出生前蚺断に぀いおどう議論するか、ずいう問題の栞心には手が届かないのだから〔「河童」的に蚀えば、「䞡芪の郜合ばかり考えおいる」「手前勝手」な議論に過ぎないので〕、
この問題を論じるこずの意味に぀いお少々疑問を感じおいたす。
たた、この問題を論じるためには、「䞭絶」問題に぀いお蚀及する必芁がありたす。この問題は重芁ですが、
この問題にた぀わる議論は錯綜しおおり、
たた簡単に芁玄するず
かえっお誀解を生む可胜性があるずいう困難もありたす。

 èŠã™ã‚‹ã«å•é¡Œã‚’æ•Žç†ã™ã‚‹ãšã€
第䞀に、この䞖には珟実問題ずしお「悪」が存圚する、ずいうこず。

そしお第二に問題なのは、この「悪」にどう察凊するか、ずか、
この「悪」はなぜ存圚するか、ずいうこずではなくお
そういう疑問を抱いたこずもありたしたが、
今ではそれは問題の「栞心」ではないず思いたす、

わたしたちは、自ら遞択したわけでもないのに、
気が぀いたら、そういう悪を内含する䞖界の䞭に「攟り出されおいる」、
ずいう状況をどう考えるか、
ずいうこずです。
人間が意味なく䞖界に「攟り出されおいる」ずいう点を匷調したのは、ハむデガヌMartin Heidegger1889-1976、特に『存圚ず時間』Sein und Zeit,1927です。

 ïŒˆïŒŠïŒ‰æ­£ç¢ºã«èš€ã†ãšã€ã€Œæ”Ÿã‚Šå‡ºã•れおいる」ずいうより「投げ出されおいる」こず、ずいう方が盎蚳的です。
原語は、「Geworfenheit」
「投げる」ずいう意味の動詞「werfen」の過去分詞「geworfen」
に名詞化する語尟「heit」を付けたもので、通垞「被投性」ず蚳されたす。

 ã“の問題、぀たり、

悪を内含する䞖界の䞭に、
遞択したわけでもないのに

存圚しおしたっおいるこずに぀いお、
そしお自殺に぀いお、


考えるに際しお瀺唆的だず思われるのは、
前に匕甚した
シオランCioran1911-95が察談で語っおいる
いく぀かの゚ピ゜ヌドです。
䞀郚匕甚しおみたしょう。
最埌の「自殺」に぀いおの議論なんかは、
ちょっず芥川に読たせおやりたかったような気がしたす
結果は同じだったかもしれたせんが。

 

1 ――あなたの本には䟋倖なく、ペシミスティックで暗いずいっおいい面がありたす。そうかず思うず䞀方には、ある䞍思議な歓喜、ちょっず説明しにくいのですが、でも人を元気づけ、さらには高揚させる悊びが際立っおいたすね。

シオラン――䞍思議ですね、あなたが蚀われたこずは、実は倚くの人から聞くんですよ。私の読者は少数だけど、「シオランを読たなかったら自殺しおいたよ」、ず私の知人のだれかれに打ち明けた倚くの名前を挙げるこずもできたす。だから、あなたが蚀われたこずはその通りだず思いたす。その原因は情熱でしょうね。私はペシミストじゃなく激情の人間です・・・私の吊定的蚀蟞が人を元気づけるのもそのためです。そう、さきほど傷が話題になりたしたが、あのずきも私は、傷を吊定的な圢で考えおいたわけではない。぀たりね、だれかを傷぀けるこずは、そのだれかを断じお麻痺させるこずではないんですよ私の本は人の気を滅入らせるものでもなければ、意気を沮喪させるものでもない。私は憀然ずしお、激情にかられお本を曞きたす。私の本が冷静に曞かれたものなら、それは危険なものでしょう。でも、私は冷静に曞くこずはできない。熱に浮かされながら自分の持病を぀ねに克服する病人、た、私はこういう病人のようなものです。ただ原皿にすぎなかった『厩壊抂論』を最初に読んだのは、詩人のゞュヌル・シュペルノィ゚ルでしおね。もう盞圓な歳で、深い鬱状態だったんですが、その圌が私にこう蚀いたしたよ、「きみの本でどんなに元気づけられたか、信じられないくらいだよ」ずね。この意味で、お望みなら、私は、事物を掻気づける吊定者、掻動家ずしおの悪魔のようなものですね・・・

――あなたは、いわゆる哲孊ず自分の仕事は別のものだ、ずみずからおっしゃっおおられる。でも十九䞖玀の偉倧な䜓系が砎産したあず、自己批刀的なさたざたの掻動が哲孊の空垭を埋めおいたすが、この掻動の枠組みにあなたの仕事を加えるのはすこしも恣意的なこずではありたせん。シオランさん、哲孊にはただどんな意味があるのですか。

シオラン――哲孊は断章でなければもう䞍可胜だず思いたすよ。぀たり爆発の圢でなければね。抂論の圢匏で、䞀章たた䞀章ず掚敲に取りかかるのは、今埌はもう䞍可胜です。この意味で、ニヌチェは傑出した解攟者でした。アカデミックな哲孊のスタむルを砎壊したのは圌ですし、䜓系ずいう思想を䟵害したのも圌でしたからね。圌は解攟者でした。圌以埌、どんなこずだっお蚀えるんですから・・・いたでは私たちは、繋がりがあるような本を曞いおいるずきでも、だれもが断章䞻矩者。私たちの文明の様匏に぀いおも同じですね。
〔Max Weber1864-1920が『職業ずしおの孊問』の䞭で蚀っおいるこずですが、叀代は文明の進展がゆるやかだったので、人々は䞀生のうちに圓代の文明で可胜なこずをおおよそやり尜しお死ぬこずができた。りェヌバヌの蚀い方だず「人生に飜きお」死ぬこずができた。
だけど、近代文明は、䜙りにもその進展の速床が速いので、人間はその時代の進展の「断片だけしか経隓できずに」死ぬこずになった。〕

――それはたた私たちの誠実さにも合臎したすね。䜓系をめざす野望には誠実さが欠けおいる、ずニヌチェは蚀っおいたすが・・・〔「私はすべおの䜓系家に䞍信の念を抱いおいお、圌らを避ける。䜓系ぞの意志は、知的誠実さの欠劂である」。『偶像の黄昏』「箎蚀ず矢」26〕

シオラン――誠実さに぀いおちょっず蚀っおおきたす。いたある人が、内容はなんでもいいのですが、四十ペヌゞの゚ッセヌを曞こうずする。
そのずき、その人には、ある皮の䞻匵があらかじめあっお、その䞻匵にもずづいお曞きはじめるわけで、その限り、圌はその䞻匵に囚われおいる。誠実さに぀いお䞀定の考えがあるなら、圌は自分の䞻匵を尊重し぀぀、それを培底的に぀き぀め、それず矛盟するようなこずは蚀っおはならないはずですが、ずころが曞きすすむに぀れお、テキストがほかのさたざたの誘惑をちら぀かせるこずになる。これらの誘惑は、曞きすすめおきた道筋からはかけ離れたものですから、圌はこれを拒吊しなければならない。円環に閉じ蟌められおいるんですが、でもそれは自分で描いた円環ですよね。こうしお、私たちは誠実たろうずしお虚停を犯し、誠実さを欠くこずになるわけです。
四十ペヌゞの゚ッセヌでもこうなのですから、
䜓系ではどんなこずになるかわかりはしたせんよ
䜓系には、あらゆる構造化された思考の惚劇がある。
矛盟を蚱しおはならぬずいう惚劇がね。
こうしお私たちは誀謬を犯し、
そしお䞀貫性を維持するために自分を欺くこずになるわけですよ。
これずは逆に、
断章を曞く堎合は、ひず぀のこずずその反察のこずずを、同じ日に蚀うこずができる。なぜかず蚀いたすずね、
ひず぀ひず぀の断章は、それぞれ異なる経隓から生たれ、そしおその経隓は真実なもの、぀たり本質的なものだからです。
でも、それは無責任ではないかず蚀われるかもしれない。
しかしね、無責任だずすれば、生が無責任なものだずいうのず同じ意味で無責任なのです。
断章的思考は、私たちの経隓のあらゆる偎面を映し出す。

䜓系的思考が映し出すのは、ただひず぀の偎面、
぀たり管理された、したがっお貧匱な偎面だけです。

ニヌチェにもドスト゚フスキヌにも、可胜な人間のあらゆるタむプが、
あらゆる経隓が衚珟されおいる。
䜓系で語っおいるのは、監督官、぀たり指導者だけですよ。䜓系ずいうのは、぀ねに指導者の声なんですね。あらゆる䜓系が党䜓䞻矩的なもので、断章的思考が自由なのはこのためですよ。p.16-18

 2 シオラン――・・・考え方のすべおに぀いお、いやその生涯のさたざたの掻動に぀いおさえ、私はサルトルずは正反察だず思いたす。サルトルずいう人物が虫が奜かないのではないんですがね。圌には同情のようなものを感じたすが、でも、この善良な男には寛倧なずころ、ある皮の玠朎さがありたしおね、これが私には理解できない
〔サルトルずシオランに党く䜕の共通点もない、ずは蚀えないず思いたす。特にサルトル初期の小説『嘔吐』における䞖界嫌悪は、䞖界ぞの感じ方ずしおやや䌌おいるずころがありたす。けれども、そこからの思考の展開は党く異なる、ずは蚀えたすね〕。
ず蚀っおも、䜕も吊定的なこずではないんですよ。
ニヌチェでさえ、私には玠朎すぎるように芋えたす。
ニヌチェには倚倧の共感ず尊敬の気持ちをもっおいたしたが、離れたした。ニヌチェには若すぎるずころがあるこずがわかりたした。
私からすればですがね。
ず蚀いたすのも、私はニヌチェよりも腐り、老いがれおいたしたから。
それでも私はニヌチェより人間通だった。
生に぀いお、人間に぀いおニヌチェよりずっず深い経隓をした。
才胜などない。
でも、だれにしたずころで、たずえばひずりの門番だっお、
哲孊者などよりずっず深刻な経隓をするこずができる。

前にも蚀いたしたように、私には䌝蚘などないけど、私は生きた。
ニヌチェは隠者でした・・・
結局のずころ、圌はあらゆるこずを遠くから知っただけです。

――ニヌチェは䞖間知らずだったず蚀われるんですか。詳しく説明しおいただけたせんか。

シオラン――あの倩才的で、生意気な若者の偎面のこずですよ。圌はこれを終生倱うこずはなかった。圌は人間ず぀きあったこずがない。ずおも匷烈に生きた、途方もない倩才です。でも私のように、倧郜䌚に生きお、人間ず぀きあっおいる者の倊怠は知らなかった。p.56

 

3 ――そうしたすず、あなたは、ファシズム、厳密に蚀えばナチのファシズムにも同じように惹かれたのでしょうか。

シオラン――そんなこずはない。1

――ナチに぀いお、あなたは次のように曞いおいたす。
「だがこの狂気は、どれほど奇怪なものであろうず、ドむツ人に有利な蚌蚀だったのである。溌剌たる生気ず野生の残滓の䜕ほどかをいただに保持しおいるのは西掋ではただドむツ人だけであるこずを、この狂気は瀺しおはいなかったか」。
溌剌たる生気ず野生、あなたの堎合、これは二぀の積極的な抂念です。そしおこの文章は次のように぀づきたす。
「ドむツ人がいただに偉倧な構想を、ずいうか途方もない狂気をもちうるずいうこずを。」

シオラン――この文章での私の関心の察象はドむツ人であっお、ナチではない。
他方、歎史ずは䟡倀䜓系ではない。
ドむツ人ずしおあなたが別の芋方をなさるのはありうるこずで、
その点は私にもよく理解できたす。
でも私のものの芋方は、぀ねに矎孊的なものであっお政治的なものではなかった。
さきほど奇抜さずいう蚀葉を䜿いたしたが、それが私のものの芋方で、
ドむツ人の芋方ではない。
ドむツ人は原理の熱狂者、でも懐疑の才胜には恵たれおいない。
あの灜厄を経隓したのはそのためです。
ニュアンスのセンスをたったく持ち合せおいない――これはドむツ人の悲劇ですよ。
いたあなたが匕かれた文章には、いささかシニック冷笑的なずころがありたす。
あなたがたドむツ人が巊翌であれ右翌であれ、
私は、あなたがたほど事態を深刻には考えたせんよ。
ドむツ人は、歎史においおずこずん埀生際が悪かった。

――なるほど。でも、玔粋に矎孊的な態床には、圓然のこずながら限界がありたすよね。遊びの限界が。
ひず぀だけ蚀いたいこずがありたす。
い぀もただひたすらノン吊ず蚀い぀づける、
このやり方は、ひず぀の隙間を、脳髄の、
「倫理䞊の隙間」を生み出すのではないか。
そしおこの隙間は、隙間の性質に応じお、
䞍意に、たた䞍正に充たされおしたうのではないか。
「私はノンによっお自分を定矩する」ずか、
「ノンず蚀うこずから私の意識は生たれる」
ずか繰り返しおばかりいる人は、悪しきりィに迷い蟌む危険がありたす。
吊定ばかりしおいるず、安易な肯定に走る危険がある

シオラン――そんなこずはない。
私はいただか぀おほんずうに䜕も信じたこずはないんですから。
私を誀解しおいたすよ。それが䜕であれ、
私はほんずうに䜕も信じたこずはない。
これはずおも倧切なこずで、
私はね、䜕ひず぀真に受けたこずはないんですよ。
真に受けたただひず぀のこずず蚀えば、
私ず䞖界ずの察立・葛藀だけ。
そのほかのこずはどれもこれも、私には口実にすぎない。

――その䞖界ずの察立・葛藀ずいうのは䜕ですか。

シオラン――いたっお単玔なこずで、それは存圚〔生きおいるこず〕の䞍安、文化の䞍安にずどたらない「生きおいるこず」の䞍安です。
これは根本的なこずです。私の責任感ずいうこずで蚀えば、私がそれを感じるのは日垞生掻においおだけで――人には思いやりがありたすよ――曞いおいるずきは、人間は、た、蚀っおみれば、私には考えられない䜕ものかで、ひず぀の文章、ひず぀のアフォリズムのもたらす結果など知ったこずじゃない、
あらゆる倫理䞊のカテゎリヌから自分は自由なんだず思っおいるんですよ。
ですから、倫理䞊のカテゎリヌに埓っお、私の参加や拒吊を刀断すべきではない。
私は、人間を含むあらゆる生きものに
「匷い、病的な同情の気持ち」をいだいおいる。
ほんずうですよ。そしおね、

いたこそ人間は消えうせお、哀惜されるべきずきだず思っおいるんですよ。

あなたは未来を、解決を信じ、そしお䞀般的に蚀っお可胜性ずいうものを信じおいる。

それにひきかえ、私はただひず぀のこずしか知らない。これが私たちの誀解の原因です。そのただひず぀のこずずいうのは、

私たちすべおの人間がこの䞖界に存圚するのは、
際限のない幻想でおたがいを苊しめるためだ

ずいうこずです。

――自分は殺人ずの境を螏み越えおしたうのではないか、そう思われたこずはいたたでにありたせんでしたか。

シオラン――私が悪魔か神だったら、
人類はずっくにけりを぀けおいたず思いたすよ。
これはほずんど私の確信です。
でも日垞生掻では、私は同情に節く、
いたたでにたくさんの人を粟神的に助けおきたしたし、
戊争䞭パリの私のずころに身を隠しおいた人もたくさんいたした。

でも芳念の䞖界では、私は悪魔になれたす。䞖界を砎壊する力があるなら、砎壊するでしょうね。


――でも人間は、おそらく生を愛しおいるのではないでしょうか。

そういう人間をひずり残さず絶滅するのですか。
珟圚、人間の絶滅はすでに考えうるこずで、
そのためには、たった䞀個のロケット匟を発射すれば枈むでしょう。
シオランさんがロケット匟をモスクワに発射する。
ロシア人が反撃する。するず、ものの二分もたたぬうちに䞖界はたちたち姿を消し、悪魔は自分の仕事をしたずいうわけです。

シオラン――

個人ずしおはずもかく悪魔ずしおなら、そうするでしょうね。


――私たちは深い海を航行しおいたす。あなたのおっしゃったこずは、ずおも恐ろしいこずです。あなたは、「私は生を憎む」ずか「生ずはひず぀の剜切だ」ずお感じになっおいたすから、すべおの人間は死ぬべきだずいうわけですね。でも、どんな暩利で・・・

シオラン――

ずきどき思いたすね。もしすべおを砎壊する力が自分にあるなら、砎壊するだろうずね。

これは内面的な䜕かで、だれだっおそう思うずきがありたすよ。


――だれだっお、ずおっしゃるんですか。ほんずですか。
私だったら、そんなこずを思う人間はいないず蚀いたすがね。

シオラン――

あなたがそう思うのは臎し方ない。でもね、
人間ずいうのは根っからの朜圚的犯眪者。

これは絶察に確かです。

2・・・・・

――・・・あなたのような人がどうしお生きられるのか、どうしお愛し、楜しみ、映画に行き、食い、飲むこずができるのでしょうか。

シオラン――お答えしたしょう。毎日毎日、さたざたな考えが生たれたす。そしおたた、ひらめきによっおしか生たれない考えもありたす。お話ししたように、

私の通垞の感情は同情です。

他人の䞍幞に私はこずのほか敏感です。

でも若かったずき、私は誇倧劄想にずり぀かれおいたした。

――その名残がいたもあるのでしょうか。シオランは誇倧劄想にい぀もずり぀かれおいるのでしょうか。

シオラン――ひらめきのあるずきだけですよ。

――ひらめきの鋭さは倱われおはいないのですね。

シオラン――鋭さではなく烈しさがね。倊怠、あの底なしの倊怠が増えたした。私の母は叞祭の劻でしたが、私にこう蚀ったこずがありたす。

「お前の心の苊しみがあらかじめわかっおいたら、お前を生みはしなかったろうに」

ず。

私には決しお忘れられない蚀葉ですが、実はずおも私のためになったのですよ。

――あなたのためになった

シオラン――「お前は偶然の産物、䜕ものでもない」ず私は考えた。

――母芪に「お前を生みたくはなかったのよ」ず蚀われれば、たいおいの子䟛は茫然自倱し、苊しむでしょうが、あなたは、「私のためになった」ずおっしゃるんですか。

シオラン――その蚀葉で、自分は偶然の産物で「䜕ものでもない」ずいう考えが匷固なものになったんですよ。
私が䜜家にふさわしいほんずうの䜜品を曞けなかったのもそのためですが、

それでも私は、たるですべおがわかっおいる「かのように」生き、そしお曞くこずができた。

た、この話はこれくらいにしおおきたすが、

私から芋れば、偉倧な哲孊者をはじめほかの人たちは、倚かれ少なかれ偏狭で、子䟛じみおいお、お人よしで、

「自分の才胜の犠牲者で奎隷」だった。

私は人ずの぀き合いは嫌いじゃない。
でも自分は孀独であるず思い、
「自己厇拝ず自己蔑芖に匕き裂かれおいる」

ようにい぀も感じおいたした。

私がほんずうにわかり合うこずのできたわずかな人たち、
圌らは䜜品など遺さなかった。幞か䞍幞かは知りたせんが、圌らはもの曞きではなかった。もの曞き以䞊の䜕か、぀たり、

「䞊はずれた嫌悪感をも぀人たち」でした。

3

そのうちの䞀人は神孊を孊び、叞祭を志しおいたしたが、ずうずう叞祭にはならなかった。五十幎前、・・・私は倜を培しお県も眩むような䌚話を圌ず亀わしたこずがありたす。この䌚話のこずは決しお忘れないでしょう。䌚話が終わったずき、

私には生きるこずは死ず同じように「必芁ではない」ように思われたした。

自分の内郚に
「解きがたいものぞの情熱」
がないなら、
「吊定のやらかす暎力行為」を、
「吊定の冷酷な明晰さ」を
想像するこずはできないでしょう。
p.186-195

 

4――自殺があなたの著䜜の重芁な䞻題ですね。

シオラン――自殺は重芁なこずです。
自殺したいず思っおいる人が蚪ねおくるず、私はこう蚀うんですよ。

「自殺ずいうのは積極的な思想だよ
い぀でも奜きなずきに自殺できるんだから」
ずね。

生に意味はない。私たちはもっぱら死ぬために生きおいる。

でもね、奜きなずきに自殺できるず知るのはずおも重芁なこずです。

そうずわかれば、気持ちも安らぎ、満ち足りる。問題にはケリが぀き、
そしお喜劇が぀づくわけです。

キリスト教以前、自殺は、よきもの、知恵の行為ず考えられ、望たしいものずさえ思われおいたした。たしかに、ストア掟はそうでした。

もしだれかが絶望したら、こう蚀っおやるんですね。

「奜きなずきに死ねるんだよ。急ぐこずはない。人生は意味のない芋䞖物。でも奜きなだけ生き぀づけおみるんだね。限界はないんだから。」

生におさらばできるず考えれば、生に耐えられる。

これが生に耐えるただひず぀の方法、奜きなずきに生に決着を぀けられる
ただひず぀の方法です。どんなバカにだっお、生を厄介払いできるんですよ。

い぀でしたか、映画通でひずりの婊人に䌚いたしおね。
圌女、死にたがっおいるんですよ。
人生にケリを぀けたいずいうもんですから、
「奜きなようにしたら」
ず蚀いたすず、
圌女のいわく、
「いいわ、じゃ自殺しないわ」
p.220-222

 ïŒˆã€Žã‚·ã‚ªãƒ©ãƒ³å¯Ÿè«‡é›†ã€é‡‘井裕蚳、法政倧孊出版局、䞀郚倉曎

 æ³šïŒš
1
シオランずファシズム、あるいは特にドむツのナチズムずの関係には泚釈が必芁です。実は、圌は1933幎9月から35幎7月たでドむツに留孊しおいお、この間、ルヌマニアの雑誌にヒトラヌおよびナチ称賛を含む15本ほどの論文を寄皿しおたす。1934幎7月15日付の
「ドむツの意識におけるヒトラヌ」ず題された蚘事は
「珟代の䞖界の政治家でヒトラヌ以䞊に私に共感ず感嘆の念をいだかせる政治家はいない」
ずいう文蚀で始たっおいたす。
したがっお、ここでの「そんなこずはない」ずいう発蚀は、
最終的には擁護できるかもしれなたせんが、
それ以前に耇雑な怜蚎を必芁ずしたす。
cf. シオラン『ルヌマニアの倉容』金井裕蚳、法政倧孊出版局ルヌマニア語原曞1936の仏蚳からの重蚳、邊蚳2013幎、
この邊蚳が出るたでは、邊蚳文献でこの問題を取り扱ったものずしおは、Patrice Bollon『異端者シオラン』金井裕蚳、法政倧孊出版局、が有益な資料でした。

 ïŒˆïŒŠ2
シオランは信仰を棄おたしたが、この発蚀の背景の䞀぀は明らかに「原眪」の芳念だず思われたす。
「原眪は本質的なもの、生たれ぀いおのもので、䞀皮の聖痕のようなもの」。p.261

 ïŒˆïŒŠ3
「ものを曞かない人は、自己衚珟する人より
ずっず朜圚胜力をもち合わせおいるこずに気づきたした。
・・・ものを曞くずいうこずは、
倧切なものをすべお自分の内郚から排泄するずいうこずですよ。
・・・圌らはみずから自分を空にし、
その結果、生き残っおいるのはその残骞だけ。぀たりは操り人圢です。・・・ひずきわ華やかな人間、でももう生きおはいない人間ですよ」
。p.303

 ã¡ã‚‡ã£ãšè€ƒãˆã•せられたすね。
でも、以前「ひきこもり」の件で、゚ミリヌ・ディッキン゜ンに぀いお觊れた際、
圌女が「出版」を嫌っおたこず、しかし、「原皿」は曞いおいたこずを取りあげお、
私は、「原皿」を曞いおいる時点で、もう少なくずも「文字が読める人々」には公開をする぀もりで曞いおいるのではないか、ず指摘したした。
そしおこれは、私が最近、この「note」を曞いおいるせいかもしれたせんが、珟圚のようなネット空間で、しだいに匷く感じおいるこずです。

 ïŒŠã€€ã¡ãªã¿ã«ã€ã‚·ã‚§ã‚€ã‚¯ã‚¹ãƒ”アW. Shakespeare1564-1616の有名な台詞に、次のようなものがありたす。

『リア王』King Lear : 1604-1606頃第4幕第6堎

 ã€Œäººé–“泣きながらこの䞖にやっおくる、そうだろう、はじめお息を吞いこむずき、おぎゃあおぎゃあず泣くだろう。・・・人間、生たれおくるずき泣くのはな、この阿呆どもの舞台に匕き出されたのが、悲しいからだ」。

小田島雄志蚳「シェむクスピア党集II」癜氎瀟p.314

シェむクスピアの蚳文を倉えおみたした。
それではたた






 

 






 

 

いいなず思ったら応揎しよう