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『いい人にはなれなかった。』#ハッピーライティングマラソン 56 ちょっと勇気がいるけど発信したいこと



買い物が終わってスーパーを出た。

「あー結構降ってるなぁ」

雨よけのテントにボンボン音が響く。

来る時にも使った、湿った傘を広げる。

「バッ」

すると、となりの女性と目が合う。

何事もない様にまた前を向くが、気づいてしまった。

「お姉さん、傘持ってないやん」

自然と、広げた傘をまた閉じた。

僕の「かっこいいおっさんセンサー」がピコンピコン働いたからだ。

「お姉さん、よかったら傘使って!僕、家そこやから」

僕にとっての「そこ」とは徒歩30分だ。

「え、返さなくていいですか?」

その時思った。

(あー、先に『ありがとう』とか『遠慮します』ではないんか。)

知り合いに傘をあげるノリで言ってしまった。

「あぁ、すみません。ご迷惑でしたかね。」

また傘を広げようとした。

「いえ、貸してくれたらありがたいんですけど、返せなくないですか?」

え?

その言葉に対し、

「返してくれとは思わないですけど」

(あれ?なんか少し悲しい気分だ。)

「じゃあ、貸してください。」

(『じゃあ』ってなんやねん!)

その言葉が半分身を乗り出したところで、なんとか飲み込んだ。

傘を渡すと女性は軽く会釈し、小走りで帰って行った。

少し小雨にはなってきたものの、しばらく降り続けた。

僕の「ダサいおじさんセンサー」はピコピコ鳴っている。

かっこいい、かっこわるい関係なく、あの女性は雨に濡れずに帰れただろう。

「あれは優しさの押し付けとかになるんかな。」

人にありがとう。そう言われたかっただけなのに難しい。

「まぁ嫁さんには、困ってた女の人に傘渡したって説明しよ」

嫁さんの前でもまだ、いい人でありたい。そう思っている

#創作大賞2026

#ハッピーライティングマラソン  56
#本田健

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