119番に『総務課ですよね?』と食い下がった新人
「総務課ですよね?」「消防署ですよ!」
これは、社会人になって間もない頃の私の話です。
当時私の勤める銀行の電話は、今みたいにシンプルではなく、ちょっとした“儀式”が必要な代物でした。
ある日、外線の電話を受けました。
「総務の林さんお願いします」
はいはい、と慣れた手つきで取り次ぎます。
内線19番。ピッ、ピッ。
「林さんに、○○さんからお電話です」
すると受話器の向こうから、少し強めの声。
「消防署ですよ」
……え?
(総務課にかけたんだけど、この声だれ?)
私は一瞬そう思いました。
でも若かった私は、“自分の操作が正しいはず”という思い込みが強かった。
気を取り直して、
「はい、林さんにお繋ぎします」
「いや、消防署ですよ」
「総務課ですよね?」
「だから消防署ですって!」
総務課に繋いだと思い込んでいる私には、
何度聞いても総務課って聞こえる。
でも、聞き慣れない声。
今思えば、完全にコントです。
当時の電話システムは、外線から内線に回すとき
「保留1番 → 内線番号」という操作が必要でした。
つまり私は、
1 (保留)→ 19(内線番号)
と押したつもりが、
外線119。

……はい、完全にやらかしです。
しかも不思議なのが、外線発信のときは「0」を押すルール。
0(外線発信)を押していないはずなのに、なぜか外線で繋がってしまった119。
無意識に押していたのか、それとも……。
今となっては謎のままですが。
電話の向こうで、何度も「消防署です」と言い続けてくれたあの方。
さぞかし困惑したことでしょう。
ごめんなさい。
そしてそれに対して、「総務課ですよね?」と食い下がる私。
若さって、根拠のない自信がすごい。
ところで──。
最初に電話をくださった先方さんは、どこへ消えたのでしょう?
おそらく、私の操作ミスで切れてしまったのでしょうが……。
本当に申し訳ありません。
今なら笑い話ですが、あのときの数十秒は、なかなかの緊張感でした。
そんなあの日のことを、たまに思い出します。
今は電話が苦手な若い人も多いと聞きます。
でも大丈夫。
うっかり119にかけながら「総務課ですよね」と言い張った先輩もいます。
それに比べたら、だいたいの失敗はかわいいものです。
そして、その失敗は、あとからちゃんと笑い話になります。
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