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第四話 ANAマイルを航空券に変えたつもりが、気付けば私自身がマイル消費されていた話


前回までのあらすじ。

デリヘルで出会った彼女。

旅行好き同士で意気投合。

LINE交換。

週4回会うこともある関係。

私は「まだ店を通しているから大丈夫」という、今思えば紙装甲レベルの安心感を持っていた。

もちろん。

全然大丈夫ではなかった。


日常に入り込んでくる

人は恋をすると何が変わるのか。

それは生活の中心に相手が入り込んでくることである。

朝起きる。

スマホを見る。

彼女からLINE。

昼休み。

スマホを見る。

彼女からLINE。

仕事終わり。

スマホを見る。

彼女からLINE。


「おはよー」

「仕事終わった?」

「今日暑いね」

「ひまー」

「お腹すいた」


内容に意味はない。

しかし嬉しい。

50代男性の脳は案外単純である。


毎日のように会話

気付けば毎日連絡を取っていた。

会わない日でもLINE。

会った日もLINE。

会った後もLINE。

旅行中もLINE。

仕事中もLINE。

もはや連絡を取らない日の方が珍しい。

私は思った。


「これは仲良いのでは?」


恋愛中の男が最も危険な思考である。


チップという名のイベント

私は会うたびに、

ちょっとしたチップを渡していた。

最初は軽い気持ちだった。

頑張っているから。

応援したいから。

いつも楽しい時間をもらっているから。

理由はいくらでも作れる。

人間は出費の正当化に関して天才である。


彼女の趣味

彼女は旅行が好きだった。

私も旅行が好きだった。

だから話が合った。

会うたびに旅行の話になる。


台湾行きたい。

ベトナム行きたい。

タイ行きたい。

マレーシアもいい。

シンガポールも好き。


まるで旅行会社の企画会議である。


ANAマイル問題

ある日、

私はANAのマイル口座を眺めていた。

長年の出張と旅行で貯まった大量のマイル。

正直、

使い切れない。

マイルは貯めるのが趣味になっている人種が存在する。

私もその一人だった。

そんな時、

彼女が言った。


「ビジネスクラス乗ってみたいなぁ」


危険な一言である。

非常に危険である。


擁護者タイプの発想

普通の人。


へぇ。

そうなんだ。


終了。

しかし私。


乗せてあげたいな。

喜ぶかな。

旅行好きだしな。

余ってるマイルあるしな。

まあ航空券くらいなら。


完成。

危険思想の誕生である。


プレゼント

結果として私は、

余っていたマイルを使い、スカイコインにして

東南アジア方面のビジネスクラス航空券をプレゼントした。

冷静な読者の皆さんは思うだろう。


「なぜ?」


私も今ならそう思う。

当時の私にも聞きたい。

なぜだ。


彼女の反応

もちろん喜んだ。

とても喜んだ。

それは嬉しかった。

本当に嬉しかった。

好きな人が喜ぶ。

それだけで十分だった。

少なくとも当時は。


本名

そしてある日。

彼女は本名を教えてくれた。

私は少し驚いた。

もちろん源氏名は知っている。

だが本名は別だ。

一段階近付いたような気がした。


気がした。


ここ重要である。

事実ではない。

気がしただけである。

恋愛中の男は、

この「気がした」で生きている。


年齢

さらに本当の年齢も教えてくれた。

プロフィールとは違った。

まあ業界あるあるなのかもしれない。

私は特に気にしなかった。

むしろ、

秘密を打ち明けてもらえたような気分になっていた。


危険である。

実に危険である。


私の勘違い

私は少しずつ思い始めていた。


特別なのでは?

信頼されているのでは?

仲良くなっているのでは?


もちろん仲は良かったと思う。

実際によく会っていた。

よく話していた。

しかし。

そこに感情が入ると話は別である。


ATM進化論

後になって振り返ると、

この頃の私は進化していた。

客から常連へ。

常連から特別客へ。

そして、


特別客からATMへ。


生物学的進化としては珍しい。

ダーウィンも困惑する。


だが不思議と嫌ではなかった。

好きな人が喜ぶ。

それが嬉しかった。

だから払う。

だから贈る。

だから会う。

極めてシンプルな構造である。


この頃の私

仕事は順調。

家庭も平和。

旅行も行く。

趣味もある。

客観的に見れば充実していた。

しかし頭の中では、

彼女の存在が日に日に大きくなっていた。

LINEが来れば嬉しい。

既読が遅ければ気になる。

会えば楽しい。

次の予定を考える。


気付けば、

旅行の計画を立てる時間より、

彼女との予定を考える時間の方が長くなっていた。


そして次の段階へ

ただ、

まだ私は思っていた。


「店を通しているから大丈夫」


本当にしつこい。

しつこいほど思っていた。

しかし人生には、

戻れなくなるポイントがある。

そしてその時は近付いていた。

私が最後の安全装置だと思っていた、

"店を通す"

というルール。

それを壊したのは、

意外にも彼女の方だったのである。

(第五話へ続く)

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