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第十六話 初めての海外旅行。「相性がいい」と「価値観が同じ」は別物だった



マカオへ行ってきた。

たった1泊2日。

でも。

たぶんこの旅行は、

今までで一番、

彼女という人間を知った旅行だった。

そして、

自分という人間の面倒くささも、

嫌というほど知ることになった。


朝4時の集合

早朝便だった。

旅行好き同士なので、

朝は眠いけれどテンションは高い。


前回ホテルに泊まった時は、

朝の機嫌が最悪だった彼女。

だから今回も少し覚悟していた。


ところが。


意外だった。


機嫌が悪くない。


「おはよう。」


普通に笑っている。


それだけで私は安心した。


人間というのは、

期待値を下げておくと幸せになれる。


ビジネスクラス


飛行機では、

もちろん動画撮影。


窓側。

機内食。

シート。

ラウンジ。

離陸。


旅行系YouTubeのお決まりである。


「もう一回撮って。」


「今の角度いい。」


「窓もう少し開けて。」


まるで小さな撮影チーム。


私は撮る人。

彼女は撮られる人。


動画を撮りながら、

二人で笑っていた。


「これ伸びるかな?」


「いや、絶対伸びない(笑)」


そんな会話も楽しい。


最初の衝突


マカオ空港へ到着。


ここで最初の事件が起きる。


Uberである。


私は、

迎えの場所まで歩いてから呼びたい派。


理由は簡単。


運転手を待たせたくない。


昔からそうなのだ。


仕事でも。

旅行でも。

約束でも。


人を待たせることが苦手。


ところが彼女は違った。


「着いたらすぐ呼べばいいじゃん。」


「向かいながら待てばいいよ。」


価値観が真逆だった。


私は、

「いや、それは失礼でしょ。」


彼女は、

「みんなそうしてるよ。」


たった数分の話なのに、

空気が少し重くなった。


擁護者と指揮官


後から考えると、

MBTIそのものだった。


私は擁護者。


相手の気持ちを考えすぎる。


ルールも守りたい。


迷惑をかけたくない。


彼女は指揮官。


合理的。


効率重視。


目的を最優先。


どちらも間違っていない。


でも。


正解が二つある時ほど、

人は衝突する。


セントレジス マカオ


ホテルに着いた瞬間、

空気は一変した。


「すごい!」


二人とも笑顔。


旅行好き。

ホテル好き。


最高の組み合わせである。


部屋の紹介。

ラウンジ。

館内。

プール。


動画撮影も順調。


「もう一回歩いて。」


「今のリアクションいい。」


息も合ってきた。


世界遺産巡り


午後は世界遺産へ。


聖ポール天主堂跡。

石畳。

細い路地。

歴史ある建物。


歩くだけでも楽しい。


しかし。


YouTubeがある。


「こっちから撮ろう。」


「いや、逆光。」


「もっと笑って。」


「その構図微妙。」


また始まる。


撮影は恋愛を壊す


普通の旅行なら、

歩いて終わる。


でも撮影がある。


同じ場所を何回も歩く。


撮り直す。


止まる。


待つ。


旅行なのか、

ロケなのか、

分からなくなる。


少しずつ、

お互い疲れてくる。



夜は中華料理。


マカオと言えば中華。


紹興酒。

海鮮。

点心。


美味しかった。


昼間の小さな喧嘩など、

もう忘れている。


旅行とは不思議だ。


美味しいものを食べると、

大抵の問題は一度リセットされる。


楽しい夜


ホテルへ戻る。


夜景を見ながら話す。


YouTube。

旅行。

次はどこへ行くか。


笑う。


やっぱり、

楽しい。


「来てよかった。」


そう思った。


そして朝


しかし。


翌朝。


また来た。


朝の不機嫌モード。


眠い。


話さない。


反応が薄い。


私は心の中で思う。


「デジャヴ。」


学習能力のある私は、

今回はあまり話しかけない。


前回より少し大人になった。


帰りのタクシー


空港へ向かうタクシー。


小さな言い合いになる。


原因は、

今となってはよく覚えていない。


でも覚えていることがある。


「また喧嘩してるな。」


と思ったこと。


不思議だった。


喧嘩しているのに、

旅行は終わってほしくない。


空港で急展開


空港へ着く。


すると彼女が言う。


「記念に何か買って。」


一瞬、

耳を疑った。


数十分前まで、

喧嘩していた。


なのに。


お土産。


切り替えが早い。


私は笑ってしまった。


「しょうがないな。」


結局。


買った。


完全に負けである。


次の旅行


飛行機を待ちながら。


彼女がスマホを見る。


「次どこ行く?」


もう次。


まだマカオにいる。


でも。


もう次。


旅行好きとは、

そういう生き物だった。


相性

この旅行で分かった。


私たちは、

価値観が同じではない。


むしろ、

かなり違う。


時間の感覚。

人への気遣い。

撮影のこだわり。

朝の機嫌。


全部違う。


でも。


旅行は楽しかった。


喧嘩もした。


笑った。


また喧嘩した。


そして、

また笑った。


私は帰りの飛行機で考えていた。


恋愛で大事なのは、

相性なのだろうか。


価値観なのだろうか。


それとも。


喧嘩しても、

「また一緒に旅行へ行きたい」

と思えることなのだろうか。


その答えはまだ分からない。


ただ一つだけ分かったことがある。


旅行は、

相手の本性を映す鏡だ。


そしてその鏡は、

相手だけではなく、

自分自身の面倒くささまで、

容赦なく映し出すのである。

(第十七話へ続く)

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