コナン・ドイル:世界で一番有名な探偵を殺した男。キャラクターに人生を乗っ取られた芸術家の悲劇
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「自分の生み出した作品が、世界中の人々から愛されること」。
それは、すべてのクリエイターが思い描く至高の夢であり、人生の目標です。
しかし、もしその大ヒット作が、自分にとって「一番やりたくない仕事」であり、「片手間で適当に作ったもの」だったとしたらどうでしょうか。
そして、自分が本当に魂を削って作った「自信作」には、誰一人として見向きもしなかったとしたら。
これは、世界で最も有名な探偵「シャーロック・ホームズ」を生み出した原作者、アーサー・コナン・ドイルが直面した、極めて残酷でシリアスな芸術家の絶望の物語です。
才能の消費と、残酷な「評価のズレ」
元々医師であったドイルは、非常にプライドの高い文学者でした。
彼が心血を注ぎ、生涯を懸けて書きたいと願っていたのは、格式高く重厚な「歴史小説」です。彼にとってシャーロック・ホームズという探偵小説は、あくまで日々の生活費を稼ぐために、大衆雑誌の隅に書いた「通俗的なお小遣い稼ぎ」に過ぎませんでした。
しかし、世間の評価はあまりにも残酷でした。
ドイルが膨大な資料を読み込み、魂を込めて書き上げた歴史小説は全く売れませんでした。その一方で、彼が片手間で書いたホームズの冒険には、ロンドン中の大衆が熱狂し、次から次へと続編を求めてきたのです。
「なぜ、私の真の文学的才能が理解されないのか。なぜあんな軽い娯楽小説ばかりが評価されるのか」。
世間からの「もっとホームズを書いてくれ」という声は、ドイルにとって賛辞ではなく、自分の芸術性を否定される呪いの言葉へと変わっていきました。
執筆の時間を探偵に奪われ続け、ついに精神的な限界を迎えたドイルは、ある恐ろしい決断を下します。
「この探偵を生かしておいたら、私の本来の才能が完全に潰されてしまう」
探偵暗殺計画と「最後の事件」
1893年。ドイルは連載中の短編『最後の事件』において、前代未聞の暴挙に出ます。
宿敵モリアーティ教授を唐突に登場させ、スイスのライヘンバッハの滝壺へと、ホームズを突き落としたのです。
死体こそ見つからなかったものの、それは誰の目にも明らかな「主人公の死(殺害)」でした。
作者自らが、世界中から愛される自分の分身を暗殺したのです。
原稿を書き終えた直後、ドイルは日記にこう書き残しています。
「やったぞ、ついに奴を殺した!」
それは悲しみではなく、忌まわしい重荷から解放された芸術家の、心からの歓喜の叫びでした。彼は意気揚々と、本来書きたかった歴史小説の執筆へと戻っていきました。
しかし、世間は彼を許しませんでした。
ここから、作者の予想をはるかに超えた「狂気の沙汰」が幕を開けます。
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