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イエリ流学問のすゝめ|文字を書く前に、子どもは線を覚える

これまでイエリの言語指導では、その基本でありスタートでもある「聴く」学習についてお話ししてきました。その指導順序は、基礎教育として他に類のない言語指導の初期指導であり、系統性をもって学習技能である「書く」へとつながる体系を実現しています。

今回は、「話す」「読む」という学習運動から、「書く」という学習運動へと進んでいきます。



(1)「書きたい」は、人間の本能

幼児期の殴り書きは、人間の持つ本能だとも言われています。残したい、記録したい、覚えておきたい——言葉を作り出し、文字を創造してきた人類の進化の歴史を、子どもの殴り書きは映し出しているようです。

その殴り書きも、最初は意味のない線の集まりです。しかし次第に、その線に変化が現れます。まるで何かを模すように、線が曲線となり、やがて閉じた円を描くようになります。私はこの段階で「お赤飯を炊きましょう」と言っています。それほどの知能の発達が、そこに現れているからです。

円が描けると、そこに手のようなもの、足のようなものが加わり、人の顔を想像できる「絵」へと育っていきます。

書くという行為は、人が持つ学習運動です。今回は、その「書く」に焦点を当てます。


(2)書き方指導

最近、学校などで2B・3B・4Bという柔らかい芯を使うよう指示されることが多くなりました。子どもの生活様式が変わり、手先・指先を使う頻度や内容が変化したことで、子どもの筆圧が下がっているのではないか——そう見られています。これ自体、子どもの「書く」という学習技能の低下に影響しています。

イエリでは、筆記具を握る初期から、鉛筆やクレヨンの正しい持ち方と姿勢を指導しています。大人でも、先生のなかにさえ、正しく鉛筆を持てない方を見かけます。では、持ち方や姿勢は、文字を書く際に何を左右するのでしょうか。

文字指導における「姿勢」と「鉛筆の持ち方」の指導には、単に字をきれいに書くためだけでなく、身体的な疲労の軽減、集中力の向上、学習意欲の育成といった、子どもの発達全体に深く関わる意味があります。具体的には、次の5つです。

① 身体的な負担の軽減
正しい持ち方——親指と人差し指で挟み、中指で支える三点持ち——は、力のバランスを整え、無駄な力みを防ぎます。力が抜けているぶん手が疲れにくく、ペン先の滑りもスムーズになり、「たくさん書き続けられる」状態が生まれます。さらに正しい姿勢(背筋を伸ばし、脇を締め、机に手を置く)は、手・目・首・肩へと広がる全身の疲れを防ぎます。

② 運筆の精度
正しい持ち方は鉛筆の動きを妨げないため、「とめ・はね・はらい」をお手本どおりに書きこなせます。頭でイメージした線が指先を通じて正確に紙へ現れ、文字の形が整い、「字がきれいになった」という達成感につながります。

③ 集中力と学習態度
手のひらを下にして脇を締めると、自然に正しい姿勢が取りやすくなり、集中力の高まりにつながります。肘を机に置き、手首と指先を連動させた安定した姿勢は、疲れずに文字を書く土台となり、授業への集中を支えます。この姿勢は就学後も生き、一定時間落ち着いて座っていられる力を育て、小学校生活への適応を助けます。

④ 学習意欲と自己効力感
字がきれいになり書きやすくなると、「字を書くことに自信が持てる」ようになり、学習へのやる気が上がります。正しい姿勢で自分の字をしっかり確認でき、成果が目に見えることも、その意欲を後押しします。鉛筆の正しい持ち方は学力にも大きく関わり、勉強に集中するための第一歩となります。

⑤ 手指の発達
正しい持ち方は指先を適切に使うため、手先が器用になるという発達効果も期待できます。力のバランスがよいので、ペンだこができにくいのも利点です。

ここで言う「正しい」とは、形式的な型のことではありません。文字を書く運動を高める機能性に裏づけられたものであり、子どもが「こうすると書きやすい」と体感できること——その積み重ねが、長期的な学習基盤を形づくります。


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