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三十年後へのギフトを包めるのは、今

​若い頃にやってて良かったなぁ、としみじみ思うことがある。それは「読書」だ。

​パッと思いつくのは、電撃文庫の『ブギーポップは笑わない』や、ホワイトハート文庫の榛名しおりさんのシリーズ。あの感受性が尖っていた10代だからこそ心に刺さった世界であり、ファーストタッチが今だったら、受け取る感性は全く違っていただろう。

​ライトノベルとは別に名作の読書もやって良かった。スタンダール『赤と黒』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、ユゴー『九三年』などの世界文学。当時はあまりに重厚で、話の筋を追うだけで精一杯だった。毎晩、数ページ読んでは理解できずに眠りにつき、次の夜にはまた数ページ戻って読み直す……(笑)。あの不器用な背伸びが、今となっては愛おしく懐かしい。

​当時は記号としてしか処理できなかった人間模様も、今再読したら全く違う景色が見えるはずだ。それもまた、10代の私が「よく分からないなりに、一度その道を通っておいてくれた」からこそできること。過去と比較できるのは、泥臭くても実際に体験したものだけなんやね。

​そんなことを考えていたら、ハッ!と気づいた。

ということは、40代になったいま、この年齢だからこそ共感できる本や名作を読むことは、70代の自分への仕込みになるのではないか。70代の私が「あのとき読んでおいて良かった」としみじみ振り返る――。つまり、「三十年後へのギフトを包めるのは、今」なのだ。これは読書に限らない。音楽も、映画も、アートも、旅とかにもつながるんやろね。

中年クライシスや中間管理職の悲哀、責任ある立場への昇進、子育てや介護の苦労。若い頃には「遠い大人の事情」だったものが、いまは自分の血肉や痛みとして理解できる。今だからこそ深く響くメッセージが、世の中には溢れている。

​これまでは若い人と話を合わせるために新譜を追う側面もあったけれど、それをしつつも、クラシックや往年の名作、インディーズや観光地に現代アート、今の私の感性にそっと寄り添ってくれるものを、じっくりと嗜んでいきたいな。

​そんな幸福な予感に背中を押されて、本棚から一冊の本を取り出して読み始めた。10代のバイブルだった、藤本ひとみさんの『ハプスブルクの宝剣』だ。以前、noteの記事で再読します!と言いつつ頓挫してしまっていた(苦笑)
どんな心情になるか楽しんでいこう。


​10代の私が包んでくれたギフトを、40代の私が開き、また70代の私へ向けて包み直す。そんな丁寧な梱包を、一ページずつ重ねているそんな今日この頃。