号泣おじさんと譲渡犬の名前
先日話した譲渡の話が依頼人さんの体調のこともあり早め早めで進めてようと動いていたらこれがまたトントン拍子に進み、友人夫妻の次の仕事の休みが月曜日だと言うので急遽今日が雑種犬6歳の受け渡しの日となった。
急いては事を仕損じる(子孫汁)と言うが今回は急かないと仕損じるような予感がしたのでそのようにした。
なぜか俺が緊張して朝いつもよりだいぶ早く起きてしまった。
シャワーで身を清めて今回新たに飼い主になるであろう上田市の友人夫婦宅に向かった。
峠を越えている途中にトラックを停めて野糞をしているおじさんを見てしまい、コイツぁかなり幸先が良いねえ…などと半ば無理矢理思いこみながら向かった。
彼らの家に着くと俺以上に寝不足丸出しな顔をした夫妻が俺を待っていた。
トーストと目玉焼きを俺の分まで用意してくれていたのでありがたくいただいた。
専業主夫を経て、他人の作る料理が今までの19倍くらいありがたく感じる。美味さも。ごちそうさまでした。
リビングには既に犬用のオモチャや服、車載用のケージなど大量に用意されていた。
俺もプレゼントで大量の彼らのもとに来るドッグがいつも食べているご飯とトイレシートとウンチ袋を半年分と大型犬用のクッションを買って渡した。喜んでくれて良かった。死ぬほど身を切った甲斐があった。うまくいってもらわなきゃ困るからな。
だが
「お前貧乏のくせに…どこで盗んできた…?」
というのは完全に余計だし俺も
「amazon。amazonで万引きしてそれをamazonに送ってもらった。」
とか言わんでいい。なんか良い話にしといてくれ。
そして車におやつやオモチャと共に乗り込み一路関東某県へと向かった。
意外と近いんだねなんて言いながら
「そういえば今日道でウンコしているおじさん見たんだよ」
といった話をして嫌な顔をされてるうちに無事に依頼者さんのお宅に到着した。
依頼者さんとドッグは既に家の前にいた。
ヘルパーさんかな?その方の押す車椅子に座る依頼者さんの前を嬉しそうに跳ね回るドッグを見て俺は普通に涙が出たけどこれは本人に見られては気分を害されるかもしれんと思い慌てて袖で拭いた。ミラーを見ると新飼い主夫妻も泣いていたのでみんなで慌てて涙を拭ってから車を降りた。
挨拶もそこそこにドッグは新たな登場人物たちに喜んで尻尾を振って撫でて撫でてとその茶色の毛皮を摺り寄せて来た。
垂れ耳雑種の男の子、かわいい…かわいすぎる…
ちなみに依頼人は依頼の初手から頑としてこのドッグの名前を教えてはくれなかった。
新たな飼い主が名前をつけたいだろうしこの子にも一刻も早く新しい名前と環境に馴染んでもらいたいからという愛ゆえに、だ。
すごくなつこいドッグだが友人夫妻の夫がスマホを取り出そうとポケットに手を入れたら急に鼻に皺を寄せて唸りだした。
どうやら何らかのトラウマがあるらしい。が、かわいい。
しばし談笑したりこのドッグに関する注意事項を聞いて少ししたら依頼人が笑いながら急かすように
「辛くなるので早く連れて行ってください」
と言うので車の中に乗せて車の中から依頼人を見たらもうボロボロに泣いていて我々も泣いたしドッグもピッピピッピと鼻を鳴らした。今書いていてもヤバい。ダメだ。
我々はもう耐えられなくなってドッグを連れて泣きながらもう一度依頼人のところに向かうと依頼人も目の幅くらいの滂沱の涙を流しながら
「ミック…ミック…!ミックというんですこの子!」
と言いながらミックに抱きついていた。ミックは依頼人の顔を覗き込みながら尻尾を振っていた。
我々はもう涙を拭くことを諦めた。
ミックを迎えた日のこと、ミックが前の飼い主に虐待されていたこと、ミックが初めて自分から触りにきてくれた日のこと、ミックが初めて布団に入ってきてくれた日のこと、ミックが靴の中にウンチしちゃったのを気付かず履いちゃった時のこと、ミックが自分のウンチを食べちゃって慌てて病院に連れて行ったこと、ミックと毎年桜を見るのが楽しみだったこと、自分の病気のこと、もう病院から出られない可能性があること。
色々話してくれた。
一番関係のない俺がもう涙も鼻水もえらいことになっていて恥ずかしかった。こんなの無理だもん。皆に心配されて恥ずかしかったので鼻水をすすりながら
「俺のことは通りすがりのバブルスライムだとでも思ってほしい…」
と言うも(バブルスライム…?)という感じであまりウケなかった。もう少し一般的な例えが必要だ。
ちなみに車椅子を押していたヘルパーさんも涙と鼻水でマスクが濡れて息苦しそうにしていた。
友人夫妻の奥さんも泣きながら
「ミック!良い名前です!この子にピッタリ!依頼人さんさえ良ければですけどミックという名前、そのまま使わせてもらって良いですか?」
と言い出して無言で何度も首を縦に振る依頼人に皆でまた泣いた。
ミックは全員の顔面をしげしげと眺めていた。賢い子だね。
体調の良い日があればミックを連れてくるので会ってください、写真を送りますのでLINE交換してください、絶対良くなって家に遊びに来てください!絶対にウチで幸せにします!などなどの友人夫妻と依頼人との会話のあと依頼人さんはミックをギュッとハグしてしばらくおでこをくっつけて俺らを再び泣かせたあと俺に
「池畑さんに頼んでよかったです。この方達ならミックを幸せにしてくださると思います。池畑さんはツイッターのままの人ですね」
と言ってくれて
「俺はただ仲介しただけなのでなんもしてないす…ツイッターのまま…?今日は服を着ておりますが…?」
と言ったがしっかりスベりそうな予感がしたのでスベる前に大きめの声で
「そうだ!写真撮りましょ!」
と言って逃げました。
俺以外の全員で並んで全員のスマホで写真を撮った。ミックは何故か若干怒っていた。「ミック、写真嫌いなんです」という依頼人は困ったような愛おしがるような顔をしていて、俺は目と鼻から汁をとめどなく出し続けた。
全員にこやかに挨拶をかわし、絶対また会いましょうね!と車に乗り込んで今度はすんなり出発できたが別れる時だんだん小さくなっていく依頼人さんの姿をずっと目で追い続けていて見えなくなると「グゥ…」とだけ小さく鳴いたミック。かわいいミック。泣かすのはやめて!おじさん運転中なの!
より安全運転をせねばという気持ちを強くしながら運転しているともう後部座席ではミックと友人夫妻がオヤツやオモチャで仲良くなろうとしていた。その甲斐あってか上田市に着いた頃、ミックがオモチャを咥えて奥さんの腕に押し付けて「コレで遊んでください」みたいな動きをしたので俺は慌ててハザードをつけて車を端に寄せて停車、全員号泣。
「君たち、ミックをよろしくお願いします。幸せにしてあげてね。困ったことあったらすぐ飛んでくるからなんでも言って。」
と言うと
「当たり前だろ…依頼人さんがどんな思いで送り出してくれたか…」
と言われ全員思い出し泣き。
ミックは友人の建てた新築の家を鼻をスンスン言わせながら探検していたので俺と友人夫妻で大して気にしていないみたいな顔をしながらトイレシートを持って尾行、廊下でオシッコしそうになったのでトイレシートを素早く予想着地点に滑り込ませて無事に阻止。そして無事にオシッコを受け止めたシートを渡して
「このシートをミックのトイレにしたい場所に新品のシートと一緒に置いておきな」
と言ってトイレ場所を決めさせた。
「失敗することもあると思うけど怒っちゃいけないよ。オシッコ=怒られるになったら良くないからね」
と忠告したらそこから心配性が止まらなくなって、絶対に殴ったり叩いたり蹴ったりするな。俺らと違う言葉を使う生き物なので100%のコミュニケーションは取れないけどミックが変なことをしたらそれは君たちへの訴えであるので真剣に何を訴えているか考えてあげてほしい。愛情はかけてもかけても何倍にもなって返ってくるしかけて損はねえんだから全力で愛すようお願いします。今が一番寂しいだろうから最初はそういう変な行動も多いと思うから気をつけて見てあげてほしい。これ以上ミックに寂しい思いをさせないように不倫とかして離婚とかは絶対にしないでほしい。あと前みたいに缶を溜めちゃうとかもやめてミックが怪我しちゃうかも。医療費とか思ったよりお金かかるけど思ったよりありがたく感じるから大丈夫。6歳で成犬だから、全く新たに何か覚えさせたいとかよりもこの子が今出来ることとその応用の範囲を広げる感じでやってほしい。
とか完全に犬小言おじさんと化して色々忠告してしまったが友人夫妻の間にミックがお座りして真剣な顔でフンフン聞いてるもんだから笑ってしまった。
ご飯のあげ方も聞かれたが、たびちゃんは吐きやすいのでご飯のあげかたは人からしたら変だと思うので参考にならんが、普通にご飯の袋に書いてある量を時間を決めて与えてくださいと言っておきました。
最後に彼らの家の近くの河川敷を一緒にお散歩して
「ミックは体重があるし力も強いと思うから用意してたリードより強い物の方が良いかもしれない」
と言って歩き出したがコレがまあ良い子。たびちゃんと同じで先に行っては振り返ってそこでペースを合わせて歩いてくれる。優しい子だね。飼い主さんと優しい散歩をしてたんだね…とまた泣きそうに。
「ほいじゃ俺帰るけど何かあったりわからんことあったらいつでも聞いて。あとカエルとか食わせちゃダメだからね!あと数日の間に絶対に自治体への登録と獣医さんで狂犬病予防接種と駆虫薬をもらって!体重も計って!出来たら血液検査もしてもらってね!あと最後に、飼えないと思ったら隠さずすぐに俺に言ってほしい。君たちを仲介した俺にもミックを幸せにする責任があるので。うるさくてごめんね!」
と言って帰ろうとしたらミックがピー!っつって鼻を鳴らしてくれて嬉しかったです。いっぱい愛されて暮らすんだよミック!
しかしマジで俺はほとんど何もしていないのに誰よりも泣いたな。
帰りの車の中で既に目が腫れていたので鏡を見て笑いました。泣きすぎだジジイ。年取ると食欲が落ちるとか肉食えなくなるとか全くないし出来たら肉だけ食って生きていきたいけど涙腺が弱くなるは圧倒的に本当だ。
特に犬が絡むと全てが他人事じゃなくなってしまう。無理だ。
俺に何かあったらたびちゃんをどうするかとかすっげえ考えちゃう。ある程度決めてるし相談済みだが。
依頼って生活費のために始めたけど全く生活費にはならない今回のミックの譲渡をしっかり出来てよかったな…と思いました。
プレゼントと交通費とかでしっかり家賃一ヶ月分以上の赤字なのはだいぶカッコつけ過ぎてもう逆にクソダサいが。
でも動物捨てるくらい困ってる人がいたら捨てる前に俺に一言言ってくださいね。頑張りますので。身勝手さにメリメリとツノ生えるくらい怒ってても顔には出しませんので。
全ての生き物たちが幸せに暮らせたらいいな。そんなんはきっと無理だけど俺の出来る範囲ではそうなるよう手助けはしていこうと思います。
以上です。ご清聴ありがとうございました。DOG LOVE…
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