任用試験を受けたタラちゃん
自白ですが私は3人の子のうち第一子だけ任用試験を受けさせてしまった過去があります。今回はその時のことを含めまして地区婦として体験しました5~10年前の任用試験をめぐるアレコレを(あくまでフィクションで)お送りします。
さて今回もおなじみのサザエさんワールドからは十数年が経った二世帯住宅磯野家・フグ田家が舞台です。
フグ田家一粒種タラちゃんは高校1年生になり、勉強に部活に忙しい毎日を送っていました。ある日学校から帰ってくると、サザエさんの顔色がよくありません。
「ママどうしたの、仕事が忙しかったの?」
タラちゃん、家の中では未だにママ呼びが抜けません。
「ああタラちゃん、お帰り。あのね、おばあちゃん、ちょっと具合のよくないところが見つかって、入院することになりそうなの」
「ええっ」
おばあちゃんのフネさんは60代後半、元気に見えていましたがタラちゃんですら無理をしているなと感じることはありました。
「もう新聞配達とか拠点とか、やめさせてもらえばいいじゃん」
「うん、もう新聞配達はしなくてよくなったみたいなんだけどね、ほら、おばあちゃん創価学会のこととなると全然ママの言うことも聞いてくれないじゃない?」
病気なのに『病魔なんかお題目ではねのける!』などとフネさんが言い出すのが想像ついてしまいサザエさんは頭を抱えます。
ほどなくフネさんは手術を受けるため大きい病院に入院しました。タラちゃんもおばあちゃんの元気が出るならと学校の帰りに寄ってみました。
「あらタラちゃん、来てくれたの」
フネさんはいつもきりっとしていたのに病院なので当然ながらノーメイクで寝間着姿、なんだかとても疲れて見えました。
タラちゃんは心配になります。
「今日はねぇ、手術の前の検査がいろいろあってご飯も食べられなかったし、ちょっとくたびれたねぇ」
「もう食べていいの?何でも食べていいの?買ってこようか」
フネさんのリクエストでサンドイッチを買いに行き戻ってくると、フネさんの病室に2人のフネさんと同年代の女性たちが来ていました。未入会ではありましたが創価学会の地域拠点宅の子として育ったタラちゃん、一目見て〈婦人部の人たち!〉と察します。育ちがいいタラちゃん、いろいろ思うところはありますがごあいさつします。さっきはだいぶしんどそうだったフネさんが、婦人部の人たちと話している時は心なしかしゃっきりして顔色もよくなっていたので、ああ、創価学会はおばあちゃんにとっては大切な居場所なんだな、と改めて感じました。
「まあまあお孫さんもうこんなに立派になられて。今高校生?」
「あ、はい…」
「磯野さん、お孫さんに今度の任用試験どうかしら」
まずい、巻き込まれてるか?と思ったタラちゃんでしたが時すでに遅し。
「お孫さんが任用試験に向けて勉強がんばってくれたら、磯野さんも病気と闘う勇気が出ると思うのよ」
という謎理論には全く心を動かされませんでしたがフネさんの涙目には心を揺さぶられてしまいます。
「は?任用試験を受ける?!」
帰宅してサザエさんに事の顛末を告げると案の定激怒させてしまいました。
「おばあちゃんたちがやってる創価学会は、タラちゃんには関係ないって言って来たでしょう?」
サザエさんも涙目にさせてしまい罪悪感のタラちゃん。
「ママ、まあ聞いてよ。あの場で僕がそんな試験興味ありませんって言ったらおばあちゃんの面目丸つぶれだよ。それに、ママは創価学会についていろいろ知っているから自分には必要ない、僕やパパにも近づけたくないって言うけど、僕は何も知らないからさ。創価学会の教義ってやつを知っておくいい機会かと思って」
サザエさんも弱っているフネさんに強く言うことができず、タラちゃんは任用試験を受けることになりました。
勉強と言っても忙しい高校生タラちゃんには時間がなく大白蓮華の特集号片手にフネさんと前日に一夜漬けしたしただけ。
「担当の人がついてくれるのかと思ったんだけどねぇ」フネさんはぶつぶつ言っていましたが知らない創価学会の人と関わらずに済んでタラちゃんはホッとしました。受験会場も創価学会の会館ではなく外部会場。ラッキー。
「わからなかったら南無妙法蓮華経って書いておけばいいから」
「いやおばあちゃん、今はマークシートだから」
こんな調子でしたがもともと勉強は得意なタラちゃん、難なく合格します。
合格証書が来たからおいで、と磯野家に呼ばれて行ってみると、フネさんの病室で会った婦人部二人が来ていました。一旦声をかけずに様子を伺います。
「磯野さん、今日はお孫さんに入会OKしてもらいましょうね」
ギョッとするタラちゃん。やっぱりそうなるか。
「でも、サザエは絶対OKしないから…」
「タラオ君はもう高校生だもの。彼が決意してくれたら大丈夫よ。サザエさんにわざわざ報告しなくてもいいじゃない?」
こうなるから、ママは涙目で止めたんだな。
「タラオ君の任用受験実績は磯野さんが今派遣で行ってる地区で報告上げたけど、入会はうちの地区でもらうからね」
え、なに言ってんだろ、取らぬ狸の皮算用?
タラちゃんは意を決してフネさんと二人の婦人部の前に行き、合格証書を受け取った上で、
「今回はありがとうございました。任用試験の勉強は興味深かったので、これから創価学会以外の文献や資料で広く仏教や宗教を学びたいと思います。その上で創価学会の信仰が僕にとって必要かどうか検討します。婦人部の方々、お世話になりました。今後とも祖母をよろしくお願いします」
と深々と頭を下げました。2人の婦人部が「今は婦人部じゃなくて女性部なのよ~」と言っていましたが、超絶どーでもいい!と思いながら磯野家を後にしました。
