評価制度を「読み解いて」動く人だけ年収が上がる ─ 等級表・評価項目を逆算して、評価されるポイントに仕事を合わせる設計

入社して7年、自分はずっと「いい仕事をしていれば、いつか正当に評価される」と思っていた。

その7年間、自分の年収はほとんど上がらなかった。

転機は、隣の部署に異動してきた同期との飲みの席だった。彼は自分より2等級上で、年収も100万円以上高かった。仕事の質が自分より100万円分高いとは、正直、思えなかった。むしろ細かい作業の精度は自分の方が上だと思っていた。

その彼が、酔った勢いで言ったひと言が、自分のキャリアを変えた。

「お前さ、うちの評価項目、ちゃんと読んだことある?」

自分は読んだことがなかった。評価シートは毎期書いていたが、その項目が「何点満点で、どこに配点が寄っていて、最終的に誰がどう決めているか」を、一度も真剣に読んだことがなかった。

彼は読んでいた。読んだ上で、配点の重い項目に自分の仕事の出力を合わせていた。同じ8時間働くなら、評価される側の仕事を選んでいた。それだけの差で、彼は2等級上にいた。

この記事は、自分がその夜から3年かけて実践してきた「評価制度を読み解いて、評価されるポイントに仕事を合わせる」設計を、再現できる手順としてまとめたものだ。

特別な才能の話ではない。残業を増やす話でもない。今と同じ努力量のまま、その努力を「評価される場所」に置き直すだけで、評価と年収は動く。自分はこの3年で、等級が2つ上がり、年収はそれに連動して上がった。

この記事で読者に持って帰ってほしいのは、たった1つだ。

自分の会社の評価制度(等級表・評価項目・配点・誰が決めるか)を具体的に読み解いて、配点の重いポイントに普段の仕事の出力を合わせれば、同じ努力量でも評価と年収は上がる、ということだ。

「いい仕事をすれば評価される」が一番危ない思い込み

年収の話をすると、多くの人が「実力」と「評価」を同じものだと思っている。

実力が高ければ評価される。評価が低いのは実力が足りないから。だから評価を上げたければ、もっと頑張って実力をつけるしかない。

この発想で動いている限り、年収はなかなか上がらない。

国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によれば、給与所得者の平均給与は478万円、正社員に限っても平均545万円だ。前年から3.9%増えて過去最高を更新したとはいえ、多くの会社員にとって「年収が大きく動く」という実感は薄い。真面目に働いているのに、なかなか上がらない。これは、自分一人の話ではなく、構造の話だ。

なぜ実力と評価がずれるのか。理由はシンプルで、会社はあなたの「実力そのもの」に給料を払っているのではなく、「評価制度というフィルターを通った後の数字」に給料を払っているからだ。

評価制度は、あなたの仕事の全部を見ているわけではない。決められた項目を、決められた配点で、決められた人が採点している。そのフィルターを通らない努力は、どれだけ質が高くても、年収にはほとんど反映されない。

自分が7年間やっていたのは、まさにこれだった。フィルターの外で、誰にも採点されない努力を積み上げていた。細かい資料の作り込み、誰も気づかない不具合の修正、頼まれてもいない改善。本人は「いい仕事」をしていたつもりだった。でも、評価シートのどの項目にも、その努力を書く欄がなかった。

評価制度を読み解くというのは、このフィルターの形を正確に知ることだ。どの項目に、どれだけの配点が寄っているか。誰が一次評価をして、誰が最終的に等級を決めるか。それを知った上で、自分の8時間を「採点される側」に置き直す。

ここから先は、評価制度を持っている会社で働く人なら、業種を問わず使える。次の章で、評価制度を読み解く全体の流れを示す。

「転職すれば上がる」も、思っているほど確実ではない

評価制度を読み解く話をすると、「そんな面倒なことをするくらいなら、転職した方が早いのでは」という声が必ず返ってくる。

たしかに転職は、年収を上げる有力な手段だ。自分も否定はしない。ただ、転職が「確実に上がる」かというと、数字はそう言っていない。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、転職した人のうち、前職に比べて賃金が「増加」した割合は40.5%、「減少」した割合は29.4%、「変わらない」が28.4%だった。つまり、転職しても約3割は賃金が下がっている。残りの3割弱は横ばいだ。「転職すれば上がる」は、半分以下の人にしか当てはまらない。

この数字を知ったとき、自分の中で1つの整理がついた。転職は、年収を上げるための「外向きのカード」だ。でも、外向きのカードを切る前に、今いる会社で「自分はちゃんと評価される場所で働けているか」を確認しておかないと、転職先でも同じ失敗を繰り返す。

評価制度を読み解く力は、現職で年収を上げる武器になるだけではない。転職先でも、入社して最初にその会社の評価制度を読み解けば、また同じように「評価される場所」に自分を置き直せる。これは、どこに行っても使える、持ち運び可能なスキルだ。

だから自分は、転職を否定せずに、まず「今いる会社の制度を読み解く」ことを最初の一歩にすることを勧める。読み解いた結果、現職では構造的にどうしても上がらないと分かったなら、そのときは外向きのカードを切ればいい。順序の問題だ。

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