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negi_man
近畿地方のとある産院で 第2話 深海
今日もバカみたいにつまらない一日が始まる。どこにでもいるつまらない55歳が私だ。
更年期になったとたん、朝、目を覚ます時間が異様に早くなった。
意識が覚醒するのが、明け方の4時だ。ぐずぐずと6時までは布団の中で粘っている。
昔はこの夢と覚醒との間にとろとろと昔の男を思い浮かべながら自慰行為にふけったが、最近はそれもない。
欲望は何年も前に深海の底に沈んだ。
夏の終わり、秋に向かう長い夜に、ふと、海底に沈んだ欲望が空気を求めに海上に顔を出すも、ほんの一瞬で、それを必死に沈まぬように、ありとあらゆる男の記憶を再現するも、すぐに海底に沈んでしまう。深海は日も当たらず、ひたすら暗黒でよどんでいる。
私の欲望が、コトンと音をたてたので、海底に着地したのがわかった。
眠れない夜を過ごし、年老いた父と母のいつもの口げんかで目が覚める。6時10分。勢いよく起きることができない。だらだらと起き上がった。
母が廊下を必死の形相で雑巾がけしている。
「どうしたの?」
「パパが間に合わなかったの、トイレまで」
「ふーん」
雑巾がけした部分をひょいっと飛び越えた。1ミリも手伝う気にはなれない。
実家に帰ってきても寛げないようになったのはここ3か月だ。急に何かがどっと、肩にのしかかってきた。終わりのない何か漠然とした不安が。
