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「Non Stop!」(ルヴァンカップ準々決勝1stレグ・浦和レッズ戦:1-1)

 驚いたのは、ラザル・ロマニッチがパスを選択したことだった。

 スコアは0-1で1点のビハインド。
時間はすでにアディショナルタイムである。タイムアップが刻一刻と迫る中、センターバックの佐々木旭が、前方にいた橘田健人にクサビの縦パスを当てる。ボールを受けた橘田は背中にいたDFの根本健太に奪われたように見えたが、懸命に足を伸ばしてボールを佐々木に繋げた。

 根本は倒れたが、御厨貴文主審の笛は鳴っていない。
強引にゴール前に入っていった佐々木は、この地での負けを受け入れず、なんとか状況を打破しようとしていた。

「(縦パスで)割って入るところは意識してやりましたし、時間もなかったので、自分も前に出て行きたいなというところがありました」(佐々木旭)

 手前にいた脇坂泰斗の動き出しも視界に入っていたが、佐々木の選択肢は2つに絞っていた。中央にいるラザル・ロマニッチか、その奥にいる伊藤達哉だ。

 奥にいる伊藤達哉に渡すには、浮かしたクロスを届ける必要がある。つまり、浦和守備陣の一山を超えるボールを蹴らなくてはならない。しかし、中央にいるロマニッチならば、その足元に出せばパスは通る。この夏に加入したばかりの91番のストライカーに佐々木は思いを託した。

「上のボールだと、自分も疲れてましたし、相手のセンターバックも強かったので。ロマ(ロマニッチ)が止まったのが見えました」(佐々木旭)

 ゴール前でグラウンダーの強いパスを受けたラザル・ロマニッチは、ボールを浮かしながら、くるりと反転している。記者席からは、完全なるシュートモーションに入ったように見えたが、次の瞬間、彼はシュートを打たずに、横にいた伊藤達哉へのパスを選択したのだ。

 ここ3試合で4得点を挙げている小柄なドリブラーは、これをダイレクトでは打たず、あえてワンタッチしてから切り返し、相手ディフェンダーの間合いをずらした。恐ろしいほどの冷静さである。そして浦和のGK牲川歩見の肩を打ち抜くような弾道で、豪快にニアサイドに突き刺した。

 最後に川崎フロンターレで追いついたことで、1-1で第2戦を迎えることとなった。試合に勝ったわけではない。引き分けで2戦目を迎えることができるだけの話だ。だが0-1のまま始まる第2戦になるよりは、はるかにポジティブだ。

 そして終了直後のフラッシュインタビューに現れた伊藤達哉は、土壇場で仕留めたプロセスを淡々と振り返っている。

「ロマニッチはFWだし、あそこは打ちたくなるところだと思うけど、冷静に自分に繋いでくれた。ダイレクトで打とうかと思ったんですが、レッズの選手は埼スタで体を張って守るイメージだったので、ワンタッチおいて、相手をずらせたかなと思う」

 フィニッシュワークの冷静さもそうだが、言葉の端々から相手の動きをよく見極めていることが垣間見れるようなコメントでもあった。

伊藤達哉はこれで公式戦4試合連続得点だ。完全に止まらなくなってきた。

 そして冒頭の話である。
何かというと、あの場面で、ラザル・ロマニッチがパスを選択したことだ。

普通に考えたら、移籍したばかりのFWにとって、ゴールという結果はもっとも欲しいはずである。そのチャンスが、敗色濃厚のアディショナルタイムでやってきたのだ。

ストライカーであれば、シュートを打たない選択肢があるはずがない。しかし、彼はパスを選択し、アシストに繋げた。だから、驚いたのだ。

 試合後のミックスゾーンで、ラザル・ロマニッチを呼び止めて、あのアシストについて尋ねてみた。

「あのシーンではタツヤ選手にパスを出した方が絶対に決めてくれるなっていう確信もありました。タツヤ選手はすごくいい選手です。自信もとてもあったので、そこはもうパスを出して決めてくれることがわかっていたので、自分で打たずにパスを出しました」(ラザル・ロマニッチ)

 あそこでパスをするのは当然のことだよ、という口ぶりに聞こえた。
ただ、もう少し食い下がってみた。

 最初からパスを選択しようと決めていたのか。それともシュートを打とうとした中で、途中でパスに変えたのか。

 通訳を介しながら、質問の意図を理解したラザル・ロマニッチは、「正直に言うと・・・」と前置きしながら、さらにあの場面での判断を詳しく明かし始めた。


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