ショートショート⑪『AIロボ教師』
深刻な教師不足を抱え、文科省は、AIロボ教師の導入に踏み切った。
ここ、虹の町中学でも、AIロボ教師を教育実習生として採用した。
全教科を教えられるAIロボは重宝がられ、授業を受けた生徒の評判もいい。
教師達も助かっている。モンスターペアレントの対応を任せられるからだ。
今日も、理不尽なモンスターがやって来る。この親がクレームを言いに来るのは5回目だ。担任の女性教師は、連絡を受け、体調を崩して早退した。

モンスター対ロボ
応接室のソファーに座る生徒の母親とAIロボ。
校長と教頭は別の部屋でモニタリングしている。ロボが見たもの、聞いたものは、そのままパソコン画面で視聴できる。
「担任の先生はいないんですか?」と母親。
「すみません、体調を崩して早退しました」とロボ。
「しょうがないわね。あなたAIでしょ。まったく、AIに対応させるなんて、どんな学校なのよ」
「お話は真摯に伺い、しっかり担任にも、教頭にもお伝えします」
「あら、そうなの。じゃあ、言わせてもらいますけど、うちの子はね、やれば出来る子なんです。成績が上がらないのは、担任の先生の教え方が悪いからです。もっと、授業の仕方を学んでほしいんですよ」
モニタリングしている校長と教頭は顔を歪めた。
「それから、坂の上高校への進学は無理だと言われたんですけど、ひどくないですか?やってみなけりゃわからないじゃないですか。がんばれよと、応援するのが教師ってものでしょ。もう、あの担任変えてほしいわ」
「それは、お子様の成績では、その学校は難しいので、そうアドバイスしたのだと思います」
「だから、成績が上がらないのは担任の教え方が悪いからなのよ。さっき言ったでしょ。AIの癖に頭悪いわね」
校長が「ダメだ、こりゃ。モードを変えて」と指示すると、教頭は「モンスター対応モードへ切り替えます」とマウスをクリックした。

モード変更
ロボは、ネクタイを緩め、袖をまくり、足を広げた。
「うるせえんだよ!クソばばあ!」低く響く声だった。
「はああっっ!」母親は目を見開いた。
「お前みたいな親がいるから、ろくなガキが育たねーんだよ!」
「何ですか?その口のきき方は!」
「理不尽な相手には、こちらも相応の対応をするってことだ」
「理不尽?私のどこが理不尽だって言うのよ」
「担任の授業で、成績の上がった生徒もいるんだよ。生徒の能力差だろ。親に似たのか、家の環境か、いずれにしも、あんたが親じゃ、子供もかわいそうだな」とロボは鼻で笑った。
母親は青ざめ、「暴言だわ。暴言。教育委員会に言ってやる」と唇を震わせた。
ロボは、母親に顔を近づけ、「言いたきゃ言えよ。後で、どーなっても知らねーぞ!」とドスを利かせた。
「あ、あなた、わ、私を脅す気‥‥」
去り行くモンスター
そこへ、校長と教頭が入って来た。
「どーもすみません。AIの暴走です」と校長が言い、教頭はロボの耳の裏の緊急停止ボタンを押した。
母親は「暴走?何なのよ!まるで暴力団じゃないの。あー恐かった」と停止したロボを指差した。
「申し訳ありません。やっぱりAIはまだまだですな。いやーすみません」と謝る校長の横で、教頭も神妙な顔をしている。
母親は呼吸を整えると、「もう、今日は疲れたので、帰らせていただきます」と立ち上がった。
去り行くモンスターの背に頭を下げる校長と教頭。
そのまま、二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
了
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