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一色一版 あくまの辞典26 【は】白馬

①体毛が白色の馬②古くから高貴さや神聖さの象徴とされる動物③王子さまの乗り物



音楽が流れていた。
何人もの男女が広間を回っている。
シャンデリアの光が床に反射して、ドレスの裾が波のように揺れていた。

私は少し緊張していた。
慣れない靴を履いていたからかもしれない。
王子さまは何か話していた。
けれど内容は覚えていない。

覚えているのは声だけだ。
柔らかくて、少し低かった。
ワルツだったと思う。
たぶん三拍子。
私の足は何度かもつれそうになった。
そのたびに王子さまは何事もなかったように歩幅を合わせてくれた。

笑った気がする。
私も笑った気がする。
王子は私にハンカチを渡した。
「すごい汗。踊り過ぎたかな」

楽団は演奏を続けていた。
窓の外には庭園が広がり、月明かりの下で誰かが白馬を引いていた。

私はその時のハンカチを握りしめている。

🛎️

ドアの向こうでベルが鳴った。
女の瞳からは、輝きが失われていく。
黄ばんだガーゼが手元から落ちた。

「食事の時間ですよ」
肉付きの良い看護師が入ってきた。

「王子さまと、ワルツを踊ったの」
「それは良かったですね」

鉄格子の向こうに見える月は、あの日と同じように白く輝いていた。

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